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第6話 領域球生成図式と技法図式

 村長さんたちとの話し合いが終わってから2週間が経過した。


 話し合いの翌日にアウティヘルが家に来たんだけど、母さんが「あら、踏まれに来たの?」と言ったら泣きそうな顔をして走り去って行った。

 それからアウティヘルは母さんに近づいて来なくなった。


 まあ、この発言を聞いた時に僕が思ったのは『アウティヘルが()じゃなくて良かった』ということだ。

 他人の影響を受けやすい人みたいだから、ある意味で心配だったりする。




「ティーネ様、準備できました」


 麦が乾燥していることを確認できたから今度は脱穀をする。

 ステファナが準備したのは『麦ぐし』と呼ばれる脱穀するための道具で、歯が2列並んだ『千歯こき』だ。


 脱穀作業は力加減と勢いが難しくて、遅くも速くもない速度で引くのが良いらしい。ステファナに「良い訓練になりますね」と笑顔で言われて頑張りました。


 最近、その笑顔が怖いのですよ、僕は。


 脱穀後は砕けた藁の破片とかが混ざった状態になっているから、そこから麦の実だけを集める。

 前世なら唐箕(とうみ)の出番だろうけど、この世界では魔法を使う。母さんたちが風魔法を使えるから、弱い風の渦を作って麦の実だけを選別している。


 つまり、魔法が使えない僕はすることがない。


 でも、ここで魔法が使えないことを謝ったり嘆いたりすると母さんが悲しむから、そんなことは言わない。

 前世では科学で対処していたんだから、本当に必要なら自分で作れば良い。ついでに、回転式の脱穀機と唐箕、あとは籾すり機も作れたら便利になるかな?

 構造というか仕組みを習ったことがあるから作れるとは思う。


 まあ、その前に錬金術を使って物作りの勉強をしながら、お金を稼ごうと思っている。お金がないと勉強もままならないから。


 脱穀と納税が終わった日の夜。


 寝る前に母さんに「錬金術で使う素材を集めに行きたいんだけど……」と言ったら、母さんに笑顔で却下された。


 うん、これは本気でダメな時の顔だ。


 理由は色々と聞かされたけど、一番の理由が戦闘力不足だった。


 僕は錬金術師を目指しているけど、辺境で暮らしている以上、身を守る術が必要になる。

 だから、今年に入ってからステファナに剣を教えてもらっている。

 とは言え、まだ訓練を始めたばかりだから『木剣を振って草を折れる程度の力量』しかない。


 かっこ良さげに言っても、『木で草を叩いている』だけなんだけどね。


 で、そんな子どもを森に1人で行かせる訳がない。

 かと言って、全員で行くと母さんも戦えないから、護衛対象が増えてステファナの負担が大きくなるだけ。


 森に採集に行けないなら、村の中にある物で作るしかない。


 だけど、村の中にある木を勝手に伐採する訳にはいかないし、土や石では売れる物は作れない。


 作りたい物や欲しい物のことをあれやこれやと考えながら、家の周りを探していたら1本の木が目についた。木の高さは5m以上で幹は直径30cm程度の木だ。

 この木があることは知っていたけど、今まで気にしたことはない。


 じゃあ、何が気になったのか?


「樹液……」


 木の幹に傷が付いていて樹液が垂れているのが見えた。


 樹液と言えばメープルシロップとゴムが有名だけど、それ以外にも琥珀(こはく)がある。

 この世界では色合いが蜂蜜に似ていることから蜜宝石(みつほうせき)と呼ばれ、一応は宝石として扱われている。ただ、宝石としては値段が安い。

 希少性は高いけど、中に昆虫が内包されているから女性に好まれず、一部の好事家が収集しているだけで、あまり値は付かないらしい。


 琥珀は樹液の化石だと聞いたことはあるけど、乾燥すれば固まるのか、圧力をかけた方が良いのか分からない。


「まあ、試すのはタダだから、やってみよう」


 まずは、木に傷を付けて物質化で作った透明なコップに樹液を集める。

 30分で集まった樹液は10mlぐらい。


 始めに錬成陣の外側にある領域球生成図式(スフィア・パターン)から領域球(スフィア)を発生させて、その中に樹液を入れる。

 そして中に入った樹液は領域球の中心に集まる。

 次に錬成陣の内側に描かれている技法図式(テクニック・パターン)に魔力を送って不純物を取り除く()()を発動する。

 そして次に技法図式を()()に切り替えて今度は水分を抜く。


「……できた?」


 領域球から乾燥させた樹液を取り出して、状態を確認する。


「あぁ、……ダメだ」


 出来上がったのは『乾いた樹液』としか表現できないような物だった。

 固くはなっているけど、指でつまんで力を入れるとボロボロと崩れてしまう程度の強度しかない。乾燥させるだけじゃ、ダメみたいだ。


 続けて、乾燥させた樹液に圧力をかけて固めてみたけど、泥団子と同じで寄り集まっているだけで、強く握れば崩れてしまった。


 次は、抽出と圧力を同時にかけてみる。


「……ん? どうやって?」


 錬成陣は1枚で1効果になっていて、錬成陣の外側にある領域球生成図式(スフィア・パターン)と内側の技法図式(テクニック・パターン)で構成されている。

 僕はスフィアを維持したまま、内側の技法図式を書き換えて効果を切り替えているけど、それでも1枚につき1効果でしかない。


 じゃあ、同時に2つの効果を与えるにはどうすれば良い?


 まず考えられるのは、1枚の領域球生成図式の中に2枚の技法図式を描く方法だけど、それだと領域球生成図式の直径が倍、面積に至っては4倍になる。

 これには、最大で4枚の技法図式を描けるという利点はあるけど、問題になるのは比率(・・)だ。

 領域球生成図式と技法図式の大きさの比率が変わると、技法図式の出力が足りなくなる。


 簡単に言えば、家庭用のエアコンで体育館全体を冷却するようなものだ。


 次に考えたのは、四角い箱型にすることで、それぞれの錬成陣を箱の中心に向けて領域球を重ねて効果を同時にかける。これなら最大6枚の錬成陣を行使できる。

 でも、これだと、領域球を6つも重ねることになるから、無駄に魔力を消費してしまうし、何より領域球同士を重ねても大丈夫なのか分からない。


「やっぱり、領域球生成図式を大きくするしかないのかな?」


 出力を落として複数の効果をかけるか、それとも領域球が干渉する危険性を無視して箱型に錬成陣を並べるか。


「…………? いや、違う!」


 そうだった、僕は領域球生成図式と技法図式を別に扱ってるんだから、1枚だけ領域球生成図式を残して、それ以外は技法図式だけを描いて領域球生成図式に導線で接続すれば良い。


 あとは、扱いやすいような描き方にすれば良いんだから……。


 錬成盤を使う時はテーブルに置いて発動するけど、僕にはその縛りはない。

 だから、僕の正面にモニターを並べる様に、中央に領域球生成図式を含む錬成陣を描いて、その周囲に複数の技法図式を描いて中央の錬成陣に接続する。


「……うん。監視モニターっぽいよね?」


 ちょっと不細工だけど、これなら上下左右に斜めも含めて最大9枚までなら技法図式を接続できるはずだ。


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― 新着の感想 ―
錬成陣=領域+効果 →錬成陣+追加効果     (+追加効果) ……通常なら希少素材で陣を描かなければならないものを無料で自在に描けるんだから攻撃魔法なんざ簡単なのよな…… やりそうにないのが実に残…
[気になる点] 錬成陣=錬成陣+領域球生成図式+技法図式 って説明が意味不明すぎて頭こんがらがる
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