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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

不本意なキスの所為

掲載日:2026/03/18

***BL*** 好きでも嫌いでも無い人にキスされるって、こんな気持ちになるんだ。慎ちゃんもこんな気持ちになったのかな? ハッピーエンドです。



 彼は僕の事、好きじゃ無い。


 違う。

 僕の他に好きな人がいる。

 だから、僕達は多分付き合っているんだけど、、、彼は僕を好きじゃない。


 好きでも無い人にキスされる気持ちって、こんな感じなんだ、、、。


そう考えたら、彼とキスが出来なくなった。



*****


 

 会社の飲み会で、キスされた。実際にはほんの少し触れただけ。でも、すごく怖かった、、、。今でも、思い出すと、ちょっと、、、。


 分かってる。相手に悪気は無い。唇にされた訳でも無い。飲み会で、相手もかなり飲んでいた。

「菅原は可愛い顔してるな」

と言われて、頬にキスされた。コンマ1秒フリーズして

「イヤだなぁ、それ、セクハラですよ!」

笑い飛ばした。

 その後、飲み会が解散してから、駅のトイレに行って顔を洗った。涙が出た。


 キスが嫌だったから出た涙じゃない。大好きな慎ちゃんに、こんな思いをさせたのかと考えたら、申し訳無くて涙が溢れた。


 ごめん、慎ちゃん。ごめんね。

 慎ちゃんもこんな気持ちだったのかな、、、。


 それから、慎ちゃんに触れてはいけないと考える様になった、、、。



*****



 仕事から帰り、洗面所で手を洗っていたら、慎ちゃんが来て香西さんの話しを始めた。


「帰って来る?」

「うん、五月の連休にね」

「そっか、良かったね」

僕は手を洗いながら返事をした。

 慎ちゃんの好きな人が帰って来るんだ、、、。不安で、顔が歪みそうになる。

「彼に会うの?」

手を洗いながら呼吸を整える。

「、、、うん」

丁寧に丁寧に洗う。

「楽しみだね!」

やっと顔を上げる事が出来た。僕は笑う。

「今日はちょっと疲れたから、シャワー浴びたら寝ようかな」

涙が出そうになるのを誤魔化す為に、シャワーを浴びる準備をした。



 シャワーを浴びて、キッチンに水を飲みに行くと、慎ちゃんはリビングでスマートフォンを弄っていた。

「おやすみ」

慎ちゃんは、スマートフォンから目を離すと

「おやすみ」

と言ってくれた。



 彼と連絡取ってるのかな、、、?



