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調べさせてもらった

 渋谷支部に顔を出して金貨10枚を1000万円に換えてもらう。


「順調だな」


 と礼音は自分のアパートに戻って思う。


 毎日働いているように見えるが、実際のところは【アルカン】にピクニックに行っているようなものだ。


 フリーター時代のつらさや身を削られるような感覚とは無縁だし、楽しみすらある。


「……何か美味いもんでも食いに行くか」


 いまの彼には金銭的な余裕があるのだ。

 気分的にファミレスに行く。


「ハンバーグセット、フライドポテト、サラダ、それからデザートにパフェを」


 思い切って注文しても会計が怖くないのがいい、と礼音は思う。

 最初に来たのはキャベツ、ミニトマト、キュウリの生鮮サラダだ。

 

 これに付属のドレッシングをかけて食べてる間に、あつあつのフライドポテトが届く。


「美味い。これこれ」


 やっぱりフライドポテトは塩をかけて、あつあつを食べるのが一番だと礼音は実感する。


「フライドポテトはなぜ美味いんだろう? 美味いから美味いんだな」


 なんてひとりで言ってひとりで結論を出す。

 続いてきたのはハンバーグ、スープ、ライスのセットだ。


 スープやライスもいいが、目玉はハンバーグだ。

 たっぷり150グラムあるし、肉汁もあふれる。


「うまうま」


 思わずひとりごとが漏れるが気にしない。


「はー、腹いっぱい食ったー」


 と腹をなでながら彼は満足し、食後のコーヒーを飲む。

 食べたいものを腹いっぱい食べる。


 これ以上のぜいたくを彼は思いつけない。


「……メシは日本のほうが【アルカン】より美味い気がするんだよな。俺が日本メシに慣れてるだけか?」


 と礼音は首をひねる。

 もちろんひとりで考えたところで答えが出るはずもない。


 スマホから通知音が届いたので見てみると、リチャードからだった。


『エヴァが明日会いたいと言っているがかまわないだろうか?』


『大丈夫です』


 礼音は即座にメッセージを返信する。

 予感はあったので彼は今日帰ってきたのだ。


(さすがに明日だとは思わなかったけどな)


 と苦笑する。


 会いたい会いたいと言われてもいやじゃない。

 エヴァの純粋な好意を無意識に察しているからだろう。


 鈍感で恋愛経験がない礼音は、エヴァの好意の種類まで気づいていない。

 病気を治療してくれた医者への感謝の親せきだと思っている。




 次の日の昼、礼音はリチャードから指定された病院の前に行くと、赤いブラウスにジーンズという服装のエヴァに出迎えられた。


「レオン!」


 彼女がうれしそうに抱き着いてくる。


「やあ」


 と答えて彼は彼女を抱きとめた。


「すっかり健康になったんだね、エヴァ」


「レオンのおかげよ!」


 エヴァは離れて最高の笑顔を彼に向ける。


「……よかった」


 健康になった結果、アメリカ産のボディだとはっきりわかるようになっていた。

 礼音は何とか表情に出さず、紳士的な態度を維持する。


「たびたびすまないね、レオン」


 とリチャードが次に彼に声をかけ、ふたりは握手をした。


「さっそくだが、あなたのことは簡単に調べさせてもらった。いまはフリーで法人を設立したそうだね」


「……ええ」


 礼音は驚いたが、調べることは可能なのだろうと割り切る。


「詳しいことは食事をしながら話したいんだが、かまわないかな?」


 とリチャードは聞く。


「もちろんです」


 病院の前で立ち話するのは何となく避けたいのは礼音も同じだ。

 彼が同意すると、


「では車に乗ってくれ」


 とリチャードに言われて黒塗りの高級外車が彼らの前にとまる。


「ワタシ、レオンの隣がいいわ、おじい様!」


「もちろんだよ」


 エヴァの要望に、リチャードはおだやかな笑顔で答えた。

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