表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/129

呪われた二人

 よくよく考えてみると魔人族と言われても一体なんの事か分からない。その場の雰囲気と勢い、前世の基礎知識があった為、流してしまったが結局のところ何も理解できていない。ルネートル城塞にある転移術式から転移する際、ずっとこの事を考えていた。そもそもルネートル城塞に魔人領へと繋がる転移術式の魔法陣が刻まれている事自体、前領主は魔人領の存在を知っていた事になる。勿論、現領主のルシャーノも知っていた。王国の重要人物にしか知る事が許されない領域。王国領土の上空に存在するも目視する事は叶わない浮遊島。


「全ては女神の御業か」


 これは魔人族に伝わる伝説。百年以上前に起こった人族と魔族の戦争、人魔西南戦争から始まる。魔族と言うものは知能が低く馬力があれど、それを活用する頭が無い。つまり戦争とは名ばかりの虐殺であった。人族が領土を求めて一方的に魔族を蹂躙した。そのせいで魔族はその数を大幅に減らし絶滅寸前まで追い込まれた。そこで登場するのが女神へレアだ。そんな魔族を不憫に思った女神は魔族を種族として格上げ、進化を行い魔人族が誕生した。女神は王国の上空に彼らの為の浮遊島も用意し数で負ける魔人族たちに制空権を与え対等に戦えるようにした。だが、当時魔人族の纏め役は戦争を継続する事は愚策だと考え、自分たちの存在を隠す事で戦争を終戦させた。


「それがあんただって事か」


 シーフら一行は今、魔人領の中央に存在する魔王城の王座の前で魔王ケイス=シャイターンと対話をしていた。


「儂は種族で言うならば魔人族では無いのでな。こうも長生きする事になったのじゃ」

「魔族という事ですか?」

「いや、ヘルメス。今の話の流れで下に行く事は無いだろ」

「そうじゃな。魔族、魔人族、そして悪魔。儂は悪魔の位に居る」


 そんな文字通り次元の違う存在、帝国軍を壊滅させたのも納得がいく。


「それにしても魔人族にとっては絶滅寸前に追い込まれた相手を良く赦そうと思ったな」

「正しく言うならば赦してはいない。じゃが、人族が一辺倒でない事も儂は知っておる。それでも王族は駄目じゃ。あれは世代を全て見て来たが許容する事は出来ない」

「じゃあ、魔人族の存在は王族は知らないのか?」

「そうとも言えん。儂ら魔人族から教えた事は無い。じゃが、一部の王族は儂らの存在を知ってる者がおる」


 人の口に戸は立てられぬ。なんて言葉がある様に存在を完璧に隠す事は困難という事か。


「つまり俺らは認められたって事で良いのか?」

「娘の友人を無碍にする訳が無かろう。それにお主らには頼みごとがあるのでな」

「頼み事?」

「そうじゃな。これはお主にも関係ある事じゃ。エナベルを解呪して貰いたい」


 解呪とは文字通り、呪いを解く事だ。エナに掛かっているのは封魔の呪いだと言う。魔力が扱えなくなる単純な呪い。だが、この呪いを解呪する為には解呪師でなければならない。勿論、俺にはそんな才能や天啓は無い。つまりはその解呪師を探して欲しいという事だ。それが俺の為にもなるらしい。自分自身呪われている感覚は無いが魔王が言うなら嘘と割り切る事も不安感が幾ばくか残る。呪われていようがいなかろうが解呪を試みるのは悪い事では無いだろう。


「でもその解呪師がどこに居るかは分からないと」

「そう、お父様は言ってたのじゃ」

「どうやって探そうか」

「魔王さまが言ってたじゃない。アルザース王城の奥の山脈のどこかに居るって」

「範囲が広すぎる」


 王城の奥に広がる山脈とは旧魔族領と王国領を隔てる山脈である。人魔西南戦争の際もその山脈から侵攻する事が出来なかった程、険しく広大な山脈だ。そこに存在するとされている村に解呪師は居るとの情報だった。


「ケイアの回復魔法じゃ無理なんだよな」

「私の魔法は呪いには効かないわ」


 ケイアの魔法が効くならば話は早かったんだが回復魔法もそこまで便利なものでは無いらしい。こうなれば時間をかけて探す他手段は無いのか。


「ケイアさんは大丈夫なのかい?」

「私?」

「そうだよ。リンガラに帰る予定じゃ無かった?」

「ああ、そう言えばその問題もあったか」


 当初の予定ではケイアをリンガラから近い転移術式の魔法陣に魔王城から繋げ帰還させるはずだったのだが。


「思わぬ形で勢力図が分かったわね」


 そう、ケイスは自分の信用なる人が管理する場所以外に魔法陣を刻む事は無かった。つまり、王族の息が完全に掛かった領地には魔法陣は存在しない。リンガラも例外に漏れず王族の息が掛かっている様で魔法陣は存在しなかった。リンガラで無くても近くの領地はと提案するも一番近くて王都だと言う。王都からリンガラを女の子ひとりで進ませるのはどうも気が引けた。


「ケイアも付いて来るか?解呪師が見つかったらリンガラまで送り届けるくらいは出来るけど」

「そうね。街の皆には手紙を送っておけば心配は掛けないだろうし私も付いて行くわ」


 そんな感じでケイアが旅の一行に加わった。目指すは解呪師が暮らすとされる王城奥の村。呪いを解く為にシーフの新たな旅が始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