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後宮の元妓女は寵愛を受ける  作者: 佐倉海斗
第三話 手段は選ばない

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06-2.勘の良い貴妃に追い詰められる

* * *



「楊充媛」


 散歩をしていると向かい側から歩いてきた青 妃紗麻(キーシャオ)に呼び止められた。


 妃紗麻は不審そうな眼を可馨に向ける。梓豪が充媛宮の捜査を進めようとしないことが不満でしかたがないのだろう。


「あなた、呪術を使っているわね」


 妃紗麻は迷うことなく断言した。


 ……四大世家はやはり違うわね。


 可馨は呪術を使う。しかし、後宮入りをしてからは呪術を使ったことはなかった。


 それでも、呪術の痕跡を見抜いたのだろう。


「わかりませんわ」


「わからないはずがないじゃない。自分のことでしょ」


「私、そのような恐ろしいことをしておりませんもの」


 可馨は怯えたような仕草をする。


 まるで妃紗麻が恐喝をしているかのように見えることだろう。


 寵妃を妬むのはよくあることだ。そのため、護衛のように宦官が傍にいる。なにかあれば、すぐに制止することができるように見張っているのだ。


 見張り役として与えられた宦官の名を知らない。


 知る必要もなかった。


「呪術とは呪いのことでしょう?」


 可馨は怯えたように言った。


 言葉にするだけでも恐ろしいと言いたげな表情を作る。


「そうよ。わかっているじゃない」


「知識としては知っております。ですが、私にはそのような恐ろしいことはできません」


「嘘ね。内功がなくとも使えるはずよ」


 妃紗麻は断言した。


 ……根拠があるのかしら。


 証拠は残っていないはずだ。


 万が一、証拠があったとしても、可馨を捕まえることはできない。実行犯は春燕であり、可馨ではないからだ。


 可馨は無実だった。


 罪に手を染めていない。周囲の人間が勝手にしていることだ。


 ……貴妃は恐ろしい敵だわ。


 寵愛を受けていない理由が分かった気がした。


 妃紗麻は賢すぎるのだ。そして、正義感が強い。


 間違ったことは遠慮なく指摘し、正しい方向に進むように誘導をする。


 梓豪の嫌いな女性だった。


「あなたが第二公主を殺したとは思っていないわ」


 妃紗麻は笑顔で言った。


 そして、可馨の後ろを見る。


「女官か下女か、どちらかが呪い殺したのでしょうね」


 妃紗麻の勘は的中していた。


 それに可馨は動じない。それどころか、妃紗麻の言葉を真に受けたかのように体を震わせた。そして、怯えるように涙目になる。


「青貴妃様」


 可馨は縋るような声をあげた。


 それに対し、妃紗麻は引いていた。


「あなたの術でお守りくださいませ。私、怖くてしかたがありませんの」


「なにを言っているの?」


「私の宮に犯人がいると考えたら、夜も怖くて眠れません」


 可馨はなにも知らないのだというかのように言った。


 ……騙されるとは思えない。


 演技だと見抜かれているだろう。


 妃紗麻は女官に持たせていた鞄の中から一枚の紙を取り出した。そして、それを可馨に差し出す。


「これは……?」


 可馨は首を傾げた。


 ……護符。本当に差し出すとは思わなかったわ。


 内功や外功を扱うことのできる妃紗麻は様々な分野に優れている。後宮内にいなければ女性初の四大世家当主になることも夢ではなかったはずだ。


 ……私を疑うのをやめてはくれないのね。


 呪術を使った犯人が護符に触れれば、護符は燃え上がり灰となる。


 それを知っているからこそ、可馨に差し出したのだ。


「身を守る護符をあげるわ」


「これを身に付けていれば、大丈夫なのですね?」


「ええ。私が作ったものよ。あなたの安全は守られるわ」


 妃紗麻は自信満々に答えた。


 ……効力はありそうね。


 可馨は護符に手を触れる。すると、護符は淡い光を放った。


 それを見て妃紗麻は目を見開いた。想定外だったのだろう。


「あなた、本当に呪術に手を染めていないのね」


 妃紗麻は意外そうに言った。


 ……八年も手を染めていないからね。


 妓女であった期間を含め、八年間、呪術とは無縁の生活をしていた。それが功を奏したのだろう。護符の淡い光は呪術を使っていない証拠だった。


 ……護符の精度も思ったよりも低いようね。


 護符としての効力は高いのだろう。。


 しかし、精度は低い。仙人や天女になれるほどの人物が作った護符であれば、一度、呪術に手を染めた者かどうかわかったはずだ。妃紗麻の護符にはそこまでの精度はなかった。


「胡 蘭玲」


 妃紗麻は雹華を抱いている蘭玲に声をかけた。


 それは冷たい声だった。


 軽蔑をしているような声だ。


「あなたが楊充媛をたぶらかしたの?」


「いいえ」


「信用できないわ」


 妃紗麻は断言した。


 蘭玲は本来ならば青家に仕えるはずだった。しかし、呪術に手を染めたことから青家から破門となり、後宮に仕える女官として働いていたのだ。


「陛下に充媛宮の捜査を改めて依頼するわ」


「私はなにもしていません!」


「ええ。そうね。でも、あなたの宮の者がなにかをしているかもしれないのよ」


 妃紗麻は可馨を慰めるように言う。


 可馨に対する疑いは晴れたようだ。


 ……護符は使えそうね。


 身の安全を守らなければいけない。


 それほどのことを充媛宮の人間はしてしまっている。


「……そんな……」


 可馨は悲しそうな顔をした。


 考えたこともなかったというかのようだった。


 ……捜査は免れないわね。


 覚悟を決める。


 ……護符は子涵に渡しましょう。


 護符が燃え上がってしまうようなことが起これば、呪術を使ったことがばれてしまう。それならば、呪術の心得のない我が子に渡すべきだろう。

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