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愛の劇場

婚約者は大切に

作者: towa

読んでいただきありがとうございます

 ここは王城の執務室。

 ここにいるのはマイク第1王子と婚約者のアリアナ。


「なあ、アリアナ」

「何ですか? 殿下」


「婚約をな、解消して欲しいと言うか。正妻ではなく側室になってくれないだろうか」


「へ?」

「君は仕事も出来る優秀な令嬢だ。でも、私の側にはもっと可愛らしい子をな」


「それは、あのジュリアン様を側におきたいと?」

「話がわかる。さすがアリアナだ。彼女は勉学がさっぱりでな。だから君が彼女の代わりに公務を行ってくれれば」


「ジュリアン様は何を?」

「ジュリアンは、私に愛されていればいい」


「私は殿下の婚約者として、今まで頑張ってました。殿下は私の事を愛してくれるのですか?」


「え?君は優秀な女性だから、私の側で仕えることが出来るのだから。ジュリアンは私の『真実の愛』で結ばれた相手で」


「私の事を愛してはくれないのでしょうか?」

「そのだな」

「ジュリアン様に言われたのですか?私以外を愛さないでと」


「う……そうだ。すまない」


「それならば、殿下がジュリアン様の代わりに正妻の公務の仕事をしてください。私には、愛してもくれない殿下の元へ嫁ぎ公務のみをしろだなんて酷すぎます。それならば私も自分だけを愛してくれる人の元へと嫁ぎたいですわ。それとも、私も側に恋人を置くことを許してくれますか?」


「それは、ダメだろう」

「私だって愛されたいですわ。何故ダメなの?側室なのに正妻のサポートではなく公務をするのに?」


「それならば、ジュリアンを側室にする」


「え?私は公務だけするお飾りの正妻にするつもり?愛してもくれない人の国の為に犠牲になれと?それに、サポートもせず殿下に愛されるだけの側室なんて無理よ。許せない」


「わかった……お前も愛するから。これならどうだ?」


「殿下のジュリアン様への愛は随分と安っぽいのですね。後からジュリアンが〜などと言い私の元に来てくれなくなるのが目に見えているわ。その内、ジュリアン様が懐妊して私は白い結婚のまま死んでいくのですね」


「そんな事は……ない」


「それならばジュリアン様を呼んでください。どうせ殿下の寝室で寝てるだけでしょ。ちなみにこの時点で殿下の不貞ですからね」


「……わかった」




「絶対に嫌よ。側室なんて。私とマイク様は『真実の愛』で結ばれているのです。それなのに側室なの?」


「ですって、殿下」

「ジュリアン、私はお前とだな」

「殿下、私の事を愛していないのですか?」


「ジュリアン様、いいですか?あなたが殿下と関係を持った時点で責任が問われる立場となったのですよ。あれも嫌これも嫌などと子供じゃないんですから。殿下の愛だけ欲しいのならば王妃教育を受けてもらわないと困ります」


「無理よ、だって勉強は苦手だし」

「それならば殿下を諦めて」

「いや、殿下を諦めたくない。殿下だけに愛される妻になりたいの『真実の愛』で結ばれた2人なの」



「では、私が愛されもしない、公務をしない正妻の代わりに公務だけをする側室になればいいと?自分が幸せなら他の人はどうでもいいのね」


「……いいじゃない。殿下の事を好きなんでしょう」


「よくないですよ。何故に愛してもくれない人の為に結婚するの?確かに殿下の事は好きでしたわ。でも、醒めたわ。婚約者の時点で大切にされないのに結婚したとしても同じじゃない」


「だって貴族なんだから」

 ジュリアンは口を尖らせ呟く。


「それなら殿下も同じね。貴族……いや王族として、男として私にしようとしている事は何?」


 ジュリアンは何も言えない。勿論殿下も。


「そうだわ。殿下が継承権を放棄して王族ではなく貴族として生きていけばいいじゃない」


「え……継承権を放棄?」


「そうですよ。殿下、これが一番お二人の為には良いではないですか。愛する者同士『真実の愛』なのですから。ジュリアン様も殿下……いや殿下ではなく愛する1人の男性と結婚できますね」


