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第二戦

「ふぅ、勝てて良かったよ」

「良くねーよ馬鹿。魔力循環を忘れる奴が居るかって」

「そんな事言われても僕からしたらまだまだ違和感のあるものなんだよ?シーフ君は結構すぐ馴染んでたみたいだけど。普段から使って身体が急に軽くなるんだから」

「そう言われればそうかも知れねぇけどいつもやってんだろ」

「まぁ、良かったじゃないか結果勝てたんだし。ヘルメス君お疲れ様。次もよろしく頼むよ」

「これが後四回もあるなんて僕死んじゃうよ……」

「そん時はそん時だって。頑張れよ!」


 シーフはヘルメスの背中を大きく叩き戦場へと送り出す。そんなぁと情けない声を上げながらもヘルメスは再び仕切りの中へと進んで行った。

 どうやら敵さんは負けると思っていなかったらしく周囲の観客化していた帝国兵らは意気消沈している。このまま勝てればそのまま帝国軍に勝てるのでは無いかと思わせる様な気の沈み様だ。


「てゆーか、最初団長さんは奇襲仕掛けてあの五人を倒すって話だったよな」

「ああ、そうだね」

「その後はどうするつもりだったんだ?指揮系統を上手く潰せたとしても二十五万の兵隊は残ってたんだぜ?指揮が無い軍隊とはいえ数に勝てる程の実力は無いとは思うけどな」

「それはこの先の事を考えてるのかな?そうだな、決まってはいなかった……訳では無いが、簡単に言うとルネートル城塞に駐留している兵とこちらの五万の兵で挟み撃ちする予定だった。いや今万全に動けるのは二万だったね」

「連携は取れてるのか?」

「手段は秘密だよ」

「そりゃいい事聞いたぜ。こっから先の話は考えてなかったからな」


 シーフが考えていた作戦はあくまでもフォータの作戦を無理やりにでも遂行するもの。奇襲が出来ないから正面から、そこまでだった。その為、そこから先の作戦を考える事は無く恐らく用意されているだろうフォータの策頼りだった。


「気づいていたのかい?」

「いや、全く。何か用意してるとは思ってたけどな。それが何かは知らなかった。それでルネートル城塞の兵と挟み撃ちする策での勝率はどんくらいなんだ?」

「……一割以下がいい所だろうね。ルネートル城塞に駐留している兵の総数は十万、それでも帝国側からの攻撃に対しての警戒もしなければならない。挟み撃ちする為に使える兵は五万」

「五万と二万で二十五万を挟み込むのか。無謀だな」

「ああ、だから一割以下って話だ」

「でも普通に考えたら勝率なんて無いだろ。何が一割にさせる?」

「それは君たちだよ」

「俺らの力を期待してるならそれは止めた方がいいぜ」

「……いや信じるよ、君たちがもたらす勝利を」


 さあ、自分がどこまで戦えるかを考える。客観的に見ても昔と比べ相当強くなった。だがそれでもヘルメスの力を越える事は無い。そんな程度の実力だ。この前の模擬戦闘でも最後の最後、紅喰刀の力である幻影を用いても叶う事は無かった。


「あれは危なかった。幻影の乱れに気付かなかったら負けていたのは僕だったよ」


 ああは言っていたが結果として負けたの俺だ。ヘルメスは謙遜する事もあるしまだ余裕があったと見ていい。そんなヘルメスだって先のピラミーダ平原での戦闘ではあと少しで命を落とすところだった。ヘルメスがそうなのだ。自分の力など大した戦力にならないだろう。団長さんが本当に俺らの力を期待しているなら王国軍は負ける。


「まぁ、なるようになるか」

「その通りだとも。それにルネートル城塞を取られれば王国は滅亡する。運が良くても領土の半分以上を奪われるだろう。そうなれば王国民はもう人間の生活は出来なくなる。最悪、これを王国民に流布すれば死兵になってくれるさ」

「……本気か?」

「最悪の話だよ。だけど王国民に危機感が無さすぎるのも事実だ。ここら一度現実を目に焼き付けて貰うのも悪くない」

「団長さんが王の国には行きたくねぇな」

「……それはどういう意味だい?」

「そのまんまの意味だよ」


 二人の間にただならぬ空気が流れる。シーフの言葉に他意は無い。だがフォータはその言葉を正面から受け止めるには腹の中の黒い部分が邪魔をするのだった。


「ちょっと!二人とも見てたのかい!」

「え、ああ。終わったのか」

「終わったのかじゃないよ。二人してずっと喋ってこっちの試合見て無かっただろ?全く何話してたんだい?」

「ただの世間話だよ。なぁ、フォータさん」

「……ああ、そうだね。シーフ君」

「なんだよ二人して。とにかく二連勝だ」

「お疲れさん。次も行けるか?」

「無理だと言っても勝ち抜き戦だろ?僕が負けるまで僕は休めないじゃないか。それに帝国側は僕たちを殺すつもり出来てるからね。休める時はそれは永遠の休みだよ」

「お前にしては中々鋭いな」

「なに笑ってるんだよ。僕もそろそろ死ぬよ……」

「いや、別に死ぬまで戦わせるなんて考えてねぇぜ?疲れた決闘が始まった瞬間に降参すればいい。そこら辺の取り決めはしてないからな。卑怯とは言わせねぇよ」

「流石シーフ君だね。ずる賢い作戦だ」

「いいだろ。お前だって死ななくて済むし」


 そうシーフの発言にヘルメスが文句を言おうと口を開いた時フォータがそれに制止を掛けた。


「どうやらその作戦は使わなくて良さそうだね」


 先程まで観客として野次を飛ばしていた帝国兵の顔つきが変わっていた。二連敗した事によりなりふり構わう事を辞めた様だった。


「こりゃ一番めんどくせぇ事になったな」



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