第10話『地元・茨城へ、第二の野球人生』
プロ野球生活32年。
5つの国と地域を渡り歩き、安川傑はついに現役を引退した。
その半年後――
傑が選んだ新たな生活の舞台は、生まれ故郷・茨城県下妻市。
そして、彼が立ち上げたのは、地域密着型の地元球団アカデミーだった。
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「スグルコーチ、おはようございます!」
まだ小学生の少年たちが、朝からグラウンドに走ってくる。
「おう、準備運動してからキャッチボールな」
「はいっ!」
グラウンドには、茨城の空がどこまでも広がっていた。
楽天でも阪神でもなかった――
ここが、彼にとって**“本当の最後のチーム”**だった。
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生活の拠点となったのは、地元の山あいにある一軒のゲストハウス「MIRAI COTTAGE」。
成旼が中心となってリノベーションした、木造2階建ての温もりあふれる場所だ。
そこには、傑の家族と親戚――
合計6人のメンバーが一緒に暮らしていた。
•妻・朴 成旼
韓国で放送家としても活動を続けながら、日本語と韓国語のバイリンガル講師も兼業。
•長女・安川 霧亜(7歳)
既に日本の小学校では“帰国子女”として話題に。野球よりバスケに夢中。
•次女・安川 祐美子(4歳)
パパっ子。ホルンが好きで、将来は「パパの試合で吹きたい」が夢。
•成旼の妹・朴 梵夜
韓国女優。現在は育児と芸能活動を両立する“二刀流ママ”。
•ソヨンの娘・朴 信恵(20歳)
日本映画界に進出中の注目女優。週末はゲストハウスを手伝う。
•ソヨンの次女・朴 凛奈(17歳)
韓国で高校生ながら探偵業も兼任。“キムチを食べると閃く系女子”。
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ゲストハウスには、地元の人々もふらっと訪れる。
「安川さん、ここって元チャンピオンの家なんだろ?」
「うん、でも今は朝5時に子どもに起こされてるお父さんだよ」
そんな冗談を言いながらも、傑は地域の少年たちに野球を教え、
成旼は母親たちに韓国語を教え、
信恵は地元で映像を撮り、
凛奈は“怪事件”の相談窓口を担当する。
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ある日、客として訪れたのは、かつてのチームメイトたちだった。
阪神から――佐藤輝明、才木浩人、近本光司、湯浅京己たちが笑顔でやってきた。
「スグルさん、マジで田舎暮らし満喫してますね!」
「なんか、ここだけ空気が違う……」
「うちの子、預けていいですか?」
ベンチのない木のテーブルで、昔話と未来の話が混じり合う。
スグルはふと、空を見上げた。
「やっぱり……野球って、最高だな」
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その晩、ゲストハウスの中庭で開かれた小さなBBQ。
傑が焼いた茨城産のネギマを頬張りながら、祐美子が言った。
「ねぇパパ、将来わたし、パパのチームでホルン吹いてもいい?」
「……もちろんだ」
霧亜が少し照れながら呟く。
「わたし……プロバスケ選手になるから、パパに負けないよ」
「おう、絶対負けねぇ。家族対決だな」
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夜。成旼と縁側に座りながら、傑は静かに呟いた。
「球場じゃないマウンドに立ってる気分だよ、今は」
「それでも、あなたはずっと私のエース」
月明かりの下、風鈴がそっと揺れた。
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こうして――
安川傑は、野球を通じて生きて、愛して、つないだ。
その物語は一つの幕を下ろし、
けれどまた、新たな舞台の幕が静かに上がった。
傑の人生は、いつだって「プレイボール」だった。
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