**********



 ひろと一緒に住んで、一年が経った。



 その前は、高校の同級生とシェア。

 俺の初恋の相手。大学時代のニ年間を一緒に暮らした。勿論、俺の気持ちは伝えていない。

 就職先が遠くて、アイツはマンションを出て行った。一人では広い部屋。

 ひろが一緒に住みたいと言って、引っ越して来た。

 彼の気持ちは知っている。まだ、アイツと一緒に住んでいる時に、告白されたから。



 去年の夏、アイツが男と付き合ってるのを知った時、俺は告白しなかった事を後悔した。


 何だ、、、俺、告白しても良かったんだ、、、。


 そう思いながら、少し荒れた。酒を飲み、愚痴を吐き、週末の度に二日酔いになる。

 ひろは酒が弱いくせに、俺に付き合った。俺が酔っ払い居眠りを始めると、テーブルの上を片付け俺に薄掛けを掛けてくれる。

 良いヤツだった。

「そんなに辛いなら、僕と付き合って忘れちゃいなよ」

 そう言われて、ムッとした。

「俺はアイツが好きだから、お前とは絶っっっ対付き合わない」

酔っ払っていても、何を言ったか覚えていた。

「そっか、そっか、、、」

と笑うひろ。彼は、いつでも優しかった、、、。



 だから、俺はひろの優しさに甘え続けた。



 季節から秋が無くなった。すぐ冬になる。

 仕事帰りにひろと待ち合わせをして、飲みに行った。珍しくひろの酒の量が増えている。

 店を出て、マンションまで二人で歩く。途中のコンビニに入りたがり、スイーツを買った。

「スイーツは別腹、別腹!」

と言いながら、ポイポイ籠に入れて行く。

「こんなに食えるの?」

俺が呆れていると

「良いの、良いの。今日は僕の誕生日だから、自分にプレゼントだよ」

と笑う。

「、、、」

レジで、背の高い店員に

「袋はどうしますか?」

と聞かれて

「お願いします」

返事をした。店員は、商品を綺麗に袋に入れていく。

 ひろは酔いが回って来て、フラフラしていた。微笑ましい。

 仕方が無いと俺が金を払い、荷物を受け取り、ひろの手を引いた。


 ひろが繋いだ手に気付き、俺の顔を見る。

「へへ、、、」

笑う。

「へへへ」

嬉しそうに笑い、俺にそっと寄り掛かる。


 可愛い、、、。


 本当は、少し前からひろが好きだった。

 でも、認めるのが怖かった。

 そろそろ夏が終わる頃

「俺はアイツが好きだから、お前とは絶っっっ対付き合わない」

なんてキツく言い放ったくせに、冬の始まりにはひろの事が好きだったから。



 恥ずかしかったんだ、、、、。あんなに強気で言ったから。



 花が咲き始めた頃にもう一度、ひろから告白された。好きなのに好きと言えなくて誤魔化した。

「こんなに長く一緒に居て、嫌いな訳無いだろ?」

中途半端な返事だった。自分でも分かっているのに、それ以上言え無かった。



 はっきり好きと言わない。

 疑問形で返事をした。



 俺達の関係は、宙ぶらりんのままだった。



 春になると、ひろは酔っ払う度にキスをした。


 可愛いキス。


 最初は俺のグラスの酒を飲み、間接キスをした。

 

 次はスイーツをスプーンで掬い、あーんしてくれた。


 カウンターの下で手に触れる。


 ひろが、酔う度になんとかキスをしようとしたり、俺に触れる度、試行錯誤している様子が可愛かった。



 春先、ひろが酷く酔っ払って帰って来た日。やたらと俺に甘えた。

 俺がキッチンで用事をしていると、背中にそっと

くっ付いて来て、頭をグリグリ押し付ける。何か言いたいのに、言えない感じ。

 職場で嫌な事があったらしく、落ち込んで不安で、同僚とかなり飲んで帰って来たと話す。


「慎ちゃん、キスしてよ、、、」

「そんなに、キスしたいの?」

「したいよ、、、好きなんだもん、、、」

そう言って泣いた。

「良いよ、、、」

背中にくっ付くひろの方を向き、俺は、彼の手を取り、触れるだけのキスをした。


 ひろはボロボロ涙を流し

「慎ちゃん、ありがとう、、、」

と言って抱き付いた。



 それは俺からひろにした初めてのキスで、ファーストキスだった。



**********



 冬の終わりに二度目の告白をして、やっぱり慎ちゃんに好きと言って貰えなかった。


「こんなに長く一緒に居て、嫌いな訳無いだろ?」


嫌いな訳無いって、好きって事かな、、、?

