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戦場への覚悟

「フォータさんまじやべーって話だよ」


シーフは天幕の入り口に立つフォータは首を後ろに倒し眺める。


「どういう意味なのだ?」


「気にしないでください。いつものシーフ君なんで」


ヘルメスはこのままでは話が進まないと思い聞き流すように勧める。


「まぁいい。ヘルメス君シーフ君共に起きるのはそろそろかと思ってね。先ずはあれだけの激戦を良く五体満足で帰還した。大いに助かったよ。感謝する」


「ほんとそうだよな。俺も早く助けに来てくれって何度思ったことか」


「シーフ君……一応言っておくけどこの方は近衛騎士団団長だからね」


「ヘルメス君気にするな。シーフ君はいつもこんなものだろう」


良く分かってるねと口を挟むとヘルメスに睨まれる。


「だが救出が遅れたのも事実だな。白煙弾が上がった時にはディリティリオの首は取っていたのだろ。シーフ君が確実に5日目までには首を取るとは言っていたけどあれ程早いとはね。どんな手段を使ったんだい?敵将の元まで侵入する作戦は私でも聞いていた。でもディリティリオをあれ程までに早く殺せたのは不思議でね」


それもそうだろう。

フォータは自分自身でさえディリティリオと一対一で殺り遭えば小一時間は掛かり地形も大きく変えてしまうと言っていた。

ヘルメスとシーフの二人掛かりとは言えあの速度でディリティリオの首を落とした事は不可思議なのだろう。


「君達の実力を軽く見ている訳では無いよ。ヘルメス君の実力は私がこの目で知っている。シーフ君も我々が救出に来た時の様子を見れば分かる。でも私の目算では正直長期戦をして勝てるかどうかだと踏んでいたからね。そこがどんな手法を使ったのか、個人的には気になる訳だよ」


「随分な過大評価してもらってるみたいでありがたいんだけど実際は只相手の隙を付けただけだよ。ヘルメスの居合の速度があれ程じゃなきゃこの作戦は先ず成り立たない。伝令として敵将まで潜り込めたのも運だしな。出来る事なら二度とやりたくは無いね」


シーフの答えに納得はしていない様な顔するもののそうかとフォータは引き下がる。


「そう言えば用があったのでは?」


「ああ、そうだ。忘れていたよ。最終確認をしたくてね」


「「最終確認?」」


二人の声が揃う。


「いやなに、君達はこの戦場で十分すぎる程の活躍をし十分すぎる怪我も負っただろう。ここで帰還する負傷兵たちと共に帰る事も出来るが付いて来るのかという確認だ。今帰っても報酬や称号などは多く貰えるだろう。だから──」


「行きますよ。俺がここまで来たのは友人を救う為なんで。ここはまだ目的地じゃない」


「僕もまだ戦えるので。シーフ君も心配だしね」


子ども扱いするなとシーフの蹴りが飛ぶ。


「そんな元気があるなら大丈夫そうだな。出発は3日後。ノウスの連中も一部付いて来ることになる。今回は約2万の大所帯だ。それでもルネートル城塞の帝国軍には到底及ばないだろう。ゆっくり休んで貰いたいものだが気持ちも引き締めて貰いたい。よろしく頼む」


最後団長らしい言葉を掛けてフォータは天幕を後にした。


「ルネートル城塞の攻略、いや違うか。ルネートル城塞に群がってる帝国軍の攻略ってどうやるんだろうな」


「さぁね。僕には見当もつかないよ。ルネートル城塞には10万の兵しか居ないんだ。どうしてその数でここまで耐えているのか不思議なぐらいさ」


「まぁあれだろ城攻めには3倍の人員が必要とか言うからな。ルネートル城塞を落としたいなら30万は必要、それは机上の話で実際は10倍は必要とか言われてるしな」


「そうなのかい?やっぱり博識だねシーフ君は」


「そんなんじゃねーよ。でもいくら落とされないって言っても兵糧攻めってのもあるように食料の補給が無いといい加減持たないだろ。だからアルザース領地側だけでも取り返さないと全員死ぬ」


一度アルザース側さえ取り返す事が出来れば兵力も食料も補給する事が出来る。

そして帝国側に城から攻撃をすればいくら何でも撤退していくだろう。

そこまで行けばアルザース王国の勝利と言える。

だがそこから問題があり──


「その後だよな」


シーフの呟きに折れた刀を眺めていたヘルメスが反応する。


「いや、今回の戦争ってこっちが仕掛けたんだろ?今回の懲りてくれればいいんだけど又王様が戦争しようなんて言い出したら今回の苦労が無駄になるぜ。俺はこれが終わったら戦争なんて御免だ」


敵国とは言えこちらが仕掛けた戦争。

そこで殺す事はただの殺人と言う意識がシーフから抜ける事は無かった。

それが正しいのか前世の基準を意識しすぎているのか、どうしたらいいか分からないシーフは未だに自分の意志は持たずヘルメスの手伝いという事で自分を納得させている。

ここに来た理由が自分の友人を救う為だと言えど。


「これは言っていいのか分からないけどフォータさんいるだろ。あの人はこのままネロ王が君臨し続けるのは良くないと思っている人なんだ」


「反逆者って事か?」


「まぁそういう事になるかな。でも何も暴力で解決しようとはしてないんだ。各領主たちを集めて話し合いをするって言ってる。まだ上手くいってはいないしこの件は内密なんだけどまた戦争が起こる様な事はフォータさんが許さないさ。そこは安心してくれていいよ」


恐らくヘルメスがウェスト領まで行ったのもそう言う兼ね合いがあったのだろう。

今更ながらあの旅の本当の目的に気づく。


「それ俺に言ってよかったのか?機密情報漏洩とかで殺されたくないんだけど」


「大丈夫だよ。それにフォータさんも時機にシーフ君にも伝えると思うよ」


ヘルメスはシーフの心配などどこ吹く風で笑いながら話す。

嫌な情報を知ってしまったと軽く後悔しながらまだ癒えぬ身体の疲れには抗えず気づけばシーフは寝てしまっていた。

その様子を見ていたヘルメスも何だか眠くなりまだ夜にしては早いものの床に就くのだった。

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