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えんぴつで描く風景画

作者: 大熊 なこ

こちらは、なろうラジオ大賞4 応募作品です。

 真っ白なキャンバスに鉛筆を滑らしていく。綺麗な線を描こうとすると、それはなぜだか上手くいかず、汚いぼろぼろの線に変わってしまう。

 なんでだろう。

 授業中、いつのまにか描いていた彼女の横顔は綺麗な線で描けるのに。

 放課後の美術室の一角には夕日がこぼれ、空気はますます午後の味に変わっていく。

 葵は自分の持っている鉛筆を机に置いた。



「鉛筆に、好きな人の名前書くと、両思いになれるんだって!」

 数学の授業後、心菜が私に教えてくれた。もう高校生だというのに、彼女は占いとかそういうスピリチュアルなものが好きだ。

「見てみて!私、涼介くんの名前書いちゃった」

 そう言って心菜は、はちきれんばかりの笑顔を私に向けた。あぁ、私の恋は叶わない。



 窓の外を眺めると、心菜が走っているのが見える。彼女は陸上部で、部室棟から練習風景を見ることができる。一生懸命走る彼女の姿を見るのが好きだ。抜かれても、抜き返しても、彼女は決して諦めない。腕を降り、足を上げ続けている。

 誰の名前も書かれていない空っぽの鉛筆に視線が移る。

 このことは、誰にも秘密だ。

 鉛筆に、彼女の名前を描いてみた。

 再び席に着き、少し色のついたキャンバスに心菜の名前が刻まれた鉛筆を滑らせていく。なぜ、そのおまじないが生まれたのかわかった気がした。

 キャンバスは私の人生で、鉛筆は私の命なのだ。

人生を共に彩るために、鉛筆に相手の名前を描いて……。


 私はあなたと一緒に人生を描いていきたい。


 鉛筆は、キャンバス上を不器用に滑っていく。

 今まで描いたこともないような綺麗な線が描けた気がした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なこさんの書く物語ってやっぱり素敵………✨ 素敵な物語をありがとうございます!!!
[一言]  瑞々しい感性の話だと感じました。純粋に相手を想う心が痛いほどです。いいお話をありがとうございました。
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