 僕は分からないまま過ごした。



 同僚に相談したら、キスしたら分かるんじゃ無い?と言われた、、、。


 確かに、、、。


「嫌いなら拒むし、好きならしてくれるでしょ?」

と言われて、何とかキスしようと頑張った。

 作戦はいつも上手く行かず、最後はヤケになって、ど直球でお願いしてしまった、、、。

 内心、慎ちゃんは優しいから断らないと思いつつ、、、。



 彼は、触れるだけの優しいキスをしてくれた。すごく嬉しかった。



、、、それなのに、、、



 その翌日、会社の飲み会で、職場の人にキスをされた。

 すごく嫌な気分になった時、頭をよぎったのは慎ちゃんの事だった。



 僕の事、好きでも無いのにキスさせたなら、、、。酔ってるからって酷い事をしてしまった、、、。

 ごめん、慎ちゃん。ごめんね。



 家に帰っても、その事がずっと頭から離れなかった。



**********



 あれ以降、ひろはキスを求めて来ない。

 ポロポロ流した涙を、嬉し涙だと思ったのは、勘違いだったのか、、、。



*****



「あのさ、香西こうざいの事、覚えてる?」

「うん、前にこの部屋に住んでた」

「帰って来るって」

「帰って来る?」

ひろは外出から帰って来て、手を洗っていた。

「うん、五月の連休にね」

「そっか、良かったね」

こちらを見ない。

「彼に会うの?」

「、、、うん」

「楽しみだね!」

ひろが笑う。

「、、、」

「今日はちょっと疲れたから、シャワー浴びたら寝ようかな」


 違う、こんな会話がしたかったんじゃ無い。

 香西にひろを紹介したかった。

 アイツが彼氏を連れて来るって言うから、俺もひろの事、可愛い恋人だって自慢したかった。

 だから、連休の予定を聞いて、香西達と遊ぶ計画を立てたかったのに、、、。


 最近のひろは、ちょっと変だ、、、。


ひろ、、、」

「ん?、、、何?」

「、、、いや、、、何でも無い、、、」

 ひろが変だと思いつつ、どう聞いたら良いか分からなかった。スマホを弄っているのに、集中していないし、酒を飲んでも酔っていない。

「仕事、忙しい?」

「そうだねぇ、、、」

とボンヤリ返事をする。

「今度、何処どこか行く?」

誘ってみても、少し考えて首を横に振る。

「ごめん、、、ちょっと疲れてるみたい、、、。家でゆっくりしたいかな、、、」

「そっか、、、」

もうすぐ香西が来るから、相談したかったのに、、、。



**********



 香西くんが帰って来る、、、。

 あれ?遊びに来るんじゃ無くて、このマンションに帰って来るのかな?何と無く聞きづらくて、僕は、自分の部屋の荷物だけを片付けた。

 もしかして、新しいマンション借りないといけない?慎ちゃんから僕に、出て行けとは言い辛いだろうし、、、。

 、、、連休前に引っ越しするのは、流石に無理だ、、、。時間的に難しい。

 まぁ、引っ越しする位の貯金はあるけどさ。取り敢えず、段ボールかな?、、、貰いに行かないと、、、。

 そして、香西さんが来たら、僕は友達の家にでも泊まれば良い。最悪ホテルに泊まっても良いし。



*****



 スーパーで買い物をしていたら、「段ボール、ご自由にどうぞ!」と書いてあった。

 小さなサービスカウンターで

「段ボールって貰えるんですか?」

と聞いたら、大丈夫と言われた。僕は、取り敢えず2枚貰った。


 玄関の鍵を開けて入ると、キッチンから慎ちゃんが顔を出した。

「段ボール貰って来たの?」

「あ、、、。うん」

僕は、慎ちゃんと視線が合わない様に下を向いた。


 

***********



 ひろが段ボールを貰って来た。何に使うんだろう。

 

 二人で晩飯を食べながら

「あのさ、話しがあるんだけど、、、」

と言うと、ひろ

「僕も、、、」

と言った。

「引っ越そうと思って」

こちらを見ない。

「え?何で?」

伏せった目は、食卓を見ている訳じゃ無かった。思い詰めた様に

「香西くん、帰ってくるでしょ?」

と聞いた。

「うん」

「だから、、、」

「???」

何で、香西が帰って来ると、ひろが出て行くのか分からない、、、。

「慎ちゃんの話しは?」

切り替えられて、言葉に詰まる。

「あ、、、えっと、香西が帰って来るから、、、」

「慎ちゃん、ごめんね。連休までに新しい部屋、見つけたいんだけど、間に合わないと思う。出来るだけ早く出るから、待ってて、、、」

「そ、、、う、なんだ、、、」

ひろは、食事が終わると静かに部屋に戻って行った。



 急に引っ越しすると言われて、頭が混乱した。

 少し時間が経って冷静になっても、どうしてひろが引っ越すのか、分からなかった。



 ひろの部屋をノックする。

 返事が無い。

 もう一度ノック。

 そっと扉が開く、

「ごめん、通話してた、、、」

泣きながら?誰と?嫌な気分になる。

「どうして引っ越すの?」

チラリと部屋の中が見えた。段ボールに荷物を入れている、、、。

「新しい彼氏が出来た?」

「何、、、?何言ってるの?」

戸惑った顔。

「だって、急に引っ越すなんて、、、」

「、、、ちょっと待ってて、、、」

そう言うと、後ろを向いて距離を置き

「ごめん、慎ちゃんが来たから、切るね、、、」

と言って、通話を切った。

「彼氏?」

ひろがムッとした。

「違う、、、」

怒っている。

「どうして急に引っ越すの?新しい彼氏と一緒に住むの?」

「違うって言ったでしょっ!?。僕の気持ち知ってるクセに、どうしてそうなるんだよ!」

俺を下から睨む、赤く腫らした目から涙がポロポロ溢れている。

「じゃあ!何で急に引っ越すんだよっ!」


ドンッ!


