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はじめましてくらまくん

高校生活初めての夏休み初日、する事もないのでリビングでただただ扇風機に当たってボーッとしていると、いきなりインターフォンが鳴った。

「誰?ママも居てないしめんどくさいなぁ。」と思いながらモニターを見てみると、見覚えのない女の人が笑顔で立っていた。


何かの勧誘か?生憎この家の何に置いても決定権なんぞはこの私に微塵も無いので、何も買ってあげることも入信してやることも出来ないぞ。と思いながら出てみると、その女性は今日この近所に越してきたと言う。


「一応挨拶に回らせて頂いてて、これつまらないものなんですけど」ご丁寧にその女性は手土産を持っていた。

「あぁ、わざわざありがとうございます。」

「いえいえ、あなたは…娘さんかな?」

「はい。父は仕事中で母はおばあちゃんの所に今日は出かけてて…」

「そうなのね、見た感じ高校生くらいかしら?うちにも高校生の息子が居るから良かったら仲良くしてあげてね。」

「はぁ…」その後当たり障りのない会話を少しすると女性は帰って行った。


息子の名前はくらま君、私と同じ歳らしい。遠くから引越して来た訳じゃ無いようで、高校は以前通っていた場所に通うようだ。学校も違うとなればきっと関わることは無いだろう。登校のタイミングですれ違ったら会釈くらいはしてやるか。


そんな話も忘れかけて夕方になり、ジュースを切らした事に気がついて買いに出かけようと自転車に乗っていると変な男が居た。その男は両手をブンブンと上下に振り回しながら「コケー…コケー」とニワトリのモノマネのような事をしている。「あっ、これ所謂変質者かも…目を合わせたら負けだ。」そう思ってその場を立ち去った私は、「あれは一体なんだったんだろう。背丈といい、顔つきと言い、私とあまり変わらない歳の男の子っぽかったよな?あんな奴近所に居たっけ?」なんてことを考えながら自転車を漕いでスーパーに向かった。

スーパーで目当てのジュースとついでのお菓子をカゴに入れ、レジに向かっている途中に昼間に挨拶に来た女性を見かけて私は全てを悟った。引越ししてきた私と同じ歳の男の子…


「あいつ、くらまくんじゃない?」

そんなことを考えながら自転車を漕いでいた。


うちの住宅地に着くと、くらまくんらしき男はただボーッと空を見上げていた。

「君、くらま君?」

「え、そうだけど、僕の名前。」

「今日お母さんが引越しの挨拶に来てくれて、その時に少し話したから。この辺で見ない顔だったから、くらま君かな?って」

「あぁ、なるほどね。」

「私同じ歳だから、よろしく。」

「うん。」案外くらまくんは静かな男の子だったし、話してみると思いのほか普通の男の子だった。

「てか、さっきコケーコケーって、何してたの?今もボーっとしてたし」

「え?あぁ、ニワトリって飛べないじゃん。」

「うん」

「ニワトリの気持ちになってみたら、空っていいなって。」

「うん…」


訂正する。こいつは多分変な奴だ。

夏休み初日、どうせする事もないので夏休みの自由研究ってことで、明日から私はくらまくんを観察しようと思う。


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