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王立図書館

 翌日、待ち合わせまで時間があるとゆっくり寝ていたシーフは昼過ぎに目を覚ます。隣のベットを見るとヘルメスは相変わらず寝ており起きる前にさっさと出て行こうとパーシヴァル家の紋章だけを持って王立図書館へと向かった。

 王都はいつもと変わらず人の往来が激しく活気がある。徒歩で向かえる距離にある王立図書館はその大きさから少し歩くとその全容が見えてくる。そして入口が見えるくらいまで近づくと何やらイライラしている少年が貧乏ゆすりをして階段に座っていた。


「どうした?また門前払いでも食らったか?」

「遅い……」

「え?」

「遅いつってんだよ。僕がここで何時間待ってたと思うんだ?」


 シーフは約束の時間を決めていなかった事を思い出す。


「あーいや、そんな早く来るとは思わなかったんだよ。昨日も割と遅い時間だっただろ?」

「普通開館時間に合わせるだろ。お前は時間の管理も出来ないのか」

「そんな事言われてもなぁ。てか、そんな時間から居たのかよ。そりゃ悪かったな」


 そんな時間から動かず図書館前で待ってるとは律義な奴だと笑ってしまった。


「な、お前。とことん失礼な奴だな」

「いや、そうじゃないんだけどさ。まぁ中入ろうぜ?」

「……ああ」


 今日の王立図書館の番は昨日と違う衛兵が担当していた。同じ衛兵だった少し面倒かも知れないと危惧していたシーフだったが杞憂だったようだ。シーフは国民証の提示を求められる前に即座にパーシヴァル家の紋章をだし衛兵を黙らせる。衛兵は紋章を見ると驚き即座に下手な行動を取る。頭を下げられ中へと案内される。隣のセインもこれには驚いたようで黙り込んでいる。ここまで昨日と対応が違うとは王都圏内でパーシヴァル家の権力がどの程度あるのか分からされる。

 中へ進むとこれまた外観と違わぬ壮観で天井まで本棚が設置されており所狭しと本が収納されている。それでいて建物の大きさを利用したスペースの使い方で窮屈さを感じさせない者となっていた。国内の本が全て見つかるとはよく言ったものだとシーフは感心した。ここまで案内してきた衛兵は業務に戻ると席を外し残されたのはシーフとセインだけとなった。昼下がりの時間だが来館者は見当たらず図書館の中は静寂に包まれていた。


「見えないところに沢山居たりしてな」


 これだけ大きな図書館となればその可能性もゼロでは無いだろう。


「おい。──おい、なんで無視した。今こっち見たよな」

「冗談だって。なんだよ坊ちゃん」

「いい加減坊ちゃんと呼ぶのは止めてくれないか?僕の名前は前にも教えただろ?お前の頭じゃ覚えられなかったか?」

「ムカつくガキだな。セインだろ?覚えてるわ」

「それに僕はお前と大して年齢も変わらないからな。ガキと呼ぶのも辞めて貰おうか」

 

 面白い冗談だと笑っていたシーフだったがセインはどうやら本当の事を言っている様でシーフの笑いも徐々に小さくなっていった。


「マジ?」

「ああ、お前も十五かそこらだろ?僕は十五歳だからな」


 シーフはふと自分の年齢がすぐに思い出せない事に気付く。最近前世の記憶も回復し少しばかり認識が混ざってしまっていた様だ。十二歳の時に家を出て旅を始め、ヘルメスやエナベルとの旅の途中で十三歳になった。そして最近十四歳の誕生日を迎えて、いない。


「あれ、もしかして俺ってセインより年下か?」

「は……お前まさか年下の癖に僕の事をあんなに馬鹿にしてたのか?」

「いやいや待て待て。少なくとも今年で十四の年ではあるはず……」

「僕は十五歳だぞ?お前いくら何でもそれは酷すぎるだろ」

「そんな事言ったらセインがちいせぇのが悪いだろ。少なくとも十五には見えないぜ?」


 現時点でシーフの身長はセインの頭一個分大きい。傍から見てもセインは十二、三くらいの年齢に見られてもおかしくない身長だ。


「さぁ、そんな事より本を読もうぜ本を。ここは図書館だからな。セインもそのつもりで来たんだろ?折角俺が入れてやったんだから楽しめよ。じゃあな」

「お、おい。そんな適当にあしらえると思うなよ。僕は絶対今回の事は白黒はっきりさせるからな。逃げるんじゃないぞ」


 そうは言いつつシーフを解放する辺り育ちの良さが出ている。あの村での教育の賜物なのだろうか。

 セインと別れ単独行動を始めたシーフは取り敢えず目に付く書物を取ってはぱらぱらと眺めて行く。書物にはひとつひとつ透明な糸で棚に括り付けられており盗難防止対策がされている。立ち読みも疲れてきたシーフが近くの長机に持って行こうとした時に気づいた事だ。


「でも、これどこまでも伸びるんだよな」


 伸縮性は優れてるなんて物では無く、感覚的に無限に伸びるのではないかと思わせるような糸だった。試しに少し離れた長机まで運んでみるが切れる様子は無い。シーフは不思議な物だと頭を捻らせた。


「あ、これ巻けるんだ」


 シーフはわざわざ本を持ち運ばなくても糸だけを巻き取れる事に気付く。どこまでいけるのかとぐるぐる巻いているとシーフは肩をぽんと叩かれた。


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