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悪役令嬢の妹ですけどなにか?  作者: トマッティ
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お母さんとの別れ


意識が浮上する。

この感覚も、もう慣れた。




「あ・・・ぃっ・・・つぅ・・・は、ぁ・・・」


意識が戻って早々、お母さんの苦しそうな声が聞こえる。


「奥様!奥様!・・・産婆を呼んで!!破水なされた!!」


「はっ!!!直ちに呼んで参ります!」



「奥様、さぁ奥へ!旦那様も直ぐにいらっしゃいますよ!私めに掴まってくださいな!」


「・・・は、あり、がとぅ・・・」


「いいんですよ、さぁ。」



どうやら私はもうそろそろ産まれるらしい。

やっと両親と姉に会えるんだ・・・嬉しいなぁ・・・。



そんなことを思っていると、産婆さんや父達がもうやってきたらしい。


「ミラン!ミラン!頑張ってくれ・・・!」


「おかーさま!がんばって!」



そんな声が聞こえる。



「は、ぅヴ・・・ぁ、ぃ・・・」


お母さんは私を産むことに全身の力を使っているようだった。


産婆さんも「もう少しですよ!」とお母さんに声をかけていた。



ずるっずるっと外に向かって押し出される動きに逆らうことなく私は動いていく。

もう少しで会える・・・






そんな中、悲劇が起こった。


「まずいです・・・旦那様。出血があまりに多い。このままでは母体が・・・。」


「なに・・・!?」


「ひとまず、赤ちゃんを取り出します!奥様、もうひと頑張りです!」





暗いところから、光に包まれた。

私は産まれたのだ、と思った。


嬉しい、嬉しい、そんな気持ちが鋭い泣き声となって口から出る。



「産まれた、のね・・・私の、可愛いライネ・・・」


と、お母さんの弱々しい声が聞こえた。



「こっちに・・・」


「ですが、奥様。その体では・・・今は休まれてください!危険です!出血がかなり多いんです、奥様!」


お母さんは、ふるふると首を横に振った。




「自分の体のことは、自分が一番わかるものよ・・・私はきっともう、だめ・・・だから、私は、今、この一瞬を悔いなくしたいの。」



となんだか泣きそうな顔でお母さんは告げた。

お父さんが「そんなことっ!」と言ったが、それにもふるふると首を横に振り否定の意を示した。




「さぁ、ライネをこちらに渡して頂戴な・・・」



「・・・ッ、はい、奥様・・・・・・元気な女の子ですよ・・・。」



「嬉しい・・・嬉しいわ、可愛いライネ。会えて嬉しい。産めて嬉しいわ。ありがとう・・・。」


ふふ、とお母さんは綺麗に微笑んだ。


「目は・・・あら、もう開いてるのねぇ、凄いわ。色は茶色。あらら、私と同じねぇ・・・」


「・・・・・・嬉しいよ、ミラン。君と同じ瞳の色の子がまた産まれてきてくれるなんて・・・ありがとう・・・。」


「・・・ジーク・・・私はあなたの瞳と同じ色の子も欲しかったわ・・・でも、もちろん、この子もとっても嬉しいわ・・・ライネ、私たちの可愛い子・・・。」


お母さんは儚げに微笑む。

体調がいいとはお世辞にも言えない。



「ライネ、ローゼ、私達の愛しい子。あなたたちの成長を見れないことは悲しいけれど、ずっと、見守ってるわ・・・もちろん、ジーク、貴方のこともよ。」


「おかーさま!やだ!!」


「ミラン・・・もう、逝ってしまうのかい・・・?嫌だよ、ミラン・・・僕は君がいないと・・・」



「ローゼ、愛してるわ。・・・ライネを、よろしくね。・・・ジーク、愛してる。あなたと出会えてよかった。勘違いしないで、私はずっとあなたの傍にいる、わ・・・。」





そういうとお母さんは静かに息を引き取られた。




「12月15日、15時45分 ミラン・ファルベルン様が天の御国へ参られました・・・。」





それは、冬の寒い日のことだった。

私が産まれたことでお母さんは出血多量で死んでしまった・・・。

この日のことを、私は決して忘れることはないだろう。



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