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必殺の一撃

 レストはへレアの静かに佇み真っ直ぐ顔を見つめる。それがさも当たり前かの様に、へレアも攻撃を行う事はせずその状況に疑問を持っているだが言葉を発する事は無い。


「……どういう事なんだ。今が、チャンスなんじゃないか」

「いやー、レストの天啓は安静です。相手から敵意を抱かせないのですよ。その為、この殺伐とした戦場の中殺意を抱かせない存在が混乱を引き起こしてるのでしょうね。なので今からヘルメス君にはトドメを指して貰います。僕が初めにヘルメス君から離れて攻撃をし気を逸らすのでその隙に重いの一発お願いします」


 ヘルメスとトランスはその存在を狭間に置きへレアの裏を取る位置に居た。へレアの注意は眼前のレストに向きこちらに気付いている様子は無い。


「では、行きますよ。後はよろしくお願いします」

「ああ……」


 そう言ってこちらを一瞥するとトランスはヘルメスの肩に置いていた手を放しその存在を世界へと露にした。急に現われた殺意の塊にへレアは意識を後方へと瞬時に移動させ手刀を振るう。それはトランスの身体を容易に切り裂き、吹き出す血をその身体に浴びる。


「……この程度の者が切り札だと」

「ああ、そのおかげで隙が生まれた」

「──ッ!」


 トランスが斬られた刹那、ヘルメスは剣島流奥義を使用したまま人切を一振り。無心でそこには殺意も何も無いがしかしヘルメスの生涯で最高の一撃が出た。ヘルメスが振った刀はへレアの肩口から斜めに一刀両断しその身体を二つにした。


「これは……」

「失敗だ!バニティー転移させろ!」

「ええ、分かったわ!」


 バニティーは最後の魔力を振り絞りヘルメスの立つその床の上に転移術式を出現させる。そこでバニティーは魔力切れを起こし倒れ込んだ。


「──どうして」

「消滅してねえって事は死んでねえんだよ。いいから魔力を流せ」


 ヘルメスは魔力を流す事が出来ない。だが、近くに待機していたレストによって転移術式は起動し身体は光りを帯び始める。


「私を斬れる者が居るとは。貴方はいつか見ましたね。どこか面影が」

「おい、現女神、お前。心臓を斬られてどうして生きてる」

「ええ、元女神さん。それは心臓を斬られて無いからです。心臓がある位置に親切に心臓を置く訳が無いでしょう?」

「じゃあそれを──」


 言葉を言い切る前にヘルメスは天界から姿を消した。後に残るはシートスを含め満身創痍の幹部と元女神へレアのみ。もう、この時点での勝利は消え失せた。それでも彼らの目に光は消えて居なかった。


「逃がしましたか。まぁ、いいです。あなた達を殺した後に始末しましょう。天界でなくてもあの程度なら殺せるでしょうからね」

「行かせると思うか?」

「満身創痍の貴方たちに私を止められるとでも?」


 ヘレアは虚空から黒を取り出しその剣先をシートスへと向ける。この世には存在しない物質で出来た剣。全ての光を吸収し凡そ色と呼ばれるものを発さないヘレアの切り札。これを出した以上ここから帰る事は誰も叶わない。


「ここからが僕たちの本来の仕事みたいなところあるよねぇ」

「ハハッ。言うじゃねぇか。スカル、お前が言う事が正しいなら毎回こうなんだろ?」

「いつもはおにーさんじゃ無くて僕らしいけどねぇ。だからこそアレが使える」


 コツンと床に剣を指す音が鳴り響いた。会話を遮る様にその音は皆の注意をへレアへと向けさせる。


「貴方たちからはさっきまで殺気を感じません。気味が悪い。それなのに未だ戦意喪失はしていない様に見えます」

「そりゃそうだろ。俺らの目的は時間稼ぎなんだから」

「全く、それを言っちゃ駄目じゃない」

「最後までそんなんじゃ老けちゃうよぉ?バニティーおばさん。それにバレても何でもこいつを留めれば僕たちの勝ちだからねぇ」

「……時間稼ぎ?まぁ、いいでしょう。皆殺しにすればいいだけですから」


 そう今にも戦闘に入るその直前スカルは一人先頭に立ち、指を立てて宣言する。


「僕は今から六つある中の天啓の一つである統率を使う。効果は同意した者を僕に従わせる事が出来る。それに加えて従えてる者の力を借り受ける事も可能なんだよねぇ」

「何故、今それを」

「いや、少しでも警戒して欲しくてさぁ。僕がお前の脅威になるってね」


 スカルが床を踏み込みへレアへと迫る。ここに居る皆の力をその身に宿して。その戦闘の余波は伝わる筈の無い地上に居るヘルメスにも届く。


「……くっ」


 ヘルメスは後ろを振り返る事無く目的地へと走る。事前に聞かされていた負けが確定した時に第二王女と落ち合う場所、王城の最奥へと。



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