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駐屯地にて

次の日シーフとヘルメスは指定された駐屯地へと向かう。

王都東門を出て直ぐ目的地はありその方向にルネートル城塞ひいては現在ノウス侯爵の私兵が対処に当たっている戦場もある。

駐屯地の奥まで進みフォータが居る建物へと着く。

中に入るとフォータ含む今回の作戦の重要人物が会議を行っていた。


「……出直しますか?」


ヘルメスが扉を開け気まずそうにそんな事を言う。

フォータは構わないと手招きしシーフとヘルメスは会議に参加する事になった。


「いやあヘルメス君には是非とも参加して貰いたくてね」


「僕達が聞いても大丈夫なんですか?」


ヘルメスは卓を囲むフォータ以外の将ぐらいの位は持ってそうな怖い顔をした大人を眺めフォータにこそっと確認を取る。

対するフォータは事もなげな様子で


「ここでは私が最高指揮官だ。他の目など気にするな。因みに端から一番隊隊長で順に七番隊隊長だ。名前はまぁいいだろう」


昨日会った時と比べ随分なんだろうさっぱり、いや端然としているなとシーフは感想を持つ。

それもそうだろう。

彼は一応近衛騎士団団長なのだから。


「という訳で今回一番危惧すべき相手は敵15万の将ディリティリオ=ベネノだろうな。こいつを仕留めれば実質ピラミーダ平原での戦いは勝利すると言っても過言では無い。ディリティリオは広範囲魔法と毒魔法を得意とする。これで──」


成程、嫌な予感がする。

いや、気のせいで済めばいいのだが。


「ピラミーダ平原での戦闘に決着が付き次第その足でルネートル城塞へと向かい加勢する。何か気になる点がある者は居るか?」


「あ、一個いいっすか」


手を挙げたシーフに七人の視線が集まる。

案外おっさんに見つめられるのも不快なもんだな。


「ピラミーダ平原ってどこにあるんだ?」


何だその質問はと痛いほど視線が強まるが分からないものは分からない。

そんな顔をしないでくれよと心の中で呟く。

そんな中フォータは嫌な顔一つせず答える。


「ピラミーダ平原はノウス領ノウス以南に広がる平原の事だよ。この場所からなら真っ直ぐ東に向かえば着く場所って言った方が分かりやすいかな?」


「ここから真っ直ぐ東……?それなら帝国はノウスを無視して来るって事か。なら──」


フォータは目を大きく開いてから普段の鋭い目に戻る。


「よくそこに気づいたね。そういう事だ。もしピラミーダ平原で私達が負ければ15万の帝国兵は王都へと直行して来るだろうね」


そう、この動きは恐らく定石では無いだろう。

シーフは兵法など知らず国攻めにどういう手段が有効など一切分からない。

だがこの進軍には違和感を感じる。

帝国の目的が侵略して来た王国への報復で領土を広げる為ならノウスをスルーするのは勿体無い。

このアルザース王国で有力な四つの領土その内の一つを手に入れれば今後王国への牽制にもなる。

つまりこの進行は──


「最速でこの国を滅ぼす事だけを考えている……」


「そういう事だよシーフ君。机上でそこまで読むとは素晴らしいね」


それは最悪のシナリオだ。

この国の王がどれだけ無能だとしても国自体が無くなる事は看過できない。

どうやらこの戦いは友人を救う為だけの戦いでは無くアルザース王国の命運も握ったものとなってしまったらしい。


「それにしてもヘルメス君は良い相方を見つけたものだね。君はヘルメス君に足りない部分を補っている」


「俺が?ヘルメスに足りない部分?」


シーフは言われた事をそのまま聞き返す。


「そうだよ。ヘルメス君は戦闘力とパーシヴァル家で教えた知識があるが思考力がいまいち足りない。シーフ君は中々鋭いみたいだしね。今後も仲良くするといい」


思考力と言われてもしっくりこないし相性も別に良いつもりは無いのだがこのおっさんは何を言っているんだと不愉快だと口をへの字の結ぶ。


「そうだ。パーシヴァル家と言えばエリッシュは今回の戦争には来てるんですか?」


そうヘルメスが言った瞬間建物の温度が下がりフォータと七人の顔が曇る。


「ああすまないね」


フォータが謝ると建物の温度も元に戻る。

……感情で温度操れるのかよ。


「息子は居ないよ。どこにいるかも分からない。ヘルメス君がパーシヴァル家を出てから1年ぐらいかな。忽然と何も言わずに居なくなった。これ以上言える情報は無いよ」


ヘルメスは確か16歳の時パーシヴァル家を出たとか言っていた。

つまりエリッシュはパーシヴァル家を2年近く出て戻って来てない計算になる。

一人で暮らしているのか、もう既に──

一人息子が家出をし長い期間帰って来てないと言うのは親として感情が出てしまうのも仕方のない事だろう。

それにヘルメスからもエリッシュの事は聞いていた。

パーシヴァル家の食客としていた期間修行相手として切磋琢磨したと。

エリッシュは王国流の使い手でヘルメスまでとは言わないものの相当の実力があり王国流剣術の一応の師となる人でもあった。

所謂親友と書いてライバルと読む様な関係だった人が行方不明となればヘルメスも心情穏やかでは無いだろう。

それでも


「そうですか。すみません余計な事を」


と話に区切りを付ける。


「出発はもうしますか?」


「そうだな。急ぐに越した事は無い。今から出よう。ヘルメス君、シーフ君二人は私と一緒に先頭に来てもらおうか」


アルザース王国の歴史上2番目に大きいものとなるこの戦争に向かう。

シーフが命を落とす事になる戦争に。


ノウス領ノウスとかウェスト領ウェストとかは埼玉県さいたま市的な感じですね。

分かりづらい気がして……補足を

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