閑話休題
ウェスト領ウェストライト邸にて居候をしていた時の話。
「ひーまなのじゃー」
キングサイズの大きなベットの上でゴロゴロと回りながらエナベルは退屈を漏らす。
ライト要塞もといライト邸に居候の身であるシーフとエナベルはライトの仕事を手伝い町に出るヘルメスとは双極に毎日怠惰を貪っていた。
その為、食っちゃ寝食っちゃ寝の生活も次第に退屈となり仕事はしたくないものの娯楽を求めていたのだ。
「あートランプとかありゃ色々ゲームの種類あんだけどな」
シーフはキングサイズのベットの端に座り呟く。
暇で暇でしょうがないエナベルはそんな独り言を聞き逃さず追及する。
「とらんぷ?とは何なのじゃ?」
「いや、俺の故郷の遊び?かな。剣と魔法の世界でデジタルなゲームは無理でもアナログなもんならありそうなんだけど無いんだよな」
シーフで前世で遊んでいた数々のゲームを思い出し感傷に浸る。
「良く分からないのじゃ……それじゃあとらんぷとやらは出来ないのか」
エナベルは見るからに落ち込んだ様子でシュンとしている。
そんな姿を見てシーフのせいでは無いのだが罪悪感を感じ出来るかもと安請け合いをしてしまった。
トランプなど紙と書くものがあれば簡単に作れると思っていたが中々前世での物を再現するのは難しく、数字だけを書けば何か物足りなく感じ絵を書けば絵心の問題でしっくりこない。
結局完成系が出来たのは次の日の夜になってしまっていた。
「出来たぞ……」
「おー!これがとらんぷなのじゃな。やっとなのじゃ。疲れたの」
「……]
シーフは何もしてないだろと言い掛けたが寸前の所で踏みとどまる。
よくよく思い出してみたら書くものと紙が必要と言えばライト邸の使用人に頼みに行ってくれたし紙が薄く上手くシャッフルが出来無い事に悩んでいると使用人の中から強化魔法を使える者を探し出してきてくれた。
喉が渇いたなと感じた時はそれを察知し使用人に飲み物を用意させてくれた。
──これエナの手柄か?
いや無粋な事を考えるのはよそう。
純粋にエナベルは手伝ってくれたのだ。
そんなこんなでトランプを完成させるとヘルメスもライトの仕事の手伝いも終わったようで部屋に戻って来ていた。
「また二人は一日中部屋に居たのかい?健康に悪いよ」
「じじいかよ」
「じじいなのじゃ」
二人は口を揃えて揶揄する。
「全く二人はどうしようもないな……ん?それは」
ヘルメスは完成したばかりのトランプを見て問い掛ける。
「トランプ作ったんだ」
「とらんぷ?って何なんだい?」
「あー丁度いいしルール含めて説明するか。トランプは4種類の柄と1から13までの数字を組み合わせた52枚と1から2枚のジョーカーで遊ぶもので、まぁルールを変えれば何通りかの種類の遊び方があるって感じなんだけど。言葉じゃわかんねーよな。取り敢えず一個説明しながらやろうか」
シーフは始めに大富豪と呼ばれるゲームを二人に教えついでにトランプを強化してくれた使用人にも説明をし4人で大富豪を始めた。
「いまいち分からないのじゃ」
「そうだね。中々難しいと言うか複雑というか」
「正直ポーカーとかババ抜きとか簡単なやつもあるんだけどな。俺が一番好きなのが大富豪だったんだよ。だから是非覚えてハマってくれ」
「そこまで言うなら頑張るよ」
シーフ、エナベル、ヘルメスそれと使用人のノーアという20歳の女性と共に大富豪は始まった。
「だいやの3は私なのでこれを出せばいいんですかぁ?」
ノーアは正面に居るシーフに問う。
シーフはそうだと肯定しゲームを進める。
「次は儂じゃな。じゃー4なのじゃ」
「おー数縛りか。嫌なとこ付いて来るな」
そう言ってシーフは♦の5を出す。
「これは僕が飛ばされたのかい?」
「そうだな」
「では私ですねぇ。んーここはぱすで」
「儂もぱすじゃ」
順番がシーフまで戻って来た事により場が流れる。
シーフは7を出しヘルメスに11を渡す。
「えーいいのかい?シーフ君は優しいな」
「そうでもないんだけどな」
「じゃあ8切り?で僕のたーんにしようかな」
「あ、4止め」
シーフが4止めをしヘルメスのターンを自分のものにする。
「酷いよシーフ君……」
「うるさいのじゃ」
「そうだぞー」
ノーアは三人のやり取りを見て笑みを溢す。
「12ボンバー12リターン。えーっとエース」
「えーすは1だったね?って2枚持ってたのに……」
「私も持ってましたぁ。残念」
ターンを順番が変わりエナベルのターンになる。
「儂はぱすなのじゃ」
「では13スキップでシーフさん」
「えぇ⁉またかい」
「すみません……」
「大きな声出すからノーアさんがビビってんだろ?」
「そうなのじゃ。うるさいのじゃ」
「理不尽だろ……」
「あー勝たせてもらうわ」
そう言ってシーフは3二枚とジョーカーを出し場を強制的に流す。
そして9を二枚だし場を流し13二枚で上がった。
「13スキップ二回。上がり!」
「うわ、シーフ君強いね」
「考案者が弱くちゃ話になんないだろ?」
「それですきっぷだからエナベルちゃんだね」
「ふむ、2が2枚じゃ」
エースは既に無い為ダウンナンバーも無い為エナベルのターンになる。
「5すきっぷでのーあなのじゃ」
「ええ僕のたーんはまだかい⁉」
「7渡ししますぅ。どうぞぉ」
ノーアはエナベルに4を渡す。
「12ぼんばーで4なのじゃ」
「じゃあ僕の番か。やっとだよ……」
「いえ、12りばーすで私ですねぇ」
「ええ」
「13すきっぷでエナベルさんですねぇ」
エナベルは持っていた2を出し他の人が出せない事を確認し勝ち誇る。
「なら儂の勝ちじゃな!6二枚。8二枚。10捨てで7捨てて上りじゃ!」
「エナベルちゃん禁止上りだね」
「そうですねぇ。て事は私の番ですぅ」
「何でなのじゃ⁉」
「シーフ君が言ってたじゃないか。効果で上がると負けだって」
「理不尽なのじゃ……」
「それを言ったら僕だってまだ出せてないんだからね?」
ノーアは残された10二枚に11二枚を被せ自分のターンにする。
「8切りしてろくろ首、残りを出して私も上がりですぅ」
「えぇ⁉僕何も出せなかったんだけど!」
「お前はトランプ下手だなぁ」
「下手も何も僕は何も出せなかったんだけど……」
ヘルメスは手札に残る11枚のカードを眺め落胆する。
そんな様子のヘルメスをエナベルは小気味よく思い暫くからかっていた。
一戦通しで大富豪を行ったのもあり二戦目からは滞りなく勝負が進んだ。
結果としてはシーフが一位ノーアが二位エナベルが三位ヘルメスが最下位というヘルメスのギャンブル力が露呈するものとなった。
ここからトランプはライト邸内で流行りだす事となりノーアを中心にトランプの大量生産が行われた。
次第にウェストにも流通していきトランプが賭博として下町で流行ってしまうのはまた別の話。
ルールとか書いてたんですけどデータ飛んだので適当に読んでください……
ルールだけでもかなりの文字数だったのに(´;ω;`)




