第71話 幼女、竜と対話(物理
竜・テネブライを封じた魔物たちは、テネブライの魔力を抑え込んで、資源を強奪していった。自分たちが強くなるために。
彼らは瘴気でテネブライを覆い、自分たち以外は侵食できないようにした。
だがより強さを求めた魔物たちの間で、テネブライの資源を奪い合う争いが始まったらしい。
「なるほどな。テネブライの魔物たちは、滅びるべくして滅んだわけや」
「『貴様も同類だ』って言っていますね、アトキン」
「テネブライにとっては、資源を奪うやつは、どいつも同じなんやろうね」
瘴気が晴れた今、テネブライは自由を取り戻した。
「せやけど、アンタを外に出すわけにはイカン」
「また奪うのか、ですって」
「……せや。勝ったほうが、すべてを手に入れる。やけど、今度は真剣勝負や」
奪うどころの話じゃない。
「封じるんやなくて、今回は命を奪うで」
「『ならば、ふさわしい身体になってやろう』、ですって。アトキンとの勝負に、応じるみたいですね」
ウチと、対話するつもりか。ただし、物理で。
「クゥハ。あんた、先にヤルか?」
「結構です。あなたとテネブライとのケンカに割って入るなんて、無粋でしょう」
クゥハは、引き下がる。
大穴に、黒い影が引っ込んでいった。
数分後、黒いドレスを着た人形の魔物が、浮かんでくる。
「あれは、バイオジャケットか」
『貴様の真似事をするなど、造作もない』
テネブライが、言葉を話した。
『これが、そちらのルールに合わせた姿だ』
見た目からすると、テネブライの人間形態は、【黒いウチ】みたいな感じである。
顔は、ぜんぜん違う。完全にのっぺらぼうだ。こちらは見えているようだが。
長い黒髪は、黒曜石を思わせる。
プロテクターのようなドレスは、ウチのバイオジャケットに形が似ていた。
しかし、生命体感がなく、肉体含めて機械的である。
「大陸が敵っていうから、ドラゴンそのものかなと思うとってたけど。べっぴんさん設定やないけ」
『艦の余剰パーツを圧縮し、そちとの戦にふさわしい肉体に変換した』
「……艦?」
クゥハが、首をかしげる。
「ああー、はいはい」
反対に、ウチはなんとなく事態を飲み込めた。
だから、敵がやたら機械的だったのかと。
なるほど。魔物がコイツを「大陸」と形容したのが、よくわかった。
テネブライの正体は、宇宙船なのだろう。もしくは、戦艦。
どこからか避難してきたか、あるいは侵略しにきたのか。
はいはい、ほほう。
そんなオーバーテクノロジー、魔物が独り占めをしないわけがない。