 思いっきり壁を叩いてしまった。

 ひろの肩が弾いたっ。

「だって!香西さん、帰って来るんでしょっ?」

「、、、だから?それがどうして引越しに繋がるんだよ!」

ひろの涙は止まらない。俺は一つ溜息をいて

「部屋、入っても良い?」

と聞いた。ひろはコクンと頷くと、入り口を広く開けた。

 ひろの腰にそっと手を添え、ベッドに座らせる。俺も横に座る。

 目の前の段ボールに、ひろの私物が入っていた、、、。嫌だな、、、。そっと手を繋いだ。

 ひろの一度止まり掛けた涙が、また溢れた。

「どうして、急に引っ越そうと思ったの?」

「香西くん、、、帰って来るでしょ?」

「うん」

「だから、、、」

「だから?」

「だから、この部屋返さないといけないなって、、、」

「香西は連休中だけだよ?」

ひろがゆっくり俺の顔を見て、首を傾げた。

「彼氏とこっちに遊びに来るから、俺に紹介したいって、、、」

「本当に?」

ちょっとホッとした後、ひろが変な顔をした

「慎ちゃん、大丈夫なの?」

「何が?」

「だって、香西くんの事、好きだったでしょ?それなのに、恋人を紹介されるなんて、、、」

「大丈夫だよ、、、俺には、ひろがいるから」

また、首を傾げる。


 可愛い、、、。


「香西は高校の同級生だったんだ。同じ大学って知らなくて、入学式で会った時はびっくりしたよ」

ひろが袖口で涙を拭いている。

「右も左も分からない大学で、知ってるヤツに会って、ホッとしたのを覚えてる」

ひろの部屋、、、。荷物を段ボールに片付けてあるから、淋しい感じがする、、、。

「いつも一緒にいて、気が合って、一年の夏頃には好きになってた、、、初恋だった」

、、、こんな話し、聞きたく無いかな?

「大学2年の終わりに、マンションの更新があって、二人でシェアする事にした、俺はどんどん好きになったけど、アイツに告白は出来なかった。男同士だったからな」

ひろがベッドに上がり、壁に寄り掛かりながら膝を抱える。

「卒業して、就職先が遠方で、香西はマンションを出て行った。その夏、去年の夏に、香西は今の彼氏と付き合い始めたんだ、、、」

「慎ちゃん、去年の夏、すごく荒れてたよね、、、」

俺も、ひろの横に座る。

「5月の連休に、彼氏とこっちに遊びに来るから会いたいって言われた。だから、俺もひろの事、紹介したくて、、、」

「紹介?」

「、、、付き合ってるから、、、」

ひろの顔が赤くなる。そんな顔見たら、こっちまで赤くなりそうだ。

「あ、、、の、、、」

抱えた膝で顔を隠した。

「僕達、付き合ってるの?」

え?今更?

「だって、、、よく分からなかったから、、、」

俺、付き合ってる気でいた、、、。

「ごめん、、、。ひろの事、ちゃんと好きだよ、、、。はっきり言わなくて不安だった?」

顔を隠したまま、頷いた。

 ひろの頭を撫で、髪にそっとキスをした。

ひろ、キスしなくなったね、、、」

おずおずと顔を上げる。

「職場の飲み会で、、、キスされたんだ、、、」



 キス、、、された、、、?



「好きでも何でも無い人、、、。別に嫌いじゃ無いし、上司が巫山戯ふざけてしたんだけど、凄くイヤだった、、、。その時、慎ちゃんもこんな気持ちなのかなって、考えて、、、。ごめんね?イヤだったでしょ、、、」

