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お手柄

 さらに礼音は木をふり回す練習をして、いくつかの素材を拾ってから都市リーメの交易ギルドに帰還する。


 シュオがいたので彼に素材を提出すると、


「サーベルフォックスじゃないか。こいつが出るシーズンが来たか」


 モンスターの死骸を見て、顔をしかめた。


「サーベルフォックス? 何かやっかいなモンスターなんですか?」


 いわゆる害獣ってやつだろうかと礼音は思いながら聞く。


「こいつ自体は違うんだが、こいつを狙って大型の肉食モンスターがやってくるんだ。そうすると都市の安全もおびやかされることになる」


 シュオは苦い顔をして言った。


「それは……大変ですね」


 適切な言葉を見つけられず、礼音は他人事のような発言をしてしまう。


「早期発見になったので、住民に注意喚起できるし、戦力の手配も早めにできる。お手柄だよ、レオン殿」


 シュオは一転して笑顔で礼音を褒める。


「お役に立てて何よりです」


 礼音はホッとして答えた。


「サーベルフォックス一頭の買い取り価格は金貨5枚だが、早期発見報酬として金貨10枚が別途支払われる。これは都市での取り決めでね」


 とシュオは説明する。


「どうも」


 取り決めにならもらおうと礼音は素直に受け取った。


(金貨15枚……1500万円の稼ぎか)


 ピクニック半分と考えればかなりボロイ商売と言える。


 はっきり言って仕事をクビになっても困らない。

 それどころかクビになってよかったと言えそうだ。


「何ならもうすこし調査してくれないか? もちろん報酬ははずませてもらうよ」


 とシュオから依頼が出される。


「すみません、今日のところはこれで引き上げたいと思います」


 礼音は断りを入れた。

 いつもなら引き受けてもいいのだが、エヴァの様子が気になっている。

 

 驚異的なペースで快復しているので、近いうち【アルカン】に行けると言われるかもしれない。


(定期的に様子を見てチェックしておいたほうがよさそうだ)


 と彼は思うのだ。


 獰猛な肉食モンスターがこの都市に集まってくるなら、エヴァは来ないほうがいい。


 もちろんほかの都市に行けるなら別だが、情報の共有はしておきたいのだ。

 それに彼はいま生活に困ってるわけじゃない。


 何もしなくても生涯安泰と言える稼ぎはすでに手にした。

 気が進まないことをやろうとは思わない。


「そうか、無理を言ってすまなかったな」


 とシュオはあっさりと引き下がり、彼に謝る。


「いえ、こちらこそ役に立てず申し訳ないです」


 と礼音も謝っておいた。



 彼が交易ギルドの外を出ていくと、さっそく情報共有ができるようにシュオは手配をする。


「本当にサーベルフォックスが出たんですか?」


 とひとりの職員が懐疑的な顔をして、シュオに聞いた。


「持ち込んだのは【宝蛇殺し】殿だぞ」


「!? 至急あちらこちらに連絡しないといけませんね」


 持ってきたのが礼音だと知らされた職員たちは、全員が真剣な顔になる。


「疑う者には持ってきたのが【宝蛇殺し】殿だと伝えろ。そうすれば協力的になるだろう」


 とシュオが命令を出す。


 本人が知らないところで礼音はすでにそれだけの信頼を、都市リーメや近郊の人々から得ているのだった。

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