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情報収集の成果

「シーフ君!情報を持って来たよ……ってまたごろごろしてるのかい。シーフ君はエナベルちゃんの修業、僕は情報収集って約束したじゃないか、もう」

「だってよー」

「だってじゃない!全くエナベルちゃんも一緒になってぐうたらしてたら駄目だろ?」

「そうは言ってものー」


 実際ここ最近エナベルの修業はしていなかった。真面目にやっていたのは最初の一ヶ月くらい。それでもシーフはよく付き合った方だと思っていたが、ここ最近ずっと情報収集していたヘルメスに取っては足りないのだろう。


「でもよーお前だってエナの実力見たらやる気なくなると思うぜ?ありゃ俺より十倍は強い」

「そんなにかい?シーフ君だって弱い訳じゃないだろ?」


 シーフだって旅をしていた時はヘルメスにしごかれ相当鍛えてきたつもりだ。魔帝の天啓を回収してからは身体に渦巻く魔力量も増え身体機能、戦闘技術共に向上していた。それにシーフには二刀の短剣、紅喰刀・冥喰刀がある。それでもシーフはエナベルの方が強いと言った。


「なんかそういう次元じゃねぇんだよな。こいつ一日あれば簡単な城壁作れるぜ?」


 これはシーフがエナベルの魔力量を確かめようと実験した時の事であった。王都から一時間程南下した所にある開けた土地にて魔力を限界まで使い土魔法で何かを創作しろと言った時の事である。エナベルは限界まで土魔法を使い簡単な攻撃では壊れない様な砦を作り上げた。開けた土地に作ってしまったものだから遠くの街道から目立ち撤去しなければいけないとなった時も壊すのには一苦労したものだ。


「そんな凄いのか……流石という事だね」

「くっくっく……儂は最強なのじゃ。もうシーフなんて小指で倒せるわい」

「……」

「シーフ君が否定をしない……でもシーフ君には悪いけど僕は安心したよ。エナベルちゃんは自衛手段が無いのが心配だったからね。シーフ君よりも強いならこれほど安心出来る事は無いよ」

「……うるせぇ」

「え?」

「うるせぇばーか。そうだよ俺が最弱だよ。ったく幼女にも勝てないなんてどんな世界だよ」


 腹いせにヘルメスのけつを蹴りあげる。恨みがましそうな目で見てくるが素知らぬ顔でスルーした。


「そうじゃなくて!情報だよ。やっとそれっぽい話が聞けたんだ」

「あーパーシヴァル家から?」


 ヘルメスにはこの二ヶ月パーシヴァル家に情報取集に向かって貰っている。ついでにフォータから仕事を任され都合よく使われていた。そんなパーシヴァル家でやっと成果が上がったらしい。


「フォータさんからだね。どうやら最近アルザース王国の各領主が殺害されてるみたいなんだ」

「殺害?そりゃやばいな」

「そうだよ。大変な事態なんだ。だからこの情報は出回っていないみたいだよ。あくまで一般には自然死扱いされてるって。そこで王城から近衛に内密に下手人を捕縛、暗殺の命令が出てるんだ。なんでも元老院は相当焦ってる様子だったとか」

「それがカルミネの策略……?」

「んーそれは分からない。でも、国の一大事には違いないだろ?可能性はある」


 カルミネが何回も未来の情報を探りしたかった事が各領主の暗殺。カルミネ程の地位があればこの程度の事簡単に出来そうなものだが怪しい動きがあるのは事実。確かめる事は悪い事では無いだろう。


「それで?団長さんに手伝ってくれとでも言われたのか?」

「──えっ。よく分かったね。その通りだよ。君たちが調べてる事に関係あるかも知れないし付いて来るかい?ってね」

「あー割と筒抜けなんだな。まぁ、仕方ねぇか。近衛騎士団長の力があれば安全に調べる事も出来そうだしな」


 その団長が安全では無いかも知れないとは言葉に出さない。これはシーフ内だけ感じている危機感だからだ。フォータに恩があるヘルメスにまで余計な知恵を入れる訳はいかない。


「そうそれでフォータさんが次に襲われそうな領主の元に向かうのが明日。僕たちもそれに付いて行こうと思うんだけどどうだい?」

「どうって言われても行くしかねぇだろ。そんな大事そうなの。でも、なんだろうな。領主を殺す意味って」

「分からない。でもフォータさんが言うには王族派の領主だって言ってたよ」

「王族派?そんな派閥みたいのあるのか?」

「表向きには無いけどね。領地が狭い領主に多いんだ。賄賂とか色々な裏取引で世渡りしているんだとか。後は自治派と貴族派だね。自治派はそのまま大侯爵領とかの大きい領の事。貴族派は大きい領地の下に付き従う派閥だね。まぁ、だから大きく言えば王族派と自治派のふたつって事だよ」

「あーなるほどな。それで王族派の領主が殺されてると……それじゃあカルミネの線は微妙か?味方を殺してるって事だもんな」


 逆に考えて自分が王座を狙う為に王族派の力を削いでるとも考えられる。それはそれで後々自分に返って来る悪手の様な気がするがどうなのだろう。


「それがどうであれ調べるべきだと僕は思うよ」

「それにゃ同感だな」

「明日は荷物もフォータさんが何とかしてくれるらしいから身一つで行けるって」

「じゃあ気を付けるのは寝坊だけだな」

「ちゃんと起きるよ……」


 案の定ヘルメスは起きて来なかった。

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