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手ごわそう

「フカヒレも蟹も美味しいですね」


 と礼音は感想を言った。


「こんなに美味しいものを知らなかったなんて、損をしてた気分だ」


 小声でひとりごとを言ったのだが、エヴァの耳はばっちり拾う。


「これから楽しめるわよ!」


 と彼女は笑顔で言う。


「そのとおりだ。レオンはたしかまだ二十歳くらいなのだろう?」


 とリチャードに聞かれたのでうなずく。


「ワタシとは四歳か五歳くらいの差なのね」


 エヴァは興味を持ったらしい。


「何の心配もいらないな」


 とリチャードは彼女に微笑む。


(何の心配だ?)


 礼音は何のことかさっぱりわからない。


 ただ、何となくそれを言うのはためらわれたので、声や態度に出さないように注意する。


「問題は手ごわそうだが」


 とリチャードは彼を意味ありげに見た。


「平気よ!」


 とエヴァは自信ありげに微笑む。

 礼音はやはり沈黙を守り、水餃子を食べる。


(うん、美味い)


 と感心した。

 いい店は何から何まで美味しいと感動する。

 

 人から見れば滑稽なことかもしれないが、礼音は初めの体験だ。


「レオン、美味しい?」


 とエヴァは聞く。


「ああ。とても美味しいよ」


 彼が答えると、


「よかったわ、喜んでもらえて」


 と彼女は安心する。


「どれが一番だった?」


 エヴァはさらに質問を放つ。


「うーん、俺はエビか蟹かなあ」


 と礼音は迷いながら返事をする。


「ほんと!? ワタシもエビが好きだし、美味しかったわ!」


 とエヴァはサファイアのような瞳を輝かせて喜ぶ。


「気に入ってもらえたなら何よりだ」


 リチャードは満足そうに言ってお茶を飲む。


「明日の予定について聞いてもいいかな?」


 そして彼はレオンに問いかける。


「決めてませんね。エヴァと日帰りで【アルカン】に行ってもいいのですが」


 と礼音は迷いを言葉にした。

 

「行きたいわ!」


 とエヴァがすぐに反応する。


(この子はそうだろうな)


 礼音は予想どおりだと思いながら、リチャードに話しかけた。


「ですがそんなに体力を使い続けてもいいのでしょうか?」


「……あなたの懸念はわかるよ」


 とリチャードは苦笑する。


「闘病生活が長かったこの子の体力が落ちているのでは? ということだろう?」


「ええ」


 礼音は自分の不安が理解されていて、すこし安心した。


「私も同じことを考えていたのだが、【ヌーカ】という薬が想像を超えてすばらしい効果らしい。いまのところ何の問題もないんだ」


 とリチャードは話す。


「そうなんですか」


 と礼音が言うと、


「そうなのよ! 心配してくれてありがとう! でもワタシは大丈夫!」


 とエヴァは自分の胸を軽く叩く。

 立派な果実が震える瞬間を彼は目撃したが、紳士的に目をそらす。


「とは言えレオンの気持ちもわかるので、当分は日帰りだけで御願いしたいな」


 とリチャードは言う。


「賛成ですね。あっちもすこし不安材料がありますから」


 と礼音は言って、サーベルフォックスの話を伝える。


「なるほど。なら慎重になるくらいでいいだろうね」


 リチャードがうなずき、


「わかってるわ」


 とエヴァも残念そうに言う。


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