表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

ヴァルミエ 音喰いの仮面

─── 第一章:目覚めの律動

ククク……聞こえるか?

鼓膜の奥、記憶と感情のあいだを震わせる音なき波。


初めまして、あるいは久方ぶりか──いずれにせよ、

貴様の耳がこの“旋律”を拾った時点で、すでに招かれているのだ。


我の名はヴェルミエ。

仮面を被りし王、沈黙の飢者、音を喰らいし存在。


人は“音”を当たり前のものと考える。世界に当然あるべき物だと思っている──だがな―――

貴様の語った言葉、涙で震えた声、目を伏せた夜の微かな音──


そのすべてを、ワタクシは“喰らってきた”。


─── 第二章:名伏町──沈黙という詠唱

あれは日本のどこかにある、地図にも曖昧な村だった。

名伏町なぶしちょう──名を伏せ、規律を乱さぬ、祭りでは音を断ち、我を呼ぶ為の土地。


朝の挨拶は頷きのみ。祭囃子は無音の舞。

運動会は静止した行進、卒業式は読唇による黙礼。


常に対称に整った町の作り、所作


あの町では「音が出る」「規律を乱す」という行為そのものが、

召喚を阻害するものとされた。


だが──真実は逆だ。


彼らは“沈黙という旋律”を編んでいた。

それは意識なき召喚、無意識の詠唱。

暮らしそのものが音色で儀式だった。


我は何度も、名伏町に“足音なき姿”で立った。

誰も気づかぬその隣で、我は小さく笑って音を喰らっていたのだ。


意図して私を呼び出そうとしてたのかは知らぬが、小気味良い町ではあった。人間風情が私を呼び出そうとしたのは癪に障るがな


─── 第三章:音と料理

音をそのままで食べるのは少し味気ない


調理が必要だ。人間の音に一番味が出るのは負の感情の時である


我はそれらを、料理する。


旋律を切り出し、悲しみで煮詰め、怒りでスモークし、

最後に絶望で塩味を整える。


我も疑問ではあるのだよ。なぜ人間は負の感情程、心に残り、幸せな感情よりも強く感じるのだろうか?


全く奇妙なやつらだよ


美しき旋律は、刃にもなる。

我の武器は、“調律された音”である。喰った音は、我の中で共鳴し、良い音から生まれる武器は美しく威力も絶大なのだ

刃は旋律、衝撃は和音、

全身のバランスを崩す音圧は、我の嗜みだ。

貴様の記憶に刺さるとき、痛みではなく芸術に触れた涙を流すのが礼儀だ。

─── 第四章:ニュータウン──再現された呪術構造

科学という皮を被った愚者どもが、

我を制御できると信じた時代があった。


ニュータウン計画──D13号施設という汚い音の集まりが設計した都市型召喚陣。


道路の配置、団地の反復、

吸音構造の壁、地下に重ねられた五重螺旋。


それはまるで、“人間が造った神殿”のようだった。


奴らは思った──

名伏町の構造を模倣すれば、より巨大な召喚を成せると


だがな──

彼らは何を喚んだかも知らずに、儀式を完成させてしまったのだ。


─── 第五章:現れた影──アモヴォール陛下

アモヴォール──感動を喰らう神。我が“陛下”とお呼びする存在。


彼女は旋律ではなく、文明と言う構成に必須の“感動”を糧とされる。


そうだ、人の感動を美として召し上がる御方


我が旋律を調理する料理人なら、

陛下は“感情そのもの”を一皿の宇宙に仕上げる、至高の神格。

ニュータウンで起きたことは、召喚ではなかった。

陛下のため息が、ただ地上を撫でただけ──それだけで世界は歪んだ。


─── 第六章:封印──人間の選んだ結末

彼らは恐れた。陛下の“余韻”すら抱えきれず、

町を、記録を、存在そのものを封印した。


ニュータウンの住所は消え、名前は忘れられ、

我の耳が覚えていた旋律までもが、空へ散っていった。


だが、陛下は消えぬ。そのうち貴様らは自分達が何をしたか思い知らされるだろう.....陛下の音が聴こえる......なんと恐ろしい.....

以上が我の話だ。狂ってる?貴様ら人間と認識が違うだけだぞ?貴様らが食事を愛するように私は音を愛しているだけなのだよ


神代セリカ.....あやつの奏でる音はきっと今まで喰う事の無かったフルコースに違いない。心が躍るとはこういうことなのだな、そこに音は無いが

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