表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/129

奇妙な語らい

「いやいやぁ。困ったもんだおにーさんは。これ以上何が気になるのかなぁ?」


長丁場になりそうだとヘルメスにつられてスカルのその場へ座り込む。


「そうだね。僕は君たちと出会った時、君たちがどうしてエナベルちゃんを追い駆けていたかを知らない。もしまだ彼女に危害を加えるつもりなら──」


「それは無いわ。あの時点で捕まえられなかった時点で作戦は破綻したわ」


バニティーの言葉に続きスカルも追随する。


「そうだねぇ。あれは困ったもんだったよ。上手くいけば魔人と大戦争だったんだけどなぁ」


とても困った様には感じない薄い笑いでそれを語る。


「でももう無理だよねぇ」


「ええ、それには同感だわ」


「さっきから魔人って何の事なんだい?魔族の事を言ってるのかい?」


旧魔族領があった事や歴史書からも遥か昔に魔族が居た事は明らかな事実である。

それと同時に滅んだ事も事実として伝承されている。

だとしたら──


「生き残りが居るのかい?」


「言い得て妙だねぇ。生き残り、そうだねぇ。だが魔族じゃないよ。魔人だ」


「それが2つ目のへレアの罪かしらね」


名称など些細な事を気にするという事はそこに何かあるのだろうとヘルメスは追及を止めない。


「魔族じゃ駄目なのかい?」


「駄目さ。おにーさんはなーんにも分かってない。種族が違うんだよ。分からないのかい?フォータは知っている筈だよ?」


どうしてここで近衛騎士団の団長の名前が出て来るんだと思考が回らなくなる。


「こんなんで混乱しないでくれるかしら。私たちの協力者を語る上でそんな体たらく許さないわよ」


冷たい言葉に文字通り冷静になりヘルメスは深呼吸を一回挟みスカルに話を続けさせる。


「そうだねえ。人族の上の存在は何か分かるかい?ここに居るおばさんがそうなんだけどさぁ」


ここまで言われればバニティーも睨み付けるだけで反応は起こさない。

だが唐突にそんな事を聞かれてもヘルメスには分からずオウム返しになってしまった。


「……分からないよ。何なんだい?」


「聖人さ。人、聖人、天使、分かるかな。この差が。因みに僕は人、万に一度もこのバニティーに勝てる要素は無いって事さ」


ならどうしていつも煽る様な事を突っ込みたくなるがそこは我慢し話を聞く。


「明確な基準は知らない。人としての何かを超越した時世界の承認なんかいらずに種族としての格が上がる。ここまで言えば分かるかな?魔族と魔人の差が」


「魔人の方が上位種族で戦争で生き延びて今もどこかで暮らしてる……とかかい?」


惜しいとスカルは指を鳴らし解説を始める。


「魔族、魔人、悪魔、つまり上位種族ってとこまで正解だねぇ。ただ元々魔族は知能が低く戦闘能力も低い。そんな中から魔人が生まれる事なんてあり得なかったんだよねぇ。じゃあどうして?そこで女神の登場さ」


「……」


「女神の介入で戦争の生き残りの魔族を全員、魔人に格上げしてアルザース王国の領土上空に魔人領を作り上げたのさ。それで歴史上からは魔族は姿を消して一部の人だけがこの情報を伝えられた。それが王族とその周辺だよ。理解したぁ?」


その説明でフォータの名が出て来た事に合点がいく。

フォータは王国にて絶大な信頼と地位を持っている。

情報が伝承されていたとしてもおかしくない。

となるとシートスが言っていた「魔人領に届くかもなって造ったんだが、んなこたぁ無かったな」の意味が分かってくる。

彼は魔族の生き残りをこの手で始末しようと考えていたのだろう。

だが届く事は無く今じゃただの拠点となってしまった。


「いや、待ってくれ。どうしてエナベルちゃんの話からそうなったんだ?僕はどうして襲ってたか──」


「急ぐなよおにーさん。話の途中だろぉ?ちゃんと説明してやるからさ」


「その魔人の王の娘なのよ。その子が」


焦らす様な語り口のスカルを煩わしく思い早く帰りたいバニティーは話の落ちを告げる。


「何すんだよー!折角僕が懇切丁寧に説明してあげてたのにさ。年食って短気になったんじゃない?」


「……どういう事だい?エナベルちゃんが魔人王の娘?そういう事か……君たちはなんて事を考えるんだい」


自分で正解を導き出したヘルメスにスカルは満足そうな声を上げ手を叩く。


「分かったかい?そういう事さ。だからアンリに殺させて大戦争って事だねぇ。流石に魔人と殺り遭えば王国に流れる血は尋常じゃ無いだろう?そしたら僕たちの目標は達成さ……いってぇ」


喋りすぎだとバニティーに魔法を当てられスカルは不満そうな声を出す。


「つまり最初に会った時にも言っていたアンリとは大伯爵アンリ=ソドム氏の事だね」


「軽蔑するかなぁ?今更だけど僕たちを殺すかい?」


挑発するスカルにヘルメスは平然とした顔で切り返す。


「結果としてエナベルちゃんは無事だからいいよ。だけど次は無いからね」


そう言って立ち上がり帰ろうと二人に告げる。

やっと帰れるのかとバニティーは溜息を洩らしスカルは小柄な身体で大きく跳ね立ち上がる。

一行の行先は反逆者の塔、以前のヘルメスなら言わなかったであろう発言を廃城に残し彼らは進む。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