FC SDガンダム外伝 ナイトガンダム物語2 光の騎士
FCのマイナーRPGをやってみた感想文です。
1に引き続き、これもまた何ともい言えない『味』のある作品です。
悪くはないんです。言ってみればドラクエやFFの下くらい。ドット絵のクオリティはそれらの作品より上と言えるほどだし、ガンダムっていう超強力な後ろ楯があるにも関わらず、どうしてもドラクエやFFの壁を越えられなかった、というのがこの作品の率直な感想です。
メニュー画面やセリフバーなど、前作の『SDガンダム外伝 ナイトガンダム物語』から飛躍的に改良されているというか、前作と全く変えたシステムを採用しています。前作は全てドラクエ3のパクリでしたが、今作はメニューのシステムとセリフバー、戦闘画面の背景をFF3から移植し、その他のフィールドや戦闘システム、章仕立てのオムニバスストーリーなどはドラクエ4からの移植というハイブリッドな作品となっています。凄いでしょ?絶対売れるでしょ? でも、売れなかったんです。更に、このゲームならではの特徴を持たせようと試みたのかキャラの大きさは『SFC 風来のシレン』並に大きいのですが、FCの解像度で大きなキャラを表示しようとすれば当然、背景もデカくせねばならず、単に拡大比率になってしまっているだけなのが惜しいというか、ダメなところかと思います。一画面に表示できる周囲の広さが『GB 魔界塔士SaGa』以上に狭い。そのため、大して広くないフィールドやダンジョンも六歩先も見通せないため迷いやすく広大に感じてしまいます。このゲームの特徴としてよく言われる『移動速度が速くて快適』というのも、単に表示できる範囲が狭い拡大表示になっているからというだけで、ドラクエくらい広範囲に表示して同じ距離間を移動するとすれば、移動速度は変わらないです。それでもプレイヤーが『快適』と感じるなら、この表示比率は上手いことやった設定だったとは思いますが。
また、システム面以外にも、このゲームのストーリーは前作の続編としながら、前作とは全く別のストーリーとして成り立っているので、シリーズ物でありながら全く別のRPGとして新たな気分で遊ぶ事が出来る仕様にしたという点も、戦略的には上手い。チャレンジとしては面白い立ち位置の一作だと思いました。
ストーリーは以下のようになります。
前作でガンダムをはじめとするラクロアの勇者たちがブラックドラゴンを倒し、ラクロアの地は平和になりました。しかし、1のエンディングで闇の中に光った謎の紋章や、まだこの世界全体(スダ=ドアカワールド)が平和になっていない事が気になって調査を進めると、ジオン軍の残党が密かに兵力を回復してきていて、新たにジオン軍の総統となったジークジオン(謎の紋章の正体)が既にブラックドラゴンを復活させ再び世界征服を目論んでいるとの情報が入りました。『チャンチャン』ですよ、あんなに1で苦労したのに、全てが振り出しに戻ってます。
まあ、それを聞いたガンダムは、再びジオン軍討伐のためにラクロアから旅立ち、同士のアムロもまた、決戦の日に備えて修行のためにラクロアから旅立っていました。
オープニングで、ここまでは前作を踏襲しているのですが、本編が始まるとアムロが旅先で訪れた、とある地方での出来事というのがストーリーの主軸になり、終盤になるまでジークジオンやブラックドラゴンとの話の絡みは全くありません。
このゲームの本編は以下のようなストーリーとなります。
長い旅路の末、アムロはノア地方のアルガス王国という場所に辿り着きました。
アルガス王国は隣国のムンゾ帝国と長い間、戦争状態にあります。
ブレックスという王が治めるアルガス王国には、騎馬隊、戦士隊、法術隊から成るアルガス騎士団という兵士部隊を有しており、騎士団の団長はアレックス、それぞれの部隊はゼータガンダム、ダブルゼータガンダム、ニューガンダムが隊長を務めていました。アルガス騎士団はガンダム系統から成る騎士団です。
一方のムンゾ帝国はジオン軍の傀儡で、徐々に力を増してきています。
オープニングで、そんなムンゾ帝国との戦いに終止符を打つべく、アルガス騎士団長のアレックスは単独で敵城に乗り込み、余裕で雑魚を蹴散らして行きますが、途中で呪術士キュベレイの罠にはまり、あっという間に囚われの身となってしまいます。
アレックスが捕まって捕虜になったと知ったブレックス国王は、アルガス騎士団にアレックスの救出と、これを機に一気にムンゾ帝国に攻め入って制圧するよう命じます。この時、騎士団はそれぞれ別の地に遠征中で、これら各3つの部隊がアルガス城に帰還して集結する話が1〜3章となります。
戦闘背景の描き込みの緻密さだったり、ムービー演出がFCではトップクラスに凝っていたりするせいで容量の問題もあってか、各章は非常に短いです。遠征先で困っている人を助けるためちょっとしたダンジョンに行って、馬とかアイテムとか取って渡して「ハイ、解決。よし、戻ろう。」みたいな。基本的にどの章も町一つ、ダンジョン一つで終わりです。
