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礼音の冒険2

 おそるおそる階段に触ってみるとほこりをかぶっていた。

 長い間使われていなかったということだろう。


「行ってみるか」


 もしかしたら未発見のお宝があるかもしれないと礼音は欲を出す。


 都市に近い森林の洞窟でそんなことがあり得るのか? という考えは彼には浮かばなかった。


 スキルを発動させたままゆっくりと降りていく。

 百段以上はありそうな階段を降りた先の穴の中へさらに進んでいく。


 やがて何かを踏んだ感触があった。


「……うん?」


 ヒモかそれとも小動物かと思った瞬間、


「グアアアアア!」


 野太い野獣のような絶叫が前方から発生する。


「うわ」


 あわてて両耳を抑えるものの、キーンとなってしまった。


「やばいかな」


 スキルが効かないモンスターだったらどうしようという不安が襲ってくる。

 だが、下手に動くのも危険な気がしてその場から動けない。


 息をひそめて5分ほど待ったが何も起こらなかった。


「……まさか、さっきので生き物が死んだとか?」


 礼音は何らかの理由でモンスターが死ぬ瞬間、偶然立ち会わせた可能性を思いつく。


 そんなバカなとは思うものの、説明ができてしまうのも事実だ。


「モンスターの死体を持ち帰れたらいいんだが、俺だと無理かな?」


 彼は今日【アルカン】にやってきただけの、まったく鍛えていない一般人である。

 一部分だけでも持ち帰れたらそれでよしとするべきだろう。


 ゆっくりと悲鳴が聞こえた位置に進んでいくと、大きな影が視界に入る。

 ピクリとも動かない様子から死体なのだと推測した。


「明かりがあればな。出口はどこだろう?」


 声に出してみる。

 ゆっくりと黒い影を避けて歩くと、奥に穴があったので入ってみた。

 

 すこし進んだ先からは光が漏れていて歩きやすい。

 

「でも光? ここでか?」


 疑問を口に出すが、何が起こっているのかわからないのはいまさらの気もする。

 そんな礼音がたどり着いたのは小さな洞窟とでも言うべき穴だった。


 壁のいたるところから白く光を放つ石が埋まっていて、それが財宝の山を照らし出している。


「マジか!?」


 礼音は思わず叫ぶ。


 まさか本当に財宝を発見するという出来事を体験するとは、とても言葉では表現できない。


「……大丈夫だとは思うけど、スキル利用時間はいくら残っているかな?」


 自分の体感時間よりもスキルの使用時間のほうが信用できる。

 それにスキルは都市に戻るまで使い続けられるほうがいい。


 そういう考えのためだ。


「レベル50 スキル【存在感なし】255/1090」


 と【ゲート】パスポートに書かれている。


「……はい?」


 礼音の目が点になった。


 いつのまにかレベルが49もあがっているし、スキルの有効時間らしき数字もはるかに増えている。


「どういうことだ? スキル発動時間が240分を超えてるのはわかるんだが」


 レベルをあげるために必要なことを何かやっただろうか。


「……スキルを使っているだけでレベルがあがるわけじゃないよな? それだといきなり50になるのは変だしな」


 礼音は考えたが、やがてわからないと結論を出す。


「とりあえず財宝を持って帰るだけ持って帰ってみよう」


 もしかしたら発見した報酬をもらえるかもしれないと彼は期待する。


「さすがに全部もらえるとは思えないけど、一割だけでももらえないかな」


 一割に根拠があるわけじゃなかった。

 礼音は両手で持てるほどの財宝を持ち、そのまま来た道を引き返す。


「アイテムボックスとか、収納袋とかあったらいいのになあ。そういうスキル持ちっているのかな?」


 一度に持ち帰れる数のすくなさにすこし不満をこぼしながら。

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