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新大陸を開拓するため、幼女型モンスターに魂を転送した魔女は、後に邪神と崇められる(自力で幼女になりたかっただけやのに!  作者: 椎名 富比路
第八章 敵は魔物生態系最強 ドラゴン

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第77話 最終話 自分が最強の幼女かどうか、自分がわかっていればいい

[理解不能。【我々】は、アトキン・ネドログを理解できません。最強の要塞を手に入れておきながら、利用権限を放棄するとは]


 溶けていきながら、なおもシステムボイスはウチに話しかける。


「最強の力なんか、いらん。ウチは今が幸せなんや」


[より幸せを求めるため、他を圧倒し、淘汰する力を手に入れる機会でしたのに]


「それが余計なんじゃ」


 他者を必要としない生き方は、ウチも一度は憧れたことがある。他人がわずらわしく、めんどくさくて。自分一人で生きていくために、貯金をしすぎていたことも。


 しかし、この地に降り立ってわかった。


 たしかに人は、一人でも生きられる。他人とかかわらなくても。


 それだけでは、味気ないんだ。


 テネブライの理屈は、他者といるのは「競うことと同意」なのである。

 だから、唯一無二を目指す。


 ウチはそうじゃない。


 他者は、ともに支え合うものだと結論付けた。


 それを教えてくれたのは、クゥハたちだ。


 弟子、友人、国、種族、そして、お隣さん。


 クゥハやカニエがいなかったら、ウチは最強だけを求めて他種族を殺しまくっていただろう。


 ウチを変えたのは、間違いなくウチに関わってくれたすべての人たちだ。


「ウチは最強になりたいんやない。幼女になりたいんや」


 最強の存在かどうかなんて、自分でわかっていればいい。


 ただ、みんなを守れる力さえあれば、いいじゃないか。


[群れたところで、また争いは起きます。我々のように、【個体でありつつ集合体】の理論に、ご理解を]


「交渉決裂や」


 ウチが言い放つと、テネブライの気配が今度こそ消えた……。



 火山も落ち着きを取り戻したのか、鉛色だった空が晴れ渡る。


 すべて、終わったようだ。 



「アトキン、無事ですか?」


 クゥハが、様子を見に来てくれた。さっきウチにケンカを売ってきた、イキリドラゴンに乗って。


「先生っ!」


「おーいっ、アトキーン!」


 カニエやメフティもいる。


「アトキン様!」


 ミネルヴァ姫様こと、トルネルも、ドラゴンの背に乗っていた。



「みんな揃って、お迎えに来てくれたん?」


「ノンキですね、あなたは。あれだけ強敵だった竜が相手だったというのに」


「対話で、追っ払らったで」


「そうですか。あなたらしい解決法ですね」


「せやろ?」

 

 ウチはもう、テネブライにはなんの脅威も残っていないと話す。


「それでな。統治権を、ポーレリア王国というか、トルネルに任せようかなって思ってるねん」


「ご冗談を。この地を統べるのは、アトキン様が適任なのでは?」


 トルネルが、困惑していた。


「ウチはゴザくらいの領地があったら、それでええねん。ウチを飽きさせへんお隣さんも、頼れる弟子もおるさかい」


「ですが」


「ちゃんとした領主がおらんと、テネブライは争いの種になってしまう」


 テネブライの持っていた近未来文明は、ウチがすべて駆逐した。


 しかし、作物などの成長促進など、まだテネブライには科学的作用が残っている。


 そのせいで、テネブライの科学力を悪用しようとする者が現れるかもしれない。


 クゥハの母である、魔王ベルゼビュートだって、おそらく復活するだろう。テネブライの利用価値を狙って。


 それまで、ウチはノンキに発明でもしておこうかと。


「トルネル王女、ここは先生のご意見を組み入れたほうがよろしいかと」


「そうですか、カニエさん?」


「こんな甲斐性なしに国を任せたら、テネブライは三日で滅びるでしょう」


「国を守るために、懸命に戦ってくださりそうですが」


「テネブライの総力を結集して、侵略国を自分でぶっ壊しに行っちゃいますよ? 争いの火種を、自分で起こしちゃいますっ」


 ちげえねえ。さすが弟子。ウチの行動パターンをよくわかっている。


「なるほど。そうでしたら、ポーレリアが責任を持って統治いたします」


「お願いしますわ。トルネル」


 ウチは、トルネルと握手を交わす。


「あなたらしいですね。せっかくもらったおもちゃ箱を、軽々と人に譲ってしまうとは」


「それでええねん。ウチはお気楽幼女生活のほうが、性に合ってるんや」



 そう。ウチは年齢こそ一〇〇歳を超えているが、幼女だ。


 今が一番、若い。


 まだまだ、テネブライの知らない活用法があるかも。


 それを調査するのだ。


「ひとまず、クゥハ。テネブライ周辺をもっぺん見て回ろうやないか」


「ついていきますよ。アトキン」


 ウチは、お隣さんと領地を見て回ることにした。

 


(おしまい)

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