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決めた

「鮮魚の前菜になります」


 と女性スタッフが最初の料理を持ってきた。


「ふたりとも魚はいけるんですか?」


 そう言えばと礼音が聞く。


「すっかり寿司の虜だよ」


 とリチャードが微笑み、


「ニホンって魚が美味しいのね! 肉も美味しいけど」


 とエヴァが元気よく答える。

 

「美味いものは美味いと思うけど、俺は外国のこと知らないからな」


 礼音は小声で応えた。

 

「アメリカは肉が美味しいわよ? あとお菓子」


 とエヴァが話すが、はたして信じていいのか。


「行ってみたいね」


 と礼音は言うが半分は社交辞令だ。

 本音じゃアメリカにある【ゲート】からどこに行けるのか、という興味が大きい。


「来てくれる?」


 なぜかエヴァが目を輝かせたので彼がきょとんとすると、


「その話は今度でいいだろう」


 リチャードが咳ばらいをして制止する。


「投資の件だが、試しに5000万ドルほど運用してみないか? 100万ドルの利益を渡す自信はあるよ」


 そして老人はおだやかに言った。

 世間話のノリでしかないので、説得力は大きい。


(この人なら本当に年に1億円くらいの利益を得そうだな)


 と礼音は思ってしまう。 


「投資はしたほうがいいでしょうかね?」


 と彼は率直に聞く。

 しなくても困らないのだから、という意識があるのは否定できなかった。


「実のところ必ずしもやらなくていいと思う」


 リチャードは意外な答えを返す。

 驚いて見つめる礼音に、


「なぜならいまのあなたはメリットをあまり感じてなさそうだからだ。利害を計算し、メリットのほうが大きいと判断したときにやるべきだと思うよ」


 と彼は語る。


「ワタシはお金を寝かすのはもったいないと思うけれど……」


 エヴァは前菜を食べながら遠慮がちに言う。


「決めるのはレオンだよ。私は選択肢を出すだけだ」


 リチャードは落ち着いた調子で言い、それから前菜をゆっくりと食べる。


「うーん……」


 と礼音は悩みながら前菜を味わう。


「美味しい」


 中華料理ってこんなに美味しいのかという驚きが最初だった。

 それからゆっくりと味わう。


「決めました。50億円、試してみます」


 と彼は答える。


「早いわね!?」


 エヴァがぎょっとして手を止めた。


「思い切った決断だったね。ゆっくり考えてくれてよかったのに」


 リチャードまでもが意表をつかれたようだった。


「理由を聞いてもいいかな?」


 と彼は言う。


「リチャードなら悪いようにはしないだろうと」


 礼音はまずリチャードに対する信頼を述べる。


「あと、不労所得は多いほうがいいですしね」


 と彼は第二の理由を明かす。


(50億ならもし損しても、まだ100億円以上が残る計算だからな)


 そして第三の、最大の理由は言わない。

 失敗してもあまり困らないという状況が彼の背中をあと押ししたのだ。


「そうか。あなたからの信頼に応えられるようにベストを尽くすよ」


 とリチャードはおだやかに笑いながら決意を話す。

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