第43話 幼女のポリシー
「アトキンとあろう人が、随分と慈悲深いですね。敵を逃がすなんて。横着なのは知っていますが」
大剣を磨きながら、クゥハがウチをそう評価する。
まあ、横着なのはウチも認めるけど。
「手負いのヤツなんてシバいても、ウチの強さは広まらんさかい。相手の強さが万全で、なおかつ罠だらけの相手側ホームをぶち壊して、初めてウチの恐怖が伝わるんよ」
ウチの最強理論を耳にして、クゥハが唖然としている。
あのダゴンは、エネルギー切れだった。やはり地上に上がる際に、ムリをしているのだろう。
テネブライの魔物は、燃料である瘴気を浴びないと活動ができない。パワーを供給できないため、地上での行動が制限されるのだ。
「カニエ、アトキンってこんな人なんですか?」
「そういう人です。先生は相手の土俵に踏み込んで、土俵を叩き割って肥料にする人なので」
一番弟子のカニエは、ウチをバケモンのように語った。
また、クゥハがポカーンとしている。
「だってウチは、【純魔】やで。純粋な魔法使い、略して純魔。相手の技を一つも受けずに、完封かて可能や。その気になればな。そんな勝ち方、おもろいんか?」
「面白い・そうじゃないで戦闘を楽しんでいるのは、先生だけですよ。相手に何もさせずに倒すのは、むしろ本来は合理的な戦闘術です。それをあなたは、面白くないという理由だけで逃がした」
そうだ。
これで、もう一度街を襲う機会を与えてしまった。
なので、ウチは大急ぎでダンジョンを攻略する必要がある。
「せやけど、ウチかてただ帰したわけやない。ほれ」
ウチは、手鏡型のセンサーを見せる。
「それは?」
「探知機の信号を知らせる、センサーや」
ダゴンが帰っていく際に、小型の探知機をアイツの体に取り付けたのだ。
その結果、ダゴンは海底洞窟らしき地点に潜んでいるとわかった。
さらに、海の底には神殿もあるらしい。
まさに、ボスのネグラと思しき場所ではないか。
「で、海底神殿に向かう方法を探しているところねんか。ベヤム、調子は?」
「ダメだな。崖の側面から叩けるかと思ったが、思いの外、底が深い」
海底神殿に入れる抜け道なども、ベヤムに探してもらった。しかし、空振りに終わっている。
「アトキーン。お客さーん」
メフティが、新聞記者風の女性を連れてきた。
女性は、仰々しいヨロイを着た老騎士を引き連れている。
「昨日ぶりですね、アティさん。トルネルです」
「おお、せやけど、なんのおもてなしもできへんで。堪忍やで」
「いえ、結構です。街を救っていただけたのに、こちらこそなにもせず」
「ただ」と、トルネルが切り出す。
「海底神殿に入る方法でしたら、ございます」




