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後宮の元妓女は寵愛を受ける  作者: 佐倉海斗
第三話 手段は選ばない

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05.第二公子の謎の死

 第二公子、李 劉帆が死んだ。


 寝室に横たわっていた遺体は無残にも食い荒らされ、両目は床に落ちていた。自然の死とは程遠い有様だった。


 それを蘭玲によって聞かされた可馨は椅子に座り込んだ。


 恐怖で足の力が抜けてしまった。


 ……蟲毒。


 原因はすぐにわかった。


 呪術の一つである蟲毒を使ったのだろう。


 呪術に関する知識のある者ならば、すぐにわかる殺され方だ。


 ……蘭玲が春燕に命令して、させたの?


 そうとしか思えなかった。


 使い捨ての駒のように扱うつもりだろう。


 ……ばれたらどうするつもり?


 可馨も関与していると疑われる可能性もある。


 その前に春燕を始末しなければいけない。


「第二公子様まで亡くなられるなんて……」


 可馨は悲しむ真似をする。


 わかっていたことだ。


 そうなるように仕向けたのは蘭玲だ。蘭玲の言葉に従えば劉帆が命を落とすことになることは、知っていた。


 それでも、知らないふりをしなければならない。


 蘭玲はなにを考えているのだろうか。


「何者かが動いております。楊充媛様」


 蘭玲は素知らぬ顔でそう言った。


 まるで関与をしていないというかのようだった。


「第三公子様から目を離さぬようにお願い申し上げます」


 蘭玲の警告に可馨は驚いた。


 ……どういうこと?


 何者かが動いているというのは春燕のことではないのだろうか。


 ……王昭儀……。


 冷宮に移動させられた朱亞が動いている可能性がある。


 すぐに蘭玲の言葉を理解した可馨は頷いた。


「我が子は守ってみせるわ。協力をしてちょうだい、蘭玲」


「かしこりました。楊充媛様」


 蘭玲は迷うことなく返事をした。


「疑われることもないでしょう」


「どういうこと?」


「私たちは疑われることをしておりませんから。ご安心ください。楊充媛様。あなた様は宦官たちの調査から外れます」


 蘭玲の言葉の意図がわからなかった。


 ……どういうことなの。


 実行犯は郭 春燕のはずだ。


 それなのに疑われないとはどういうことだろうか。


 ……騒がしくなっているというのに。


 劉帆が謎の死を遂げたことにより、後宮中は慌ただしかった。宦官は忙しなく動き回り、妃賓の宮の調査を次から次へと行っていく。


 充媛宮も周囲に合わせるように騒がしくなっていた。


 呪術に関わる者が多いからこそ、死因に気づいた者もいるのだろう。


 中庭では疑われそうな呪術にまつわる本を焼き始めている。枯れ葉の落ちる時期だ。なにかを燃やしていたところで疑われることはないだろう。


「子涵を連れて来てちょうだい」


 可馨は疲れた様子だった。


 傍に置いていないと気が気じゃなかった。


「かしこまりました」


 蘭玲は頭を下げて部屋から出ていく。


 中庭で女官と一緒になって本を燃やしている子涵を迎えに行ったのだろう。


 部屋に一人残った可馨は考える。


 ……雹華の部屋を移したのは気が早かったか。


 生後三か月になる娘の部屋を移動した。


 それは梓豪が決めたことだった。真夜中に泣かれては眠りにつけないという自分勝手な言い分ではあったものの、皇帝の言うことは絶対だ。


 ……女官に任せてはいるけど。


 世話係を部屋付きにした。


 しかし、それだけでは安心できなかった。


 なぜかわからない。得体のしれない不安感が付きまとう。


 ……私の目が届くところにいてほしい。


 二人ともかわいい我が子だ。


 手放すつもりはない。


 通路を駆けてくる足音がする。母親に呼ばれていると知った子涵が蘭玲を引き連れて向かってきている足音だろう。その足音に安心感を覚える。


 いつも大人しい子の足音だ。それが妙に心を安心させた。


「母上!」


 子涵は嬉しそうに可馨の元に駆け寄ってきた。


 まだ劉帆が亡くなったことを聞かされていないのだろう。中庭で下女たちと遊んでいたら、呼び出されたと思っている。


 その無垢な笑顔が心を傷つける。


 王朱亞だけではなく、宋小鈴からも子を奪ったのだと罪悪感が頭を支配する。


 直接手を出したわけではない。


 しかし、二人とも充媛宮の仕業で命を落としたことに間違いはない。


「よく聞きなさい、子涵」


 可馨の声は震えていた。


 ……音繰公子、劉帆公子。


 亡くなった二人の子どもに思いを馳せる。


 あまり交流はなかった。


 しかし、子涵にとって母親の違う兄弟だ。


 ……しかたがなかった。


 子涵を皇帝にするためには、二人の公子が邪魔だった。


 命を奪う以外の方法はなかった。


「劉帆公子が亡くなりました」


「劉帆兄上が?」


「そうです。お前の兄がまた亡くなったのです」


 可馨は子涵を抱きしめる。


 まるで宝物を守るようだった。


「嘘です」


 子涵は首を横に振って否定した。


「だって、昨日も本を読んでくれました」


「……交流があったのですね」


「ごめんなさい、母上。でも、抜け穴を通って兄上は会いに来てくれたんです」


 子涵は申し訳なさそうに謝った。


 他の公子と交流をしないように言い付けていた。亡くなった時に辛い思いをさせたくなかったからだ。


 母親の本心も知らず、子涵は約束を破ってしまったことを気にしていた。


「……母上」


 子涵は涙を流す。


「本当に兄上も死んでしまったのですか?」


「そうです。亡くなりました」


 子涵の言葉に可馨は肯定することしかできなかった。

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