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「この仕事をしていると嫌でも人を殺さなくてはならない時がある。私はいつも地獄で会おうと誓ってから殺すんだ。現実から目を背けてはいけない。我々はそう言う仕事をしているんだよ」


 フォータからいつぞやに聞いた言葉を思い出す。リッターからすれば敵を殺す事にそこまでの思いを懸けているフォータを尊敬さえすれど自分には関係のない話だと思っていた。だが、今なら分かる。フォータはこの様な状況が起きる可能性も考えて言った事だったのだろう。

 

「……必ず私も後からそちらに向かいます」


 意志の疎通は出来て居ないだろう。未だ虚ろな目をして襲い掛かって来る敵に対して呟いた。言葉にしたからには確実に息の根を止めなければ行けない。リッターは下方から振り抜いた剣をそのままの勢いで投げ捨て奥の敵に命中させる。眼前の敵の剣を身軽に躱し間を取った。残るは二人。隙を作らせたら自爆する可能性がある。呼吸も儘ならない内に突っ込み敵二人の顔を両手で掴みゼロ距離で爆発を生み出す。その衝撃にリッターは後方へと吹き飛される。両手は爆発により火傷を起こし身体はもう動きそうも無い。


「割に合いませんよ。この仕事は」


 そう言ってリッターは五体を地面に投げ出した。



△▼△▼△▼△▼△▼△▼



「これは勝ったって事で良いのかな?」

「生きてるかどうかは怪しいけどな」


 先程まで猛威を振るっていた使用人達は動力の切れた機械人形の様に動かなくなりその場で静止した。生きているかどうか確かめるすべは無く近づく事も何かあるのでは無いかと忌避された。


「どうする」

「半数を切ったら停止する設定だったのかそれとも他が原因なのか」

「まぁ、そんな事どうでもいいだろ。目の前の障害が消えたんだ。領主の部屋に急ぐぞ」


 廊下を満ち満ちにしていた使用人達は数を減らしその間を通る事が出来る。廊下の突き当りを曲がり少し歩くと領主の部屋の扉を見つけた。ノックはせず静かに中へ侵入する中庭から差し込む月明かりに照らされるは血塗れのセン大公爵だった。


「これは……」

「死んでるのぉ」

「殺されたのか。じゃあもう犯人は──」

「僕が来た時にはもう居なかったねぇ」


 耳障りの悪い高い声、白い仮面を付けた奇人。背後から聞こえた声の主はスカルだった。白い仮面から覗かせたベージュの髪を弄りつまらなそうにこちらへ語り掛けてきた。


「本当に困っちゃうよねぇ。僕たちの得物だったのにさぁ。こんな事されちゃあ黙ってられないよねぇ。それにしてもここでまた君たちと会うとは運命的だねぇ。てっきり証拠でも抹消しに来た仲間かと思ったよ」


 暗闇の中この領主が使っていただろう椅子に座りスカルは溜息を吐く。言葉通り困っている事は間違いなさそうだ。


「じゃあこれはお前がやった訳じゃないのか?」

「んー僕たちがやる予定だった事を横取りされた訳だから僕たちはやってないけどー微妙な所だねぇ。まぁ、僕はこいつを殺してないよ」

「じゃあ他に誰がこんな事を?」

「おにーさんは誰だと思う?」


 スカルは白い仮面の奥でケタケタと笑い碌に答える気が無い事が伝わって来る。


「僕が答えたら教えてくれるのかい?」

「それは分からないなぁ。だって僕でさえ正確には把握してないんだよねぇ。だからこうして僕が直々に出向いて調査してるんだよ。そこで君たちが釣れたって訳。丁度いいから聞いとくけど僕たちと仲間になる気はないかなぁ?待遇はそうだな。幹部に推薦くらいはしてやるよ」

「お断りだ。お前らがエナを殺そうとした事、忘れたとは言わせねぇぞ」

「アッハハ。そんな事些細な事じゃないかぁ。それに君たちには資格がありそうだしねぇ。あのおばさんが言うにはだけどさぁ」


 到底承諾する事の無い提案に嫌気が差すがシーフはスカルから情報を聞き出したかった。適当に話を流し会話を続ける。


「それじゃさっきの操り人形みたいなのはお前のじゃ無いんだな?」

「いや?僕だけど?どっかの誰かがさぁ大元殺したせいで機能しなくなったけどねぇ」

「ちっ」


 どうやらシーフにはスカルを殺さなくてはいけない理由が出来てしまった。もし今回の件と無関係なら昔の溜飲を下げ刺激せずに立ち去るつまりだったがもう気持ちがそれを許さない。こちらが負傷する可能性を賭けてでもスカルを倒すと心に決める。


「エナは下がってろ」


 ここでエナベルを戦闘に出したくはない。前の話で諦めたと言ってるとは言えこの場で気が変わらないとも限らない。ここはヘルメスと二人で制圧するのが手だと考えた。


「あれぇ?もしかして戦う気かい?止めてくれよ。僕は非戦闘員なんだぁ」


 この惨状を作り上げた本人が良く言う。つくづく癪に障る野郎だと表に出さぬよう内心で憤る。


「ヘルメス、あいつが使う技に気を付けろ。何が条件か分からないけど操られたらお終いだ」

「ああ」

「それが分かってるのにどうしてこうも殺気立ってるのかなぁ。僕には分からないねぇ。でも、僕だってここに無防備な状態でいる訳じゃ無いよ」


 スカルは言葉の後に指を鳴らし背後から屈強な男三人を召喚する。今まで椅子の裏に待機してたのかよと突っ込み所は満載だが状況は良くない。男の目はやはり虚ろでスカルの支配下にあるのだろう。となると先程の様に油断ならない実力を持っている筈だ。それに自分の傍に置くとなると一番と強くてもおかしくない。ここで逃げられる事は避けたいが即殺しなければ逃げられてしまうだろう。


「めんどくせぇな。お前はほんとに」

「いやぁ、僕だって役目があるから仕方ないじゃないかぁ。君たちが襲い掛かって来なければ僕だってこんな事はしたくないんだ。どうせ君たちとは仲間になるんだから」

「そんな未来はやって来ねぇよ。人殺しと仲良くできる程俺は寛容じゃねぇ」

「いやいやいや君たちだって殺すだろ?自分の害になる奴らはさぁ。それと同じ事だよ。僕たちは僕たちの邪魔になる奴らを殺す。それと何が違うのかねぇ」

「いーや、全然ちげぇよ。自分に不都合な奴を殺すのと犯罪者を正当防衛で殺すのじゃな」

「アハハ。それじゃあ弱いねぇ。まぁ、また直ぐに会うだろうからねぇ。ここらで僕はお暇させてもらうよ。じゃあねぇ」


 すると三人の内のひとりがスカルを担ぎ上げ後方の壁を壊し屋敷から逃げ出してしまう。それを追えずにいるのは残された二人の男が戦闘態勢を取ったから。最後まで不快を撒き散らして言った男に舌打ちをしシーフも短剣を腰から引き抜く。さよならが確定した延長戦が始まった。


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