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優しい子

「立ち話も何だから、よかったら移動しないか?」


 とリチャードは提案する。


「ええ、どこがいいでしょう?」

 

 礼音が聞くと、


「いい場所を確保してある。まずは車に乗ってくれないか?」


 リチャードは答えた。


「わかりました」


「楽しみね!」


 とエヴァが華やかに言う。

 礼音はうなずいたものの、「この子がいるからだな」と内心思う。

 

 一緒にいるだけで明るくて楽しい気持ちにさせてくれるのは強いし、すばらしいことだった。


 見覚えのある黒塗り高級外車に三人は乗り込み、当然のようにエヴァは礼音の左隣を確保する。


 リチャードは礼音の正面に座って車はなめらかに走り出す。


「法人【三日月オフィス】の拠点についてなんだが、ヨヨギ上原はどうかな? アクセスはいいし、シブヤにも近い。エヴァが通う高校にも便利だ」


 とリチャードは切り出した。


「代々木上原ですか? 俺はいいんですけど」


 礼音はちらっとエヴァに目を向ける。


「ワタシはどこでもいいわよ! レオンと一緒なら」


 彼女は笑顔で力強く言った。


「そっか」


 礼音は顔が熱くなる。

 彼女はアメリカ人だからか率直な物言いをするが、彼はまだ慣れない。


「なら話は早い。いま向かっているところだから」


 とリチャードは言った。


「実物を見せて反応をたしかめようと思ったんだ」


 ぎょっとした礼音に説明する。


「ああ、なるほど」


 彼は言われて納得した。

 場所名を言われてもピンとこなかったときに備えて、実物をということだろう。


「しかし代々木上原なんて人気がありそうなエリア、よく見つけましたね」


 礼音が不思議に思っていることを告げる。

 代々木上原は人気があり地価も高いエリアだろう。


 短時間でどうやって物件を探して確保したというのか。


「仕事柄、ツテがあってね」


 リチャードは偉ぶることもなく、おだやかに笑う。

 礼音はそれ以上聞かないことにする。


「そうなんですね」


「おじい様、いまはのんびりしているのよ。だからワタシと一緒なの!」


 とエヴァがうれしそうに話す。


「そうか、よかったな」


「ええ!」


 レオンの言葉に対し、彼女は心底幸せそうに微笑む。


「寂しい思いをさせてすまなかったね。できるだけ穴埋めをしたいと思っているんだ」


 リチャードは心苦しい表情で言う。


「平気よ! おじい様もお父様もワタシのためにがんばってるって、知ってるもの!」


 エヴァは笑顔で対応する。


「……優しくて頭のいい子だね。エヴァは」


 リチャードは安心したような、罪悪感が残っているような、複雑な表情だった。


「エヴァはいい子ですよね」


 アメリカン人たちの応酬に影響されたか、礼音は直接的にエヴァを褒める。


「ああ」


 とリチャードはうれしそうに破顔した。


「ありがとう!」


 エヴァは楽しそうに笑う。


 話がそんなに進んでいるわけじゃないのに礼音がストレスを感じないのは、彼女の影響だろう。


「どんなところかワタシも楽しみだわ!」


 とエヴァが言ったので、礼音は彼女も見たことがないのだと知る。


「面白かった!」


「エヴァが可愛い!」


「エヴァとの今後が気になるっ!」




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