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アルザースの塔

三人がアルザースの塔の着く頃には日は陰り東門から除く水平線には太陽が見えていた。全く違う世界に降り立って十二年、昔を思い出す事が出来る物の一つである太陽。それを見ると落ち着くのはどういう心境なのだろうか。

 塔に着くと入り口には衛兵が居た。ヤングが衛兵に顔を見せると衛兵は敬礼をし手間取らずに入場する事が出来る。流石役付き、顔パスだ。


「にしてもエレベーターがあるとはなぁ。便利すぎるだろ、この世界」


 巨大な箱の中で感想を漏らす。


「……?便利でしょう。大魔晶を使ってますからね。これ程の規模の魔道具はそうそうありませんよ」

「三十人は乗るからな」


 数秒で屋上に着く。屋上にはこれと言ったものは無く二台の巨大な望遠鏡と思われる物が置かれているだけであった。辺りはもう暗く王都の光が綺麗に光る。


「綺麗なもんだな。世界三大夜景的な。にしてもなんもねぇな。望遠鏡は二台だしな」

「そうですね。下の階にはの階には色々な軍事施設が内蔵されているんですけどね。屋上は監視だけが目的ですから。監視も主に遠視の天啓を持つ者で行いますからね」

「望遠鏡は予備だな」

「なるほど。望遠鏡は観光客用的な感じか」


 一般人は遠視なんて天啓は持ってない。きっと観光の目玉にしてお金を稼いでいるのだろう。


「いや、違いますね」


 違うらしい。


「観光の方はここまでは入れませんよ。ここは関係者以外立ち入り禁止と言うやつですね。なので観光の方は下の展望台か飯屋に行きますよ」

「そうなのかよ。そりゃありがたいな。で、下には飯屋があるんだって?ならもういい時間だし食いに行こうぜ」


 俺の提案に二人は賛同し再びエレベーター(仮)に乗る。階下の居酒屋のような店に入り席に着く。


「いいな。こういう雰囲気の店も。落ち着くってかさ」

「そうですかね?王都にはこんな店溢れ返ってますよ」

「ここはそのなかでもいい店だな」


 確かに他の街にもこういう店は多かった。だが暴れている客が居ないのは正直初めてだ。大騒ぎしている客は居るが普段からすると静かな方だ。


「あ、そうだ。さっきのさ望遠鏡って結局何の為なんだ?遠視の天啓持ちが居るなら使わないだろ」

「今はそうですね。でも昔はそう都合よく遠視持ちが居なかったんじゃないでしょうかね。あの望遠鏡は昔から付いていますし」


 料理も届いたところで俺の話から話題は流れ現在帝国と行っている戦争の話になる。二年前からネロ王の王命で始まった戦争。開戦当初は侵略戦争だった為、帝国内領地で戦闘が行われていたが敵の思わぬ反撃により今では王国領地内の防衛戦争となってしまったという。

 それもこれも帝国の将の実力を見誤った事によるものらしい。帝国には最近になって頭角を現した者が数人いる。その情報を前もって入手する事が出来ず不利な戦いを強いられている。


「ですから今も戦線は厳しい状況なんですよ。なので義勇兵を募集していたりするんですが見た事ありませんかね」

「あー多分あるわ。中央広場でなんかやってたな。確か三日後に東門の外の駐屯地に集まってくれとか言ってたな」


 二人を待っている時に見たような気がする。


「それですね。定期的に人を集めてルネートル領に送っているんですよ。王都からは3カ月ぐらいの距離ですから素人さんには大変でしょうけどね」

「今が踏ん張り時だからな」


 三カ月と言うとリンガラから王都までぐらいの距離の三倍だろう。シーフも慣れはしたが王都まで来るのに大分体力を奪われた。あれを戦闘前にしなければいけないのは素人にとっては地獄だと思う。


「そりゃ大変だ。にしても義勇兵を募集しなきゃやばいぐらいなのに国民は呑気なもんだな。全然状況が分かってないだろ」

「1年ちょっと前は緊張感もあったんですがね」

「もうずっと防衛戦だからな」


 一年以上も戦況が変わらなければ次第に気も緩むというものかと思うがそもそも俺はリンガラに来るまでは戦争の事なんて知らなかったぐらいで興味も無かった。だからそう言われればそういうものだと納得してしまう。そういう訳で話を切り上げ食事を楽しむ。

 一通り食べ満足した一行を店を出て解散する。俺は今日一日案内のお礼をし宿を目指す。またいつか王都に来た時には再び飯でも食べたい。

明日は王都に来た目的を果たす日。つまり天啓保持者に接触する日だ。観光で緩んだ気持ちを新たにし帰路につくのだった。


次回 天啓保持者2人目!

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