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水竜狩り

静かに揺れる船の上シーフは半信半疑になりながらもセルヴァの様子を窺う。

この位置シーシュの町からどのくらい離れただろうか。

既に町を見る事は出来ない距離まで来ている。

水竜狩りは近海でも出来る事には出来るがその方法の特殊さも相まって沖で行う事が決められている。

その方法とは単純で明快。

水竜を誘い出し攻撃し反撃してきた所を倒す。

これだけである。

だが近海で行うと暴れだした水竜が町を襲う可能性もある。

つまり町民を守る為の取り決めという訳だ。


「それ、今撒いてるのがおびき寄せる為の餌か?」


「そうですよ。解体で出た食べる事の出来ない部分を集めた物です」


撒き餌で釣られる水竜と言うのも何だが竜と名前が付くものとしてどうなんだと思うが、それであの美味しい料理が食べれるのなら幾らでも撒いてやろうという気持ちになる。

撒き餌をしてから数分海面をジッと見ていたセルヴァが動いた。

その細腕で槍をおおきく振りかぶり海中へと投げ込む。

投げられた槍には糸、と言うよりワイヤーと表現した方が良い様な丈夫な物が付いており船に繋がっている。

槍の刺さった水竜を逃がさない様にする為だろう。


セルヴァは背中に帯槍していた自分の身長程の得物に持ち替え船から身体を乗り出し戦闘態勢をとる。

すると海中から水竜が飛び出して来る。

怒り狂った水竜は無防備にもその全体を晒しセルヴァの槍によって喉を一突き絶命させられる。

既に瞳から光が失われた水竜はセルヴァの槍によって船へと乗せられる。


「こんなものですよ。今日は後二匹捕まえる予定です。次はシーフさんがやってみますか?」


水竜狩りの一部始終を見たシーフは唖然としていてセルヴァの話を聞き流しそうになっていた。


「あ、はい……いや!俺じゃ無理だぞ?」


あの細腕でどうして


「不思議そうな顔ですね」


「まぁ、俺より細いその身体でとは思うよな」


「力とはただ筋力だけでは無いという事ですよ。あの水竜の様にどれだけ上手に魔力を循環出来るか。それも重要です。どうやらシーフさんは体外魔力も循環に使う事が出来る事を知っている様なので水竜を倒す事は不可能では無いと思いますよ。それでも不安ならば(ワタクシ)の補佐をお願いします」


ヘルメスも知らなかった体外魔力の循環の事を知るセルヴァ。

水竜を一撃で仕留める武才も持つ。

何事も見た目や先入観で判断出来ないものだとシーフは反省する。


「それでその体型でもって事か。後、魔力視の天啓とかも持ってるのか」


この発言にセルヴァは驚き細い目が見開かれる。


「私天啓の事言いましたか?」


「いや、自分だろ?俺が体外魔力がーとか言ったの。そんな事分かるのは魔力が見えてる奴ぐらいだろ」


セルヴァは納得した様でまたいつもの優しい顔に戻っていた。


「確かにその通りでした。失敬しましたね。そうです私は魔力視の天啓を持っています。使う場面は余りありませんがね」


「でも今こうやって使う場面はあっただろ?」


「それもそうですね。では補佐して貰いましょうか。紐の付いた槍を水竜に投げて逃げられない様にお願いできますかな」


会話中行っていた撒き餌が終わったらしくセルヴァはシーフに補佐を頼む。

シーフは船の横側に立ち身体を乗り出し海中へと目を凝らす。

海中には大きな水竜の影が見え餌を食べに海面へと向かって来る。

シーフは十分水竜が近づくまで待ち射程圏内に入ると思い切りその槍を投げた。


槍は飛ぶ事を諦めたような水竜の小さな羽に刺さる。

その激痛から水竜は一旦船から距離を取ろうとするが槍に付いた紐がそれを許さない。

水竜は逃げる事を止め船に近づきその巨体を空中に晒す。

すかさずセルヴァが自前の槍を使い水竜の首へと一撃を入れる。

水竜は痙攣した後動かなくなりそれを槍で船体へと乗せ上げる。


「筋がいい。やはり強くなれるよシーフさん」


「そうか?あんな風に一撃で倒せるような見通しは立たねーけどな」


「練習あるのみですよ。さぁ後一匹倒して帰りましょう」


太陽が頭上で爛々と輝く中これで最後だと気合を入れシーフは槍を握るのだった。


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