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旅の再開

水竜狩りを行った次の日の夜シーフ達一行はリンガラへと出発する。

前回テーセラと対峙した場所も何事も無く通過する。


「そう言えばテーセラとかの話ってどうなったんだ?」


シーフは事の顛末をヘルメスに尋ねる。

ヘルメスは伝えて無かったねと詰め所での話を始める。


「あの人数だったろ?だから中には前科持ちとかも居てさ、報奨金が出たよ。それでテーセラだけど国は認知してなかった。あぁ、それでも闇ギルドの幹部だって事が判明したからこれも報酬は出たよ」


闇ギルドと呼ばれる犯罪者集団。

シーフ達はこの短期間で二回その組織と対峙している。

だが最近発足した組織では無いらしく


「昔からある組織なんだってね。ネサラって商業ギルドの一つだったらしいんだけど不正取引や違法な物の販売で稼いでたのがバレて国から解体命令が出たんだ。でもそれを拒否して商売を続けていたらしい」


「なるほどなー。それで闇ギルドか」


だがそれだけではこの二回の事件についての説明にはなっていない。

追放された商業ギルド如きに何故龍やヘルメスと渡り合える程の実力者が居るのか。


「でもおかしいとは思わないかい?解体された国の援助も無い闇ギルドが今日この時まで存続し暗躍出来ているのか」


「俺もそう思ってた。元商業ギルドにしては違和感がある」


たかが商業ギルドにあそこまでの武力は居るのか。


「それは一部の貴族の援助があるからなんだ。だから黙認するしか無い。裏で違法な取引があったとしてもね」


シーフが疑問に思っていたのは人材についてだったがそういうのも言われてみれば確かにそうだと思う。

幾ら稼ぐ事が出来ても国が力を入れればそんな組織強制的に解体できる。

解体命令まで出してもそれが実現できないのは後ろ盾、パトロンの存在が大きいのだろう。

だがそれなら今回の事件の処理に違和感がある。


「なぁ今回、いや前回も報酬が出るのは変じゃないか?国が黙認しているのに……そんな事したら貴族は黙って無いだろ」


「いや正直貴族にそこまでの権限は無い。だけど前まではその小さな権限で守れる範囲の事しかやって来なかったらしいんだ。でも最近になってからの行動はその度を越えている。そこまでやられちゃ貴族も闇ギルドを守る事は出来ないって訳だよ」


「何でそんな事を……」


「それは僕にも分からないな。でも今回みたいに闇ギルドによる被害は各地で起きているらしいね。ここまで暴れてくれると楽に検挙出来るってシーシュの衛兵さん達は喜んでいたよ」


確かにそうだろう。

これまで貴族の後ろでコソコソと違法行為を行っていた奴が堂々と犯罪を起こしてくれるんだ。

何のしがらみも無く捕まえる事が出来る。

でも何故後ろ盾を捨ててまでこんな事を──


「問題はそこじゃないのじゃ」


終始無言だった為寝てるのだと思っていたが話は聞いていたらしい。

シーフが何がと聞き返すとエナベルは


「そんな迷惑な奴らに目を付けられている事が問題なのじゃ。いくら捕まえる事が出来るようになったからって儂らが襲撃される可能性は高い事は変わらんのじゃ」


エナベルは閉じていた目を片方だけ開き現実を突きつける。


「ヘルメスはいいのじゃ。強いからの、一人だったらどんな強敵でも逃げる事は出来るじゃろ。だが儂とシーフを背負っては行けん」


「んな事言われてもな。今すぐどうこう出来る問題じゃねーだろ」


シーフは冷静な自己分析により自らの実力が低い事は分かっている。

天啓を集めれば何とか戦力になるとは思うが未だに何一つ手に入れる事は出来ていない。


あの女神もめんどくさい事をしてくれたものだ。

普通に天啓が全て自分のものだったらわざわざ村を出ずとも旅をせずとも最強だったのに


──でもこいつらとは出会えて無かったか


「何か暗い話になっちゃったね。そうだ!シーフ君の産まれた村ってリンガラから割と近いんじゃ無かったかな?少し回り道になるかもだけど寄って行くかい?」


ヘルメスはこの雰囲気を換気する為に話を変える。


「いや、俺の出身がバレたら碌な事にならないかも知れないしな。それは辞めよう」


シーフの発言でまたも暗い雰囲気が戻って来る。


「折角僕が話題転換したのに戻してどうするんだい……」


「話の選択が悪いのじゃ」


辛辣なエナベルの態度にヘルメスは御者席で肩をがっくりと落とす。

シーフは流石にヘルメスが可哀想に見え


「まぁエナもそんぐらいにしとけよ。それと俺が村に帰るのは嫁を捕まえてからって決めてるんだ。だkら今帰らないのは闇ギルドの事があっても無くても変わんねーよ」


「だったらそう言ってくれよ……」


しょんぼりするヘルメス見てシーフはたまらず笑い出す。


「シーフだってバカにしとるのじゃ……」


「だって面白いだろ?」


「むぅ。でもそれもそうじゃな」


そう言って二人はケラケラ笑い酷いよと言うヘルメスのため息が森に静かに木霊する。

リンガラまでの道は長く遠い。

それでもこいつらと一緒なら楽しめそうだなと暗闇に光る月を見ながらシーフは呟いた。


エナ「いひ、いひひ……シーフが一人でかっこつけてるのじゃ」


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