「そんな事したら、アリアナが今まで頑張ってきたのに」


「殿下……あなたは次期国王としての重圧に耐えられなかったのでしょう。だから尚更、無邪気で可愛らしいジュリアン様に惹かれたのだと私は思いますわ。このままでは私を含め3人は幸せにはなれないのですよ……それとも殿下も私さえ我慢して一生を終えて欲しかった?もしそうであったら寂しいですわ。10年も婚約者として……ずっと殿下を見て支えてましたのに」 


「アリアナ……すまなかったな。私が不出来な分、君に負担が掛かっていたのは知ってたんだ……君は強くて賢い……私の助けなど必要ないかとな」


「殿下……違いますよ。私は殿下の為に頑張ってましたの。殿下の隣にいたかったから、ただ側にいてくれるだけで良かったのですよ」



「さて、ジュリアンは私が王族から抜けたら私の元を去るのかな」


「……違う。私は殿下と……いやマイク様と一緒にいたいの」


「ジュリアン……すまなかったな。そしてアリアナ、本当にすまなかった。長い間、婚約者として縛り付けてしまって」


「いいのですよ。さあ、国王様に全て報告を。その位は出来ますよね。私はここを出る準備がありますので。お幸せに」



「あぁ、ジュリアン行くぞ。国王に……父上に一緒に叱られてくれないか?」

「はい、マイク様」


 2人は幸せそうに執務室を後にした。



 静かな執務室に1人。

「はあ、長かったわ。私の仕事も終わりね」


 涙が溢れる。

「うっ、うっ……ううっ」


 コンコンコン。


「アリアナ? 大丈夫かい?」

「うっうっ」

「さあ、おいで。久しぶりに私が抱きしめて慰めてあげよう」

「私……頑張ったのよ。殿下と愛情はなくてもね。家族としてね……やっていこうとね」

「知ってる。頑張ってる姿を見ていたからね。ほらアリアナ」


 両腕を広げる男は王弟のルーカス。


「貴方に抱きしめてもらったら、貴方の婚約者に申し訳ないわ」

「奇遇な事に、私の婚約殿は彼女を守る為に付けた護衛騎士と恋に落ちたようでな。私の婚約も白紙になったんだよ」

「え? 2人は仲が良かったわよね」

「まあ、政略での婚約だけど不仲で一生は辛いからね。それなりの付き合いだったよ」



「いいの?」

「あぁ、勿論だ。このままアリアナを私の領地に連れ帰るつもり。ダメかな?」

「ルーカス……また一緒?」

「あぁ、もう婚約者の交代はなしだ。既に兄上にも報告済みだ。今頃2人は、アリアナを蔑ろにし、公務を押し付けて不貞を続けていた事について怒られているだろう。しかし、2人なら平民になろうと平気だろ」


「平民?」


「当たり前だ。私から婚約者だったアリアナを奪って10年だ。本当ならば今頃は結婚式の準備だったのだぞ簡単に許せないよ」


「あれから10年よ。私は変わったわ」

「あぁ、私も同じだ。形としては政略結婚の様になるだろうな。互いに意見し合い妥協点を探しながら仲良くしていけたらいい。また互いに恋に落ちれば尚いいな」




「さあ。私達も忙しくなるぞ。兄上に報告して、アリアナの両親にも挨拶してだな。明後日には一緒に私の領地に行くぞ」


「ねぇ。慰めてくれないの?婚約解消されたのよ私」

「そうだったな、新しい婚約者のアリアナを幸せにすると誓うから抱きしめさせて」

「ふふっ、ゆっくりでもいい。一緒に幸せになろうね。新しい婚約者様」



 2人は10年振りに抱きしめあったのでした。



 ――――おしまい――――

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