3.2歩進んで3歩下がる
すみません、私生活がバタバタしており更新が遅れました。
「ってか、それ白露の花だろ!!!!」
突然響く怒号に、小鳥や小動物が逃げ出す音が聞こえる。
それでも、ルークは平然と声の主に向きを変え声をかけた。
「カルロス居るならもっと早くに声をかけろ。ソフィもびっくりするだろ?」
「いやいやいやいや、ただルーク様がこの国から出るだけなら、観察を続けるつもりだったが、白露の花と共に行動するのは捨て置けない!そんな事をするなら、俺はルーク様を引き摺ってでも王城に戻さなきゃならない!」
カルロスと呼ばれた全身黒装束の長身の男は、ルークを王城に戻すとわめいている。
だが同時に、白露の花と呼んだソフィからも視線を外さず、器用にルークを揺さぶっていた。
「ちょっ…カル…酔う…」
「ちょっ!これっくらいで酔うんじゃねぇよ!だから、こんなクソ退屈な国を抜け出すのに半年以上かかってんだよ!男は根性だろ!!!」
「無茶言うな…」
ルークはひたすら揺さぶられ気持ちが悪くなったのか顔面を青白くさせながらカルロスを力なく睨んだ。
「そもそも、なんでこんな森の中に白露の花がいるんだよ!お前等は本当に存在してるかわからない人殺し集団だろうが!!!」
「捨てられたから仕方ないよね?そもそも、その白露の花ってなに?私初めて聞いた」
白露の花と呼ばれた張本人は、何を言われてるのか本気で分からないといった顔をしてカルロスを見返す。
ちなみにルークはカルロスの足元で嘔吐感と戦っていた。
「世にも珍しい乳白色の髪と色彩豊かな瞳を持つ美姫の殺人集団。それが白露の花って情報は裏にいれば聞えてくんだよ」
「へぇ、私たちってそう呼ばれてたんだぁ」
熱く語るカルロスとは対照的に、間の抜けた返答をするソフィ。
もちろん、足元には限界だったのか、嘔吐しているルークがいる。
「そもそも、私は人を殺すことに意味を見出せないの。で、なんで殺すの?と問いただしてたら捨てられたから…あんまり分からないのよ。その白露とやらが」
「いやいやいやいや・・・って、捨てらてた???殺さずに捨てた?意味わっかぁんねぇぇぇぇよ!!!」
「ねぇ?分かんないねぇ~」
本気で何が起こったか分からないという表情をして頭を抱えるカルロス。カルロスの真似をして頭を抱えながら、首を傾げるソフィ。
足元には青白い顔をして、口元を拭うルーク。
完全にカオスである。
「百歩譲って、既に白露の花じゃないとして、お前はルーク様を害さない保証はあるのか?」
「お前じゃないよ。ルークにソフィって名前を貰ったのよ。ソフィって呼んで!」
「いや、うん。ごめんなさい。ソフィは、ルーク様を…」
「ルークは私の友達よ!害するとか意味分からないわ!これから旅をするのに」
食い気味に否定するソフィ。カルロスは、もう何も言えない…という表情をしていた。
足元には、青白い顔でソフィとカルロスを眺めるルーク。
「そもそも、カルロスは何しに来たんだ?俺が恋しくなった?」
「んなわきゃあるか!!!!こちとら、ルーク様の護衛兼、影なんだよ!傍に居るに決まってんだろ!」
「カルロスから向けられる愛か…」
「ルーク愛されてる?ねぇ」
熱くなるカルロスとは対照的に、お花畑な脳みそのルークとソフィ。
3人は暫く…いや、日が暮れるまで中身のない言い合い?じゃれ合いをしていた。
「ねぇ、暗くなったし、寝床探さないと大変じゃないかしら?」
ソフィの、至極真っ当な訴えに2人は顔を見合わせて寝床の準備を始めた。
ソフィはそれを見ながら火の準備を始めるのだった。
「だからな、俺はルーク様をずっと見てきたわけだわ。それこそ、赤ん坊の頃からな。だから、ルーク様が何かする時は必ず影に俺が居るってわけよ。わかるかソフィ。ルーク様の親より俺はルーク様を知ってるし大事にしてるわけよ」
程よく酒(カルロスの荷物から出てきたものである)も入り、ソフィに対してルークの幼少期を話してた筈がカルロスのルーク愛の話になっていた。
「カルロスはルークが大好き?」
「大好きじゃねぇよ。愛してるんだよ。自分の息子みたいなもんだ!」
「いや、5歳しか違わないからね?カルロス、誇張しすぎだから」
カルロスの愛は重い…。実に重い…。
ソフィとルークは、日が昇るまでカルロスのルーク愛を延々と聞かされるのだった。
ただし、中身はない。
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人は一人では生きていけないと聞いてた。
それは、カルロスとルークを見ててもそう思えた。
お互いを認め合い、お互い無くてはならないものとして接していた。
人って面白い。私は、捨てられてよかった。なんて素敵なんだろう、人を知るのはなんて素敵なんだろう。
私は、人形じゃなくなった12番じゃなくなった。
ソフィとして、人としてこれから生きていくのだ。
名前をくれたルークは私の大切な友人だ。何があろうと必ず守る…。
ようやく話が進みそう…と思ったら後退した。そんな回ですみません…。