ひろが小さな声で、ゆっくり話す。消えてしまいそうだ、、、。

「えっ?ちょっと待って?それより、キスされたって、、、」

「えっと、、、酔った勢いで、、、」

「なっ!ひろ!」

俺は思わず、ひろの頬を包む様に両手で触り

「どこっ?!」

「えっ?」

「どこにされたのっ?!」

声のボリュームが抑えられ無い。

「えっと、ほっぺた」

「どっちのっ?!」

心臓がバクバクする。

「え、、、左?」

俺は、自分のてのひらでゴシゴシと擦った。

「慎ちゃん、痛いっ」

「ダメだ、こんなんじゃ綺麗にならない、、、。アルコール買って来て、消毒しないと」

自分でも何を言っているのか、よく分からない。

「慎ちゃん?ね、ちょっと、、、痛いって」

「でもっ!」

「もう、二週間も前の話だよ?!」

ひろ、、、」

彼の声で少し冷静になる。

「慎ちゃんがキスしてくれたすぐ後だった。週末の飲み会で、、、その時、慎ちゃんの事を思い出したんだ、、、」

ひろは、頬に触れた俺の手を握った。

「まだ、香西くんの事好きなのに、無理矢理キスして貰っちゃった、、、イヤだったろうなって、、、ずっと考えてた」

「イヤじゃ無かった。ひろが何とかキスしようとして、頑張ってるの可愛いと思ってたよ?」

「そうなんだ、それなら良かった、、、。ずっと気になってたから」

そう言って、俺に寄り掛かって来た。

「慎ちゃんの言葉の意味が分からなかったから、今も香西くんの事、好きなのかもって思ってた」

ひろ、、、ごめん」 

首を振って、俺を見る。キスしたい。

「キスしても良い?」

頷いてくれた。

 左の頬にキスをする。

「ごめんね」

 少しずつずらして、頬のあちこちにキスをした。

「慎ちゃん、くすぐったいよ」

ひろが笑う。余す事なく、左頬にキスをする。



 そして、最後にひろの唇にキスをした。


 

*****



 五月の連休に、香西が一人で帰って来た。

 確か、彼氏と一緒に来るって聞いたんだけど、、、。

「香西?、、、一人なの?」

「ごめん、、、一週間前に別れた、、、。こっちに来るのも悩んだんだけど、一人でいるとキツイから」

「ホテルは?」

「キャンセルした、、、慎、、、泊めてよ」

「良いけど、コイツいるよ?」

「え、、、可愛い、、、」

「???」

「???」

可愛い?

「名前、何て言うの?」

「菅原(ひろ)です」

「俺、香西(かなめ)、よろしくね」

ひろは、ペコリと頭を下げた。

可愛かーわいい」


???


「取り敢えず、荷物置いて。リビングで寝るか俺の部屋だけど、どっちが良い?」

ひろちゃんの部屋は?」

「え?」

ひろちゃんと仲良くなりたい」

香西は俺の顔を見た。


 待て、、、。

 え?、、、香西って、俺寄り?


 ひろがそっと俺の後ろに隠れた。警戒してる。

「香西は俺の部屋、使って良いよ」

後ろに隠れたひろが、俺のシャツをギュッと掴んだ。

「俺はひろの部屋に行くから」

「え〜、ひろちゃんと仲良くなりたかったのに、、、」


 何だか、イヤな予感がする、、、。



*****



 ひろが無口になっている。香西に緊張してるのか?

