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n回目

「へぇー。中々面白い事になるんだねぇ。これは良い事を聞いた」

「……」

「僕の洗脳が有能だからってこうも木偶の坊になられちゃつまらないなぁ。まぁ、いいかぁ」

「お兄様、それと私は最後ヘルメス様に殺されかけましたわ。次は仲間にする事のは……」


 カルミネは顔を近づけグレイスの光の無い眼を覗き込み沈思黙考する。答えは直ぐに出た様で顔を離しひとり頷き納得した。


「なるほどねぇ。それは困る。お前が嘘を付けない事を考えるとそれは本当だからねぇ。でも、駄目だ。今回で分かった。どうやら使える駒になりそうだからねぇ。んーいいだろう。お前、どうやって殺された?」

「魔法ですわ」

「……魔法、だと?それは今までの情報からもあり得ない」

「剣先から魔法が私を襲いましたわ。寸前の所で回帰が始まり避ける事が出来ましたわ」

「魔剣か。いや、分かった。こっちで対応する。ああ、やっとここまで来た」

「……」


 毎回、私はここから始まる。説明を終えるとお兄様はこの部屋を出て活動を始める。予想通り今回も王城に軟禁されるようだ。一個目の難所を越えられたと言ってもいいだろう。お兄様の方針が変わらない限りは大まかな歴史に変動は起こらない。そうで無くては今回を無駄にしてしまう。それが無かっただけでも作戦が上手くいってると安堵できる。

 眼に光が戻りテラスにひとり白い息を吐く。まるで開戦の狼煙のように。




▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



「どうして第二王女グレイス様なのかい?」

「だから可愛いからだよ」


「お待ちしておりましたわ。シーフ様」

「なんで俺の名前を……」

「何回も会っておりますので」

 

「大丈夫ですわ。軟禁と言っても形だけ干渉される事はありませんわ。お兄様は自分の天啓に絶対の自信を持っていますから。最後に一つこの腕輪を」

「腕輪?随分高そうだな、これ。いいのか?」

「ええ、この為のようなものですから。これは魔力を消費する事によって簡易防御魔法を発動する物ですわ。いつかシーフ様に必要な時が来ますわ」

「俺、ほぼ魔力無いんだけど……」



△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼




「ヘルメス、やれ」


 その言葉は俺がディリティリオから天啓を強奪した合図。天啓の名は魔帝。身体の中に渦巻き今にも飛び出しそうに暴れるコレが魔力。かつてないほどの全能感に身を包み高揚感が押し寄せてくる。


「シーフ君、調子はどうだい?」

「最高さ」


 その言葉の通り身体に力が溢れ戦場を風となり駆け回る。襲い掛かる帝国兵を退け自身の力を確認する。今までの数倍、数十倍とも言える程の力を。


「五感も研ぎ澄まされる感覚だな」


 全能感の満たすままに戦闘を続ける。問題と言えば帝国兵の士気が下がらない事だがそれも関係ない程に状態は最高。負ける事などあり得ないと思わせる戦いであった。

 それでも敵には数の有利がある。それを覆せる事は出来ない。そして、それはヘルメスの戦場で猛威を振るう。刀というものは対一を目的として作られている。連続で斬れるのは三人がいい所であろう。それをヘルメスはもう優に超える数を斬っている。これはヘルメスが成せる業であり実力無しにはこうはいかなかっただろう。だが、いくら超人であれど武器無しには戦えない。


「ふう、これで──」


 敵の副将も倒し、帝国兵も近づくのを躊躇う状態になり漸く一息、とはいかなかった。後ろから歓声にも似た雄叫びが戦場に鳴り響く。後方を振り返るとヘルメスの刀は折られ膝を突き今にもその首を撥ねられる。そんな瞬間であった。

 意識よりも身体は早く動き剣を掲げる帝国兵の兵の首を撥ねる。


「ヘルメス、これ預かっててくれ。王女さんからの物だけど今は少しの魔力も無駄にできない」




△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



朦朧とする意識の中で俺の腕を掴む者が居た。


「シーフ君、ご苦労。君たちのおかげで王国軍はこのピラミーダ平原での戦闘に勝利した」


 顔を上げると帝国軍は撤退を始めていた。どうやらこの戦いは終結したらしい。終わったと分かると急に力が抜け倒れ込んでしまった。


「間に合って良かった。今はゆっくり休んでくれ」



△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼




「随分と綺麗な場所だね」

「確かにな。隠れ家的な、違うか。女神でも出て来そうな場所だな」

「……女神、かい?」

「どうした?」

「いや、何でもないさ。なんだろうね」


 不思議そうに首を傾げるヘルメスだったがそれはこっちの役目だろと笑いながら誓うの岩に腰を据える。ここは普段からフォータらの悪巧みに使われているのだろう。どこか自然の様で不自然な閉鎖感を感じる。地面を見ると火魔法で整地されたような跡も残されていた。

 ここには後二人集まる予定の為、その二人が集まるまで他愛のない話をヘルメスと二人していた。だが、それも急な来訪者によって終わる。


「誰かいるね」

「……ああ」

 

 この空間にある唯一の入り口から二人の声に呼応するよ様に返事が返って来る。


「助かったよほんと。これが王国の将クラスとはね」


 暗がりから現れた男は両手に生首をぶら下げ登場するのだった。

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