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さて、まずは衛生的な生活について確認しましょう。

 マーヤは、ユリアとエディスにこの部屋の掃除を命じた。

 しかし、雑巾の場所も知らず、バケツも知らない彼女達から目を離せないと、手を差し出すと二つのバケツと雑巾を差し出す。

 バケツの一つには、水が入っている。


 二人は、初めて見る『創造』の能力に蒼白になる。


「マザー・ライム。お願いします。この二人の掃除を見て下さい。ダメなら……」


 窓の外に手を突き出す。

 すると、急に雲が集まり、バリバリと音がする。

 落雷ではないが、遠雷の音である。


「かしこまりました。二人共、マーヤ様の命令ですよ」


 その後、マザー・モーリーとサラとドロスに、ユリアとエディスの部屋の掃除を頼む。

 そして、ケインには自分達の警護として残って貰う。

 アネッサとミームについてきて貰い、別室……寝室で着替えをする。

 寝室の奥には、ドレスが山のように吊るされていた。

 それを何度か往復し、確認すると、神官にしては派手な衣装か、何故か太って見えるストライプや白色、それだけなら許せるが、ほとんどが胸を強調したものが多い。


「……うーん……駄目ね」

「余り言いたくないですが、似合うものは少ないですね……」

「マーヤには似合わない」


 ため息をつくと、マーヤは二枚のドレスを取り出し、そして、


「私としては、白ならこの無駄なフリルやレースを裾や襟、袖口から外して、少し恥ずかしいけど、ジュリエットドレス風にするとか……こちらのストライプだけのドレスに、ちょっとレースをつけるだけでも可愛いのに……」


と、呟き、その言葉通り作りかえられていく。

 そして余ったレースを使って、髪飾りを作り、


「こんなものかしら……私は、前はボーイッシュだったから、こういう格好はしなかったのだけど……。アネッサの方が似合うかも」

「それはないわ。この白いドレス着てみて頂戴」

「これはね、一応、リボンで胸の下を絞るの。脚を長く見せるの」


ばっと被り、見せる。


「あら……同じドレスには見えないわ……ゴテゴテしていたドレスが清楚に見える」

「品があります。ですが、マーヤ様」


 マザー・ミームが、杖をついて近づきマーヤを見上げる。


「この杖を頂いた私が言うものではないと思いますが、マーヤ様。余り人前でそのお力をお使いになられませんように……」

「マザー・ミーム?」

「そのお力は神より賜ったものでございます。その大切なお力を、簡単に見せるのはいけません。アネッサ枢機卿は帝国から離れておりますが、シスター・ユリアとシスター・エディスは、行儀見習いで来ているだけで信仰はありません。その二人から、親……権力者にそのお力が伝わっては……」


 心配そうなミームにマーヤは微笑む。


「大丈夫よ。マザー・ミーム。ありがとう。でも私は、出来る事を最大限に頑張りたいの」

「ですが、マーヤ様。服の手直しなどは若い女官の仕事です。その指示は構いませんが、仕事を奪わないであげてくださいませ」

「あっ……そうなのね。ごめんなさい。神殿の仕事を知らなかったから……」

「良いのです。私達や枢機卿が、マーヤ様をお支えいたします。ですので、マーヤ様……お疲れではありませんか?」

「大丈夫よ。ありがとう。あ、そうだったわ。あのね……先、お風呂に入ったのだけど、床がヌメヌメしていて、匂いがしたの。水はどこに流れているのかしら?」


 その言葉に、ミームはきょとんとする。


「水は、隙間というか穴から流れて……申し訳ございません。それは不勉強でしたわ」

「そうなの……それとトイレとかは……?……それも、別の人の仕事ね」

「そうでございますね。シスター・サラや、ブラザー達に聞いてみましょう」

「よろしくお願いします。じゃぁ、マザー・ミーム。無理はしないでね?」

「この服を仕立て直しをお願いしましょう。どんな形がよろしいですか?」


 マーヤは、品のある裾の長いドレスで、襟を立てているものや、もしくは、肩は出ているが、可愛らしいデザインのものをササっと書いて見せる。


「こんなものはどうかしら?」

「分かりましたわ。では、失礼いたします」


 ミームは下がる。

 そして、アネッサは、確認して下がろうとすると、マーヤはドレスのデッサンを手渡す。


「待って、アネッサ。これ、こんなドレス、アネッサに似合いそうだと思って」

「……可愛い」

「アネッサに似合うと思うわ。アネッサは綺麗な髪だから……」

「漆黒の髪は魔性の色よ」

「私がここに来る前は黒髪で黒い目だったのよ。黒髪は緑なす黒髪と呼ばれて、昔は、6、7メートルも伸ばして、美しさを競ったのよ」


 絵を描くとそれが立体的になる。

 一人の女性が、長い髪をして幾重にも重ねた衣の色が美しく感動する。


「あのね、この胸元の衣の色は、かさねと呼ばれて、私のここに戻るまでに暮らしていた世界の昔のお姫様の衣装なの。当時は色の濃さや重ねる順番などで、季節や花の名前などの名前が付けられているのよ。とても重いけれど、この美しさは世界的にも知られていて、グラデーションが美しいでしょう?こんな薄手の布で、アネッサにドレスを作ってみたいわ」

「まぁ……何を言って……」

「ありがとう、アネッサ。これからもよろしくね」


 マーヤは微笑んだのだった。

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