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指令室にて

「んーどうすっかな。まじで」


シーフは天幕の中で地図を見ながら唸る。

この天幕はシーフとヘルメスの為に与えられた物だ。

ノウス軍及び近衛騎士団の部隊の後方に位置しこの場所には指令室や兵士の寝床が用意されている。


「だから不安だったんだよ……」


ヘルメスはシーフの発言を聞き頭を抱える。

今日はシーフがフォータに啖呵を切ってから2日。

つまりはシーフが提示した3日目の朝だった。


「今からでも謝りに行こうよ。シーフ君の作戦が駄目だったからって怒りはしないよ。あれでも人格者だからね」


こちらが真剣に考えているのにうるさい奴だと横で肩を揺すり喚くヘルメスの鳩尾にシーフは拳を入れる。

ヘルメスはぐはっと呻き声をあげ後退する。


「痛いなぁ……そもそもどういう作戦を立てていたんだい?初日にふらっと居なくなったと思えば作戦変更だ、なんて言い出してさ。今日までずっと地図と睨めっこじゃないか」


ヘルメスの言う通り最初の作戦は崩壊した。

まぁそこまで期待して居た訳じゃ無かったのだが──


「こんな魔法が使える世界ならテレポートぐらいあると思ったんだよ。あーいや瞬間移動って言えばいいのか。まぁ無くてもそれに準ずるものはあると思ったんだけどな」


シーフはこの世界の魔法を過大評価し過ぎていたのだ。

流石に帝国兵の半分以下の人数しかいないとは言えテレポート能力者が居ると踏んでいた。


「つまり瞬間移動して敵将の虚を突いて……と言う事かい?」


「あーそれで半分かな。いやそれで済むなら良いんだけど。俺なら恐らくディリティリオの毒魔法か膨大な魔力のどっちか封じれるんだよな。奇襲されて自分の魔法が思う様に使えなくなったら流石に隙が出来るだろ?」


「封じる?シーフ君にはそんな事が出来るのかい?」


ヘルメスはそんな疑問をシーフに問い掛ける。


「今回に限り、ディリティリオに限り可能だ。でも相当近くに行かなきゃ無理だ。だから敵将まで瞬間移動したかったんだけどな。まぁ無理なもんは仕方ねえよな」


「そんな事が可能なのか。それが本当なら……フォータさんに伝えたのかい?」


「いや、あんま言いふらすもんじゃないしな。まぁお前にはいつか教えてやるよ」


ヘルメスは釈然としないと不満顔を浮かべ頭を掻く。

それでもシーフは天幕から出ようとはせず地図と睨めっこを続ける。

その様子に諦めたヘルメスは仮設ベットに座り刀の手入れを始める。


「あーシーフ君。さっきフォータさんが指令室まで来てくれって言っていたよ。3日目だからね、多分その事だと思うけど」


「やっとか」


シーフは目を輝かせヘルメスの方を向く。

刀の手入れが終わり次第直ぐに指令室に行くぞと言ってシーフは地図を畳み準備体操を始める。


「ほんとシーフ君は謎だよね」


指令室に着いたのは戦場の日が陰り兵士が帰還してくる時間だった。

一目で指令室と分かる様な巨大な天幕にパーシヴァル家の紋章の旗が立っており探すのに手間は掛からなかった。

天幕の中へ入るとフォータと副団長が居た。

シーフはこうして副団長と顔を合わせるのは初めてだなと思っていると


「私は近衛騎士団副団長のリッターです。よろしくお二人とも」


シーフは差し出された手を握り返す。

こうして見ると普通の好青年にも見える。

ヘルメスといい勝負だ。

イケメン度で比べてみるとヘルメスの方に軍配が上がってしまうが。

だがこの副団長、只の好青年では無い。

自分より強いかもな、そうヘルメスに言わせる事が出来るレベルで強い。

シーフも自らこのピラミーダ平原に向かう道中その実力の一部を垣間見た。

シーフと同じく先頭集団で駆けていたリッターは遥か前方の魔物の集団を確認するとピレット上から雷魔法を放ち一瞬にして魔物を消し炭とした。

その魔法の正確さと威力はこの国でもトップレベルだと言ったのはフォータの言葉だ。


「あれ、副団長さんは前線張ってるんじゃ無かったっけ?」


シーフは横のヘルメスに問う。


「確かにそうだね。魔法兵はまだ戦闘中な筈だ」


「今日は少し早めに戻らせて貰いました。なにせ準備が出来たのですから」


リッターはそう言ってシーフに含み笑いを送る。

シーフの方もやっぱりそうかと再び握手を求める。

何の話か一切分からぬヘルメスは


「どういう事ですか?何の準備が……」


「シーフ君が言っていたじゃないかヘルメス君。3日で敵将を殺すと私に。残念ながら準備に時間が掛かってしまった様だけどね」


「シーフ君の作戦は駄目になったんじゃ……」


「ああ、最初の考え……いや違うな。んーまぁ取り合えずそれじゃないぜヘルメス。副団長さん持って来てくれるか?」


そう言うとリッターは分かりましたと天幕から出て行く。

未だ何の事か分からないヘルメスは少し拗ねているのか顔が膨らんでいる。

数分でリッターは部下と共に天幕に戻り部下が手に持つ物をシーフ達の前へと置かせる。


「これは……?」


「ヘルメス、俺達は帝国兵になるんだ」


シーフの発言の意図が分からずヘルメスは混乱する。

そしてこれから一体何をさせられるんだと今後の展望にウンザリとするのだった。


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