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リチャードの趣味

「中華料理は好きかい?」


 とリチャードに聞かれたので礼音はうなずき、


「中華って言ってもラーメンとか点心くらいしか知らないんですが」


 正直に打ち明ける。

 彼ら祖父と孫娘に見栄をはってもうまくいくはずがない。


「なら今日はワクワクするんじゃない? ワタシも詳しくないんだもの」


 とエヴァは言葉どおりワクワクした表情で話す。


「そっか」


 と礼音は答える。

 彼女はいままで病気で療養していたのだ。


 中華料理を楽しむ生活とは無縁だっただろう。


「そんな顔をしないで」


 と礼音の表情を見たエヴァが微笑む。


「ワタシの大切な時間はあなたがもう取り戻してくれたわ」


「うん」


 と彼はうなずく。

 無限にもひとしい信頼、感謝の念を受け止める。


 三人はエレベーターで移動し、中華料理のレストランへ入った。

 

「何かすごい雰囲気だな」


 と礼音はつぶやく。

 格調高いという表現が彼の頭にも浮かぶ。

 

「すぐに慣れるさ」


 とリチャードは優しく言う。

 チャイナ服を着た女性スタッフが三人を出迎え、案内してくれる。


「今日の料理はどんなものなの?」


 とエヴァが祖父に聞く。

 

「コース料理だよ。念のため辛さはひかえめと伝えてある」


 リチャードがおどけて言うと、


「それは素敵ね」


 エヴァは安心して微笑む。

 礼音も実はほっと胸をなでおろす。


 中華料理によっては辛いものがある、くらいは彼も聞いたことがある。


「レオンは?」


 とエヴァが聞いてきたので、


「からいものは得意じゃないからありがたい」


 と答えてリチャードに感謝をあらわす。


「よかった。確認してみたら、あとでからくすることは可能だったのでね」


 とリチャードは説明して微笑む。


「へー、それはありがたいですね。みんなからさの好みがバラバラだったりする場合とか」


 と礼音が言うと、


「お店はその点を想定してるのかもしれないわね!」


 とエヴァが答える。


「たぶんね」


 とリチャードは言う。

 そのあと雑談に入り、リチャードが


「レオンは投資には興味はないかな?」


 と聞いてくる。


「投資ですか?」


 脈絡がなさそうな質問に礼音はきょとんとした。


「ああ。あなたの資産を投資で運用して、増やすのはどうかなと思っていてね。タイミングを見計らうといつまでも言い出せない気がしたので、いま言ったんだよ」


 とリチャードは言いながらグラスの水を飲む。


「興味はありますが、何しろ知識がないものですから」


 と礼音は答える。

 彼にしてみれば遠回しに断ったつもりだった。


 知識がないので怖いのは事実だが、100億円もあればあとはのんびり暮らすことができる。


 わざわざリスクを冒す理由が彼にはなかった。


「平気じゃない? おじい様、趣味の投資で150億ドルほど稼いだはずだから、おじい様に頼れば」


 エヴァがやはり水を飲みながらさらりととんでもない発言をする。


「趣味の投資? 150億ドル?」


 礼音は思わず反すうした。

 趣味で1兆5000億円ほど稼いだという意味に聞こえたからだ。


「まあね。好きが昂じた結果だから、あまり威張れることじゃないんだが」


 と話すリチャードはすこしも得意そうじゃなく、それだけに信ぴょう性が高い。

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