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親愛なるこの世界で  作者: 桜夏光
9/21

お悩み相談


「次に会った時はもう普通になってるわよーー」


そう軽く笑う湖春に先ほどの影はない。

斗真がここにきた本当の理由ーー湖春に春陽の様子を聞きにきたのだ。


途中脱線したが、話は再び春陽にもどる。


「なんで怒っているのか本当にわかんなくて」


謝ろうにも謝れないーーなんで怒っているのかわからないのに謝っても火に油を注ぐだけだ。


きっと自分がなんか怒らせるようなことを言ったからだ。でないと春陽があんなこと言うはずがない。


「うーーん、まず最初から話してみようか?」


湖春にいわれて斗真は女子寮で最初にあった時から話し始める。

会話の内容やふるまいを追憶しながら話していくが――湖春が気になる所はないようだ。


話は別れ際にまでいきーー


「ーーで、見送ってくれて、あ、そういえば太ももに赤い痣があったことぼく知らなくてーーつい口にしちゃったんだけどーー」


それか?


そういえばすっごい動揺していた気がする。


「痣?あの子のどこに?」


湖春が首をかしげる。


「左の太ももーー」


斗真が自分の足を上げて春陽の痣があった場所を指差しで伝える。


左太ももの上側の、外側。


「あら?そんなところにあったかしらーー?」


母親の湖春にさんが知らないとなるとつい最近できた痣なのだろうか?そういえば赤かったしーー。

でも花の形をしていて綺麗だったけどなーー。


斗真が思い出していると。


ーーーこのこと誰にもいっちゃだめ!!


春陽に言われていたことを思い出した。


「あ!ーーーさっきのこと忘れてもらえます?」


「痣のこと?」


いや、母親であるおばさんならセーフか?

仕方なく湖春に口止めされていたことを伝えると、湖春は一考して口を開いた。


「なんか体育で派手に転んで、忘れたいほど恥ずかしかったのに斗真くんが指摘したからーーとか?」


そこかー!


斗真は納得した様子で黙り込んだ


そんな斗真をみて、湖春は立ち上がる。


「とにかく大丈夫よーーあの子意地っ張りだけど、いつまでも引きずる子じゃないし次会いに行けばお互いケロッとしてるわよーー」


そう言われて斗真は過去に何回か、春陽と喧嘩した時のことを思い出す。


いつも謝るのは自分からだったーー悪いのも自分だったがーーいつも許してくれて、それからは普通に遊んだ。


きっと今回もそうだ。


斗真はやっと胸のつっかえが取れた気がして楽になった。

「まあ、二度と来るなと言われたから、会いに行きづらいっていうのなら、おばさんがお手紙でも預かってあげるわよー」


湖春は笑いながら一つの策を提案する。

仲直りの一つの手法ーーお手紙!


女子か!!


という、ツッコミが心の中で響いた。


「いえーー直接会いにいきます」


斗真の言葉に「あらそーお?」と、湖春はガスコンロに火をつけながら返答する。


よくよく、時計をみればもうすぐ夜の七時ーー湖春が帰ってきたのが遅かったとはいえ長居しすぎたなーと斗真はきづく。


「おばさんーーぼく、かえりますね」


「あら、ご飯食べていかない?お腹すいたでしょう?」


そそくさと立ち上がる斗真を制止する。

湖春は鍋の中をかき混ぜながら話し続ける。


「はるちゃんいない間に家事を完璧にこなせる女になってみせるーー!とおもってね、まずは自炊から!と、張り切って、朝作ってみたのよーーカレーライス!」


その前に片付けでは?斗真は横目で物が散乱している部屋を見る。


湖春の手料理ーーか……


斗真は湖春に、夕食を誘われたのは初めてだった。


春陽は基本、近所の春陽の祖母の家で過ごすことが多く、いつも遊んでいた関係で斗真と妹も何度が夕食をご馳走になったことがある。

春陽の祖母の手料理はとても美味しかった。


母親のいない斗真の普段の食生活は、仕事の合間に父親が作ってくれる大皿料理や惣菜が主で、春陽の祖母の料理は栄養を考えられたバランスのいいメニュー。

斗真はどちらも好きだが、母親がいたらこんな感じなのかな?といつも感じてはいた。


斗真も料理はできなくはないが、大人がいない時は火を使うことを禁止されているのでたいしたものは作れない。


おばさんの手料理かーー春陽のおばあちゃんのご飯は美味しいけど……


正直、美味しいご飯をつくれるイメージがない。


「どうぞ!斗真くん!」


語尾にハートがついてそうなテンションだ。

目の前にだされたカレーライスは普通にカレーだが……。


警戒心を隠しながら礼をいってスプーンを手に取る。


湖春はニコニコしながら、斗真がカレーライスを口に運ぶのをみつめている。


カレールウは市販のやつのはず!市販のやつを使っていれば誰だって美味しく作れるはずだ!

それが市販のいいところ!!


斗真はそう自分に言い聞かせると覚悟をきめた。


ぱくっ!


ほんのりとした甘味の中にカレーのスパイシーな香りとお米の香ばしさがベストマッチーー


じゃない!!


黄金のルウと米の最強タッグを殺す勢いでーー魚の味が!!


「バランス良くたべないとーって思って、昨日お肉だったから今日は魚にしてみたの!どう?」


生臭さと謎の風味がカレーのいいところを全て殺しています。


「骨を抜くの大変だからサンマ缶にしてみたんだけどーー」


謎の風味はそれかーー!!


斗真の沈黙をどう受け取っているのか、湖春はニコニコしながら語り出す。


「醤油で味ついてるけど、ほら、肉じゃがにカレー入れると美味しいっていうじゃない?だから大丈夫かなーと思っていれてみたのーー」


おばさんの周りに花畑が見えるーー!


いや花畑なのは頭の中なのかもしれない。そんな失礼なことを思わせるほど壊滅的な味だった。


「おばさん!」


斗真は正直に言おうと心に決めて湖春に視線をむける。


そこには、丁度カレーライスを口にした湖春の姿があった。



「………」

「………」


長い沈黙が、しばらく続いた。


「斗真くん!」


先に口を開いたのは湖春だった。


「ご飯お外に食べにいきましょう!おばさん奢っちゃうから!」


その言葉に斗真は、とりあえず味覚はまともだったんだな。と感想を心の中で呟いた。



くだらなくてすいません。

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