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天幕にて

目を覚ますと見慣れた天幕の天井が見えた。

天幕内には灯りの魔道具が光り輝く事から今はもう日が沈んでいるのだろう。

気怠い自らの身体を持ち上げ簡易ベットの上に起き上がり周りを見渡すとヘルメスが椅子に座っていた。


「シーフ君!起きたのかい?」


「あーまだ眠いけどな。どんぐらい寝てたんだ俺」


「4日だよ。しかも夜さ」


あの激戦の後だ、相当身体に負荷が掛かっていたのだろう。

まだ完全回復とはいかない身体を簡易ベットに投げ出す。


「状況は?取り敢えずは勝利で良いんだよな」


「そうみたいだね。僕も昨日起きたばっかりだからそこまで詳しくは知らないんだけど──」


ヘルメスは起き抜けのシーフに今回の顛末を説明した。

帝国軍は将、副将共に戦死、指揮系統は主にその二人が担っていた為統率が取れず敗走。

当初15万居た帝国兵も10万にも数を減らしルネートル城塞の帝国軍と合流を図る模様。

今回の二人の戦果は相当なもので国から称号が与えられるとも。


「僕達が戦った帝国軍後方の帝国兵死者数は3千近くにも及ぶらしいよ。よくあそこから生きて帰れたものだよ。そうなんだ、僕はあそこで死んだ筈だった。刀は折れ体力も尽き殺されかけていたんだ。それでもシーフ君が助けてくれた。本当にありがとう」


そう感謝の言葉を告げられシーフはどう応えればよいのか分からず声を詰まらせる。

シーフはヘルメスに自らの天啓の事をまだ話せてはいない。

天啓:強奪。

自らが持つべきだった天啓を強制的に回収できる能力。

限られた条件でしか使えない天啓。

だがこれはヘルメスの持つ幸運の天啓に対しても使える。

ディリティリオの天啓:魔帝を奪った様に。

旅の途中でも中々言い出せず回収する気は無くなっていたもののそれでも言い出せず、今回の戦争まで来てしまった。

そして人の天啓、その人のアイデンティティとも呼べる物を強奪し自分のものにした。

ピラミーダ平原での戦闘に決着が着き次第ヘルメスには自分の天啓を告げる気ではいた。

だが今回の事の後ろめたさからその事実を告げる事は出来無かった。

無言のまま仰向けに寝そべるシーフを見てヘルメスは


「何も言わなくていいよ。いつか話してくれればいいさ。シーフ君自ら言いたくなったときにね」


そう見透かしたような言葉を掛ける。


「でもどういう原理何だい?」


見透かしたのでは無かったのか。

言えない事の本質に迫る言葉にシーフは言葉を選びながら答える。


「まぁ何てゆーか。俺の魔力が増えたって認識で良いぜ。それでエナから教えて貰った体外魔力との循環があるだろ?あれを使うと増えた魔力分の体外魔力も循環に組み込めて強くなったって感じかな」


確かにと会得がいったのかヘルメスは大きく頷く。


「それなら魔力が多い人はこの循環を覚えるだけで相当強くなれる訳だ。僕は魔法が使えないからどのくらい魔力があるか分からないけど少ないんだろうな。魔力循環を覚えてから強くなった実感はあるけどシーフ君ほどの伸びしろは無かったからね」


天啓:魔帝とは本来自身の魔力使役量を増大させるもの。

つまり体内魔力量を増やすものでは無い。

シーフは四大属性の加護を持たず魔法が使えない。

四大属性の加護を持つ者は体内魔力は持たず周囲の魔力を操る力を得る。

そして加護を持たない者は体内に魔力を持つ。

この差がある為天啓は本来の能力とは違うものとなっている。

だがそんな事はシーフは知らない。

同じくヘルメスも加護無しであり分からない。

しかしながらシーフはディリティリオから天啓を奪った時に直感的に感覚的にこの天啓は魔力を増幅させる物だと理解し戦いに挑んだ。

普段より何倍もの魔力を我が物として。

それでも──


「3千か……少ないなんて言えないけど感覚的にはもっと、な」


あれだけの戦闘を行ったのにも対し存外数が少ない事をシーフは言及する。


「いや、そうでもないさ。当たり前の事だけど普通戦争であんな特攻をする事なんて聞かない。それは個は数には勝てないからで無駄死になるからね。でも敵将、副将を倒して無限にやって来る帝国兵にも負けず援軍が来てくれるまで戦ったんだ。これは誇るべきさ。まぁフォータさんも大分無理をして切り込んできたと言ってたけどね」


「無理?」


「ああ、あそこは帝国軍の後方だろ?魔法戦段階が終わっても居ないのに白煙弾を確認して無理に突っ込んで来たらしいからね。それで帝国兵は大分数を減らしたとか」


嫌な予感を感じシーフはヘルメスに問う。


「俺らが奇襲かました時の帝国軍の総数はどんぐらいだったんだ?」


「14万少し上ぐらいじゃないかな?野営地を離れたから詳しくは分からないけど」


「俺らが3千……元は14万、最後は10万って言ったよな」


「そうなるね」


「て事はフォータさんが切り込んで来た時に4万近く倒してる事にならないか……?」


「まぁ、そうだね」


「あのおっさんただならぬ気配を感じてたけど本当にやばいな……」


あれだけ奮戦して3千、対するフォータは4万。

その差に埋まらない溝を感じ戦慄する。


「いや、フォータさん一人の戦果じゃないけどね。切り込んできたのは近衛騎士団の3百人だから。それでも相当な事をしてるんだけどね。フォータさんはこの国の一番の実力者かも知れないしね」


「まぁそうだろうな。あれより上が居るなんて考えたくもねーぜ」


そんな会話をする中天幕の入り口から声が掛かる。


「誰より上だって?」


聞き覚えのある低い声にタイミングが悪いと叫ぶシーフであった。


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