 彼が風呂に入っている間に、キッチンで二人、ヒソヒソ話す。

ひろ、どうした?」

「あ、、、。ッと、、、」

「ん?」

「ううん、、、大丈夫」

冷蔵庫からビールを出して、グラスに注ぐ。

「何かあったら言って?」

グラスを受け取ると

「、、、香西さん、慎ちゃんのベッドで寝るの?」

「うん?、、、そうだね」

「ちょっと、、、ちょっとだけ、イヤだなって考えて、、、。でも、リビングも落ち着かないし、僕の部屋は」

「それはダメ!」

「あ、うん、、、僕もちょっと、、、有り得ないと思ってる」

ひろ、、、」

「だってさ、、、慎ちゃん、香西さんの事好きだったから、、、。香西さんが慎ちゃんの布団で寝たら、慎ちゃん、ムラムラしちゃうんじゃ無い?」

ムラムラって、、、。

「俺がひろの布団で寝たら、ムラムラしちゃうけど?」


チュッとキスをすると、ひろは不安そうに俺を見た。


「折角の連休に、こんな事になってごめん、、、」

「慎ちゃんの所為じゃ無いよ」

そっと抱き着いて来た。俺もひろを抱き締める。



*****



 香西が風呂から上がると、俺は香西を連れて買い出しに出た。

 その間に、ひろに風呂に入って貰う。


 コンビニで酒とつまみを買って、部屋に戻ると、ひろはリビングでスマホを見ていた。

「おかえり」

と言って、キッチンに来ると酒を冷蔵庫にしまってくれる。

「二人で飲んでて、俺も風呂に入って来るから」

と言い、急いで風呂に入り、最短で出る。

 香西とひろを二人きりにしたく無かった。


 香西は、俺が風呂から上がるとビールを2本も空けていた。

「慎、ひろちゃんって可愛いなー」

 俺はひろの顔を見る。かなり困った顔をしている。

「どうした?」

と言いながら、ひろと香西の間に座る。ひろは察した様で、テーブルを挟んだ向かいに座った。

「あ、何でそこに座るんだよ。ひろちゃん離れちゃっただろ?」

「香西の別れた彼氏、ひろに似てるのか?」

「んー。、、タイプは似てるかな?」 

「何で別れたんだよ」

「、、、仕事、、、忙しくて、すれ違いばっかりだった、、、」

ひろが静かに立って、キッチンに向かう。冷蔵庫からビールを2本取り出して、つまみと一緒に運んで来た。

「時間が合わなくて、淋しいなって思ってた時、浮気された、、、。彼氏に違うって否定されたけど、信じられなくて、、、」

ひろが香西と俺のグラスに、ビールを注ぐ。

「だって、キスしてたんだよ?!」

彼はグビグビ喉を鳴らしながら飲んだ。

「俺から告白したんだ。本当は男となんか付き合いたく無かったのかも、、、。俺、かなり強引に迫ったし、一所懸命だったから」

疲れていたのか、酔いが早いみたいで、ウトウトし出した。

「香西、寝るなら俺のベッドで寝て。明日も話聞くから」

と言うと

「イヤだ、、、。今まで誰にも相談出来なかったんだ、、、まだ、寝たく無い、、、」

と酒を飲む。

「旅行楽しみだったのに、、、」

そう言いながら香西は寝た。仕方無い、暫く放置するか。



 土曜日から連休が始まり、明日は日曜日。水曜日まで5連休、、、ずっと此処に泊まる気かな?

 しかし、香西がこんなヤツとは知らなかった。

 どちらかと言えば、受け身のタイプだと思っていたから。



 このままで良いのか、心配になるな、、、。



 結局、香西は起きなかった。ひろとリビングを片付け、彼に布団を掛けてひろの部屋で飲み直した。



**********



 夜中に喉が渇いた僕は、キッチンに水を飲みに行く。

 

 びっくりした。


 香西さんがキッチンで水を飲んでいたから。

 あんまり緊張しているのも相手に悪いと思って、出来るだけ自然に話す。

「喉、渇きますよね」

ヘラっと笑う。

ひろちゃんは、本当に可愛いよね」

と言われて、どんな顔をすれば良いのか分からない。

「ありがとうございます」

香西さんの後ろの冷蔵庫を開ける。水を取り出し、さっき洗ったコップに注ぐ。

 横に立つ香西さんは僕より少し背が高かった。慎ちゃんよりは低いかな?

 

 スッと影が近寄り、僕は反応して避ける。

「な、、、」

「そうだよね、、、。これが普通の反応だよね」

「香西っ!」

慎ちゃんが僕の腕を掴んで引き寄せた。

「お前、何やってんの?」

香西さんから隠す様に、僕を抱き締める。僕は慎ちゃんを見上げた。

ひろちゃんが可愛いから、キスしたくなっちゃって」

「俺達、、、付き合ってるんだけど」

慎ちゃんの声が怒ってる。

「嘘、、、ごめん、、、」

「、、、」

香西さんは本当に申し訳無さそうな顔をしていた。

「あの、、、」

二人が僕を見る。

「香西さん、彼氏の話し、ちゃんと聞きました?」

ひろ?」

「彼氏がキスした所見て、浮気されたと思ってるんですよね?」

「うん、、、まぁ、、、」

「このままだと、、、何だか」

慎ちゃんがチラリと時計を見る。

「、、、香西、話し聞くから、飲み直そう、、、」

と溜息を吐いた。



 酎ハイとさっき残ったつまみ、それから新しいつまみを準備して、リビングに行く。

 三つのグラスに酒を注ぎ、取り敢えずの乾杯。

「どんな状況でキスしてたの?」

慎ちゃんが切り出した。



「彼氏がさ、、、会社の飲み会の日だったんだ。場所も知ってて、仕事帰りに通り掛かったから、ちょっと覗いた。そしたら、カウンターでキスしてた。彼氏は笑ってて、、、会社の飲み会と言うより、二人で飲んでる感じだった。俺、びっくりして、すぐ店を出ちゃって、、、ずっと頭から離れないし、考えてる内に、どんどん頭に来て、、、家で酒飲んでたんだ」

