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ゴーストクローバー  作者: 抹
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2話 変人と軍人

 白いポンチョを着た少女は俺に近寄り両手を掴む。

 

 「いやぁ、先程は大変でしたなぁ。すぐさま避難所に逃げ切れてよかったよぉ」


 「避難所?」


 少女は頷く。


 「そうそう、ロギエ軍から逃げる為の避難所ですな。とりあえず追手はぶちかましやしたんで大丈夫よぉ〜。ただそれも時間の問題なんで、そろそろ逃げへんとねぇ。」


 彼女に軍人を追っ払える力があるかはよく分からないが、今の状況からして先程の夢だと思ったのは現実だろう。

 記憶が直近のものしか思い出せないのは、精神的ショックで飛んだのだろうか。

 まぁそれを考えるのはあとでいいか、今は逃げることが優先だ。

 しかし、どこへ逃げるのだろうか。


 彼女と言ったロギエ軍とやらが国の組織なら、簡単に逃亡は出来ないし、そんなことになるまでの罪を犯したことがない。

 忘れてるだけかもしれないが、だとしても警察ではなく軍隊に捜索されていることから、よっぽどのことだろう。


 「よーし、とりあえず外出ようよ。君が倒れた瞬間見てないからアレだけど、私が発見してから7時間くらい経過してるし、軍にもプライドあるだろうから、倒れてる仲間見つけたら速攻で追ってくるよ」


 彼女は背筋や足を伸ばしたりして、準備体操しながら言う。

 

 あの時は夜だったし、7時間も経過しているとなれば朝か昼頃だろう。

 俺は頷き、彼女と外を出ると眩しい晴天の空だった。

 周囲は森に囲まれているが、木造建築の家が数軒見えるので、積雪量を見るにここは北国の田舎だろうか。


 「晴れたねぇ。とりあえず、南西の方に行きますか」


 「そっちに逃亡経路があるのか?」


 「経路っていうかぁ…仲間が待ってるね。安心してよ。いい人達だから」


  そう言って彼女は歩き始める。


 「そういえば、なんで俺のことを助けたんだ?」


 「ん? それは君が印持者だからだよ。私もそうだし、君は希少種みたいだから軍隊の熱が違ったね」


 印持者?

 聞きなれない言葉だが…それが軍隊を率いて追っかけるほどのものなのだろうか。

 それに、彼女も印持者とやらなら、軍隊に追っかけるられるリスクを背負ってでも助ける必要があるのだろうか。


 「私はハートの印を持ってるけど、あなたは2つの印が混ざった形をしてるでしょ?」


 そう言って彼女は俺の右手を持つ。

 俺の右手の手の甲には、左半分が白いダイヤともう半分の黒いハートがくっついた模様があった。


 タトゥーかと一瞬思ったが、瞬時にそれは違う脳内で否定する。

 この模様からは何か異質な気配を感じるのだ。

 禍々しい、言葉で表せないようなものを感じる。

 

 「初めて見たけど、不思議な印だねぇキリルさんは、どんな能力を持ってるの?」


 どんな能力って…どういうことだ。

 この模様を持つ人は何かしらの力があるみたいに…キリル…?


 俺の名前なのか?


 「なんで名前を…」


 そう口にした途端彼女は、テヘッと笑い舌を出した。


 「君が気持ちよく寝てたから、身分証を見ちゃった。キリル・クローバー17歳でしょ。まさか歳上とは思わなかったよ。童顔って言われない?」


 失礼なヤツだなコイツ。

 信じていいのか疑いたくなってくるが、俺1人になったところで、行き場所を失って餓死するか、軍人に捕まって終わるのがオチだ。 

 それに、彼女は俺が記憶を失っているのを知らないだろうし、ある意味助かった。

 俺自体、忘れていたことだからな。


 「そんなむすっとした顔しないでよぉ〜これから仲良くなるんだしぃ」


 「そういうお前の名前はなんなんだ。名前を聞いてない」


 「私? 私は最強美少女のココアちゃん! チュド〜ン!」


 ココアと名乗る少女は、謎の決めポーズをして、口で効果音?を言う。

 まだ、あって数分程度だが、彼女のことは苦手だなと思った。


 「あぁ、そうなのか。そういや、俺の身分証はどこやったんだ」


 「もぉ〜反応悪いねぇ。話そらすし、君の身分証なら持ってるよ」


 そう言って彼女は服のポケットを弄るが、困った表情になり、ズボンのポケットを触ったり、明らかにないような場所を触る。


 「なくしちったぁ〜」


 彼女は、またテヘッと笑い舌を出した。


 「おいっどうすんだよ」


 流石に身分証を忘れたのはまずい、俺がいた証拠として置いてきてしまうし、俺の記憶を思い出す手掛かりだ。

 取りに戻らないと、時間もそんな経ってないし大丈夫か?


 そう言って後ろを振り向くと、木々の合間から白い迷彩模様が見えた。


 「静かに伏せろ」


 「あれ、今気づいたの?さっきからいたよ」


 「は? なんで言わなかったんだ」


 「いやぁ、雪に足跡残ってる時点で徒歩しか手段がない私達では、いずれ追いつかれるし、森の中でやっちゃおうかなぁって」


 「はぁ?」


 なんで気づいていたのに言わなかったことに驚きだが、それより彼女に軍人相手に戦えるのかどうかの方が驚きだ。

 彼女は見たところ武器のようなものは携帯していない。

 明らかに武装した奴らの方が強いに決まってる。


 「敵うの?って感じだね。色々迷惑かけたし、私がどんなに強いのかを見せてあげるよ」


 そう言うと彼女は、軍人の方へゆっくりと歩み始める。

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