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6.飛んで火にいる夏の虫


ずっとお待ちしております。

貴女が御力を失ってしまっても、貴女が愛する方から離れる事に悲観されていても、私はずっとずっとおそばにおります。

貴女がまた貴女そのままに、私の側に来てくださると信じております。私は、貴女の星。貴女が居るから私は輝けるのです。

貴女の記憶がなくてもきっと私が導きます。

遠い遠い永遠の記憶。だれが忘れても貴女が忘れても私だけは忘れませんから。

だから、安心して目覚めてください。私と貴女は同じ(モノ)から生まれた魂の繋がりがあるから。

大丈夫ですよ、現在(いま)も昔も変わらず此処には貴女を愛する者たちしかおりませんから。


誰よりも慈悲深く、誰よりも愛に溢れている貴女様。ずっとずっと待っております。

きっと、貴女はずっと待っていたことに気が付いた時涙してくれるでしょうから…


だから…私は貴女に逢いたいのです…_________________________________________________






荘厳な空気が漂う中、何の躊躇もなく神殿の扉に手をかけあっさりと扉を開けるカルロス。それを、真顔で眺めるルークとニコニコ顔のソフィ。

見た目からは想像も出来ないぐらいあっさりと開いた扉の中を、待ちきれないとばかりに飛び込むソフィは、そのまま中を小走りで周り始めた。


「ねぇルーク凄い!ここも私みたいに真っ白!」


驚いた表情で、けれど嬉しそうにはしゃぎながら神殿の内部の様子を話すソフィに、後から入ってきてうんうんと頷くカルロス。


「神殿とは、基本白いからな」

「カルロス、元も子もない事言うなよ…。」


カルロスの、なんとも情緒ない返答に呆れるルークを横目に、わくわくウキウキしながら神殿の中をあっちこっち見て回るソフィ。そんなソフィの周りにキラキラと光る何かがまとわりついていた。


「なぁカルロス、ソフィの周りに何かまとわりついてないか?」

「あ~、ルーク様の側にいる私みたいなものでしょう。つかず離れず…まるで愛しい愛しいと囁いている様ではありませんか…ねぇ?ルーク様」

「カルロス、本当に気持ち悪いな」

「ご褒美です!」


そんなルークとカルロスの会話に気付かないソフィは、キラキラ光るのは神殿の特殊効果だと思っていた。

だが、想像以上にキラキラ光り輝くものが目の前を飛んでいるのは、些か目がチカチカするなぁなどソフィは的外れな事を考えながら控えめながらも豪奢な祭壇に手をついた。すると、ソフィの祭壇に触れている手が鈍く光り始めた。


「なぁルーク様、白露が光り始めてないか?」

「あぁ、あれは…なんだろうなぁ~ソフィは神の使い的な何かなんじゃないか?白いし」

「流石ルーク様です!白露は光魔法的な存在なんですね!」

「そんな事言ってないけど…まぁいいや。」


何故か鈍い光を身体から発し始めてたソフィに、ルークとカルロスの主従コンビは若干ずれた話をしていた。

実際に光っているソフィなど、興奮してうわぁぁぁおなどと言いながら祭壇に手をかざしたり離したりする始末だ。


「ねぇルーク!私蛍になったみたいよ!楽しい!!!」

「白露知らないのか?蛍が光るのはお尻だ!」

「いや、そうじゃないだろ…」


『ディーア様?ディーア様ですよね?お目覚めになられたのですね…!』


「「「ディーア?」」」


突如、ソフィの周りにまとわりついていた光るモノからソフィに問いかける様な声が響いてきた。それは、人の名の様で三人が同タイミングで繰り返していた。


『ディーア様、私をお忘れですか…?』


光るモノは、光を吸収し小さいながらも人の形を…、というよりは妖精の形を取り始めていた。金のウェーブのかかった長い髪に、虹色に輝く4対の羽、ラベンダー色の瞳、小さいながらに見目麗しい女性であると分かる姿をしていた。

だがこの妖精は神殿周りに飛び交っていた妖精とは違い、見たことのない色合いの妖精であった。

この世界での妖精は、火属性ならば、赤色。水属性ならば青色という風に、属性に寄った色合いをしているのが普通なのだが、この妖精はどの属性にも当てはまる色合いだ。


「妖精さんですか?」


ソフィは、自身が妖精らしき女性に「ディーア」と呼ばれた事には返答せず、妖精かどうかを問いかけていた。妖精は気にする様子もなく、ソフィの目の前に来るように祭壇の上にちょこんっと立つと、綺麗なお辞儀をしはじめた。


『私の事は、エステルとお呼びくださいませ。私は、妖精であり妖精では無いものです。ですが、今の姿はほぼ妖精と言っても間違いではございませんので、妖精と思って頂ければ幸いです。どうぞ、宜しくお願いいたしますわ。』

「エステル、私はディーア様じゃないけど、よろしくね」


ソフィも妖精にならい、綺麗なお辞儀をして挨拶をした。その様子をルークは眺めていた。妖精のエステルが言うディーアとソフィが間違える程似ているとしたら、白露の花の中にディーアと言う名前の人間が居るのかもしれないと考えていた。ディーアと呼ばれたソフィが、聞いたことも無い名前だという顔をしている以上、ソフィはディーアではないのだろう。だとしたら、白露の花の中に居ると想定した方が分かりやすい。白露の花の人間はみなソフィの様な色合いで美しい顔をしていると言う話だがらだ。


「なぁカルロス?白露の花について知っている事を教えてくれないか?」


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