香西さんは思い出してしまったのか、泣きそうな顔をした。

「その後、彼氏が俺の家に来た。夜遅く、、、。俺、酔ってたし、腹が立ってたから彼氏の顔見るなり「何?別れ話?」って言っちゃったんだ、、、。彼氏が傷付いた様な、訳が分からないって顔してるから「浮気する位なら別れよう」って言ったら、泣き出して、、、。「浮気なんてしてない。何でそんな事言うんだ」って、、、。「キスしてた所を見た、嬉しそうに笑ってた」って言った。彼氏は「ごめんなさい」って謝って帰って行ったんだ、、、」

「それきり?」

「それきり、、、」

「電話もして無いの?」

「うん、、、。だってさ、好きでも無い人にキスされそうになったら、さっきのひろちゃんみたいな反応になると思わない?」

僕は慎ちゃんの顔を見た。

「それに、彼氏からも電話無いし、、、」

空になったグラスに酎ハイを注ぐ。

ひろもキスされたよな」

「してないよ。ひろちゃんは届く前にけたから」

「違う。もっと前に、会社の上司に」

「え?、、、」

「うん、会社の人で嫌いじゃない上司だった。その人はすごく酔っていて、冗談で頬にキスして来たんだ。、、、軽いヤツ、、、。でも、僕は本当は嫌で、、、。会社の人だし、笑って誤魔化したんだけど、、、凄く凄く凄く嫌だった、、、。その場で洗う訳にも行かず、帰りの駅で顔を洗ったんだ、、、」