第4章になると幾らか話に面白味が出てきます。
4章が始まった時点で、アムロがアルガス城に辿り着いていて、ブレックス王に謁見して旅の目的の話やら現在のアルガス王国の状況やらを話しています。そこへ到着した騎士団の隊長三人が入ってきて、王がアレックス救出やムンゾ制圧の作戦を隊長達に説明し始めたのを横で聞いていたアムロが「俺も一緒に行きたい」と王に直訴します。
しかし、アルガス城はブレックス王を始め、騎士団も城内に仕える全てがモビルスーツで構成されていて、生身の人間は一人もいません。それは単純に生身の人間は弱く、モビルスーツは強固で戦闘にも強いから。そのため、隊長達も王の側近もアムロの志願を笑い飛ばして、隊への加入などあり得ないと言います。しかしこの時、ブレックス王だけはアムロの同行を認めます。王はモビルスーツと人間を差別しない意識が強く、また、アムロがかつてブラックドラゴンを倒した光の戦士の一員だと聞いていたため、アムロの加入を認めたのですが、隊長達も王の側近達も内心は猛反対で、しかし、王の言う事には逆らえず渋々アムロを連れて行く感じになります。この後、みんなアムロを認めていない半笑い状態で話は進み、アルガス城で剣術の師匠ヘンケンや、近所の洞窟で強敵のキングアッザムを倒して、やっとアムロの実力を隊長達に認めてもらえるという流れになるのですが、アムロはLVをMAXの50まで上げても物攻は圧倒的に最弱。素早さが高く回復魔法やバイキルト系の補助魔法を沢山使える完全な魔法使いキャラとなっています。結局、人間は弱いと差別意識を持っているのは開発者だったと悟られてしまうミス設定。
そんなこんなでアムロと団長達がムンゾ城に進撃して、キュベレイを倒してアレックスを救出するまでが第4章となります。
そして第5章は前作の主人公、ガンダムの物語となります。
ジオン軍殲滅を目的にラクロア城を出たガンダムは、とりあえず近所のマーラ城に立ち寄ってみると、マーラ城のマーラ姫がジオン軍下のベクレジオンという悪者にさらわれてベクレ城に監禁されていると聞きます。そこでガンダムがベクレ城に突入し、ベクレジオンを倒してマーラ姫を救出すると、何の作用か分かりませんが『バーサルナイトガンダム』というのに進化します。ここで第5章は終了。
最終となる第6章では、アムロの導きによって騎士団長と隊長達、アムロの一行がラクロア城に到着します。そして、導きのハープというアイテムによって導かれてラクロア城に帰還したバーサルナイトガンダムと合流します。ここでバーサルナイトガンダム、アムロ、騎士団一行はラクロア城のフラウ姫の妖術によってジークジオンの住むムーア界という『デスタムーアから名前モロパクリ』な異世界のラストダンジョンへ飛ばしてもらい、最終決戦となります。前作に引き続き、今作でも『正義圧勝』を子どもたちに見せたかったのか、ラスボス前哨戦のネオブラックドラゴンを倒すとバーサルナイトガンダムはスペリオルドラゴンという完全無欠な最強キャラへと進化し、どうあってもラスボスのジークジオンに圧勝します。
この辺は最早イベントで、子どもたちにガンダム圧勝で爽快感を演出したかったのでしょうけど、硬派なRPGを最後まで堪能したかった大人たちにはガッカリであっさりな最後となるでしょう。
以上のようにストーリーも演出も真っ直ぐに駆け抜けるようで悪くはないんです。ドット絵の描き込みも素晴らしい。それでは何がいけなかったのかと云えば、一つにはキーの配置とレスポンスの悪さ。『話す』と『調べる』と『決定』がAボタンで、メニュー画面を開くのがスタートボタンという使い勝手の悪さは致命的です。Aボタンを押す度にメニュー画面が開いてしまわないのは良いとして、『道具』や『装備』を表示させたい時にスタートボタンを押して、そのままスタートボタンで決定が出来ないというのは指に流れとして直感的ではなく、迷ってBボタンなど押してしまってメニュー画面が消えてしまうというロスを繰り返してしまいます。
更に致命的なのがBGMの悪さです。これはゲーム全体のイメージダウンに繋がる致命的なミスと云えます。これだけの後ろ盾とビジュアルの完成度があれば、あとはFF並のメロディラインのBGMがあったら傑作級の作品になっていたと思います。とにかくBGMが真面目に作ってこれほど下手なゲームって早々無いです。ちょっとお金がかかっても、ある程度名の通った作曲家に頼んでいれば、それこそ完全無欠な傑作ゲームに成り得ていたのに、そこをケチったばかりに全体のイメージがショボくてチープな印象になってしまっているのが本当に惜しいと感じてしまった一本です。
RPGとしてはストーリーもシステムも決して悪い訳ではなく、むしろ良作といえるので、古き良き時代のオーソドックスなRPGを楽しみたいと思う人にはお薦めしても良い一本なのかもと思えました。
完成度の高い作品だと思いました。