慎ちゃんが僕を抱き締めてくれた。

「もし僕に、好きな人がいないとか、恋人がいなければ冗談で済ませたかも知れない、、、。でも、あの時の僕には無理だった。慎ちゃんの事、好きだったから」

「香西の彼氏も、本当は嫌だったんじゃないか?」

「そんな事、、、」

「電話、、、」

「え?」

「今、彼氏に電話しろよ」

「む、無理だよっ!」

「人の家に泊まるのに、無料タダで泊まるつもりなのか?」

「彼氏も電話待ってるんじゃ無い?」

「、、、待ってる訳ないよ」

「10回、、、。10回呼び出して彼氏が出たら、もう一度ちゃんと話せよ」

「10回?」

「もし、電話に出ないか、折り返しが無ければ、その時は本当に終わりにすれば良いじゃないか」

僕は、慎ちゃんの腕の中でうんうんと頷く。

 香西さんは、スマートフォンをじっと見つめた。

「本当は電話したいんじゃ無いですか?」

 彼が僕を見た。

「電話、して上げて?」

「もしダメだったら、連休中ずっと此処で飲んだくれてれば良いから」

慎ちゃんが言った。



 香西さんは暫く考えて、電話を掛ける。

 3回目の呼び出しで、彼氏は電話に出た。

「あの、、、」



 僕と慎ちゃんは静かにリビングを離れ、キッチンで二人で飲んでいた。



 喧嘩になる雰囲気は無い。話しの内容は聞こえないけど、彼氏も電話を待っていた様で、二人で謝り合ってるみたいだ。

 香西さんが泣いている。

 そんなに好きなら、もっと早く電話すれば良かったのに、、、。

 でも、きっと怖かったんだな、、、。

 だから、電話しなかったんだ。



 僕と慎ちゃんは二人でそっと乾杯をした。



*****



 通話を切り、香西さんはキッチンに来た。

「電話、終わった、、、。始発で帰るよ」

「そっか、、、。仲直り出来た?」

「うん、迷惑掛けてごめん。ひろちゃんもごめんね、、、」

僕は、否定する様に首を振った。



**********



 香西はリビングで少し寝て、始発で帰って行った。

 俺とひろは、玄関で見送り

「今度は二人で遊びに来れば?」

と声を掛けた。香西は

「うん」

と返事をして

「俺も彼氏と一緒に住もうかな?二人が羨ましい、、、」

と笑った。



*****



 リビングを片付けて冷蔵庫を開けると、香西と三人で飲もうと少し多めに買った酒で、いっぱいだった。

 連休の内、二日位は香西達と何処どこかに行こうと思っていたのに、どうしようかな、、、。

「今から飲むの?」

「うーん、飲んじゃう?」

と微笑むと

「飲んじゃおうか」

ひろも笑う。

「お腹空いたね」

ひろに言われて、そう言えば昨日、つまみばかりで飯を食って無かった事を思い出した。

「朝からカレー食べる?」

「うわっ!何か悪い事してるみたい」

そう言いながら、酎ハイを開けて、レトルトのカレーを温める。

「慎ちゃん、チーズ載せようよ」

「良いねぇ」

カレーの上にチーズを乗せて、レンジで温め、溶かす。

「やばっ!美味しそう」


 カレーと酎ハイで朝から背徳感を感じながら、皿を洗う。

 二人で歯磨きをしながら、連休をどうするか話し合う。今日は、家でのんびりして、二日位は外出しようと計画を立てた。



 お互いに部屋に戻るのがイヤで、リビングのソファでくつろいだ。

 あまり寝てないから、自分のベッドで寝た方が良いと分かっているのに、ひろと一緒にいたいから。

「香西くん、何時位に着くのかな」

ひろが気にしている。

「そろそろ、彼氏と会ってる頃かもな」

「仲直り出来て良かったね」

ひろ、ありがと」

腕を回し、姿勢を変えて、ひろの背中にくっ付く。

「ん?」

何の事か分からないらしい。

 彼の背中に密着すると、何だか落ち着く。

「会社の人にキスされた話しするの、、、。嫌だったろ?」

後ろから抱き締めた。

 、、、子供の頃、大きな犬を飼いたかったっけ、、、。犬を抱き締めて、一緒のベッドで寝たかった。

 ひろを抱き締めていると、安心する。

「でも、あのまま二人が別れちゃうのも嫌だったし、、、。慎ちゃんが香西さんの事気になって、また好きになっても困るから、、、」

ひろの体温と香りが気持ち良い。

「ん?俺?」

「だって、慎ちゃんの初恋の人でしょ?。香西さんが淋しそうにしてたら、やっぱり心配じゃない?」

ひろ、そんな事、考えてたの?」

「いつだって、不安だよ」

不安にならなくても良いのに、、、。

ひろ。俺、ひろが一番好き、、、」

「本当?、、、」

「本当、、、。だから、自分が可愛いって自覚して?」

「え?可愛く無いよ?」

ひろ?。会社の人にも、可愛いって言われてキスされちゃったでしょ?。香西にもされそうになったし、、、。もうちょっと危機感持った方が良いと思う」

抱き締めると、俺の腕にすっぼりと入ってしまう。

「大丈夫だよっ!香西くんの時、ちゃんとけられたでしょ?!」

少し振り向いて、俺の方を見る。

「ギリギリだった、、、」

「ギリギリじゃ無いよ?」

顔、近いな、、、。


 ちゅっ


「???!っ」

「ほら、すぐキスされちゃう」

「あ、あ、あ、、、慎ちゃんっ?!」


ふふ、、、可愛いな、、、。



 ちゅっ



ひろは、すぐキスされちゃうからな」

ひろがモゾモゾ動く。俺の腕の中から出ようとしている。



 ちゅっ



「もー!慎ちゃんったら!」



腕を解いて、頬に触れる。



「香西も可愛いって言ってた、、、」

くりっとした瞳で見つめられると、ずっと見ていたくなる。

 ひろがゆっくり近付いて来て、キスをする。

 瞼を薄く開いて、俺の唇を見ながら、、、。

 彼の少し開いた唇から目が離せない。

 綺麗な形と色をしている。


 キスの仕方なんて習った事無いのに、不思議だな、、、。


 カチッ


 ふふ、、、


「歯が当たっちゃった、、、」

そう言いながら上目遣いで俺を見るひろ

「初めて?」

「うん、だって、慎ちゃんが初めての彼氏だもん」

「そっか、俺もひろが初めて」



 不器用なキスが凄く嬉しかった。



好きな人とのキスが一番いいですね

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