第2王子からの相談
ウォールがキレて泣いてしまい、私とオーガが流れるように土下座をかました後…お茶会の続きが始まった。
ウォールは赤く腫れてしまった目に侍女からもらった濡れて冷えているハンカチを当てている。
…そんなウォールを尻目に私とオーガは気まずくお茶を飲んでいた。
「あ、あのさ、ウォール。さっきも言ったけど本当にごめんね…?まさかウォールが泣くとは思ってなくて…ウォールの前ではもうしないから…。」
「おい、ライネ…そこはもう喧嘩はしないって言えよ…ウォールがこちらをまた睨んでるぞ…。」
「え、いや、だって、あんたとこれからずっと喧嘩しないで生きていく自信がないし…。
じゃあ、あんたは私と死ぬまでずっと喧嘩しないで生きてく自信あるの…!?無理でしょ!?」
「………うん、まぁ、確かにそうだな…。」
コクリ、と神妙に頷くオーガ。
ふ、という吐息を含んだ笑い声が隣から聞こえてきて、思わずオーガと同時に固まってしまう。
心底嬉しくないが、私とオーガは同時になにかするの得意なのかもしれないと思った…。
「ふ、ふふ、お二方…どれだけ正直なんですか…嘘でも言えないとか…ふふふ…。」
口元に手を当てて上品に笑うウォールはとんでもなく美少年でした。
それに何故か釣られて私も笑い出したら、オーガも笑い出して三人で笑ってしまった。
釣られ笑いってすごいよなぁ。
♢♢♢
それは、突然始まった。
「俺には最近悩みがあるんだ…。」
3人で爆笑した後、突然そう言い出したオーガに意識が向かう。
「お前の悩みなんて死ぬほどどうでもいいけど一応聞いてやるわ。どうしたの?」
「お前本当に性格悪いよな。一言多いんだよ。
で、俺の悩みなんだが…最近、兄上が変なんだ…。」
「あんたの兄さんがおかしいのは元々のことだろ。」
「はぁ?????ちげーし!!!!!!!」
間髪入れずにそう答えてやると、オーガは顔を真っ赤にして憤慨した。
それを横目に、この紅茶美味いと思いながら紅茶を啜る。
「ちょっと…ライネ様…失礼ですよ。
オーガ殿下、落ち着いてください。
どのようにアルフレッド殿下がお変わりになったのか、もっと詳細を教えて下さい。」
コクリ、とオーガが頷いた。
「あぁ。これは、そうだな。3週間くらい前からなんだが…兄上がはぁはぁ言いながら深夜に写真を見ている時があったり…なぜか、ローゼ嬢の写真を見ては匂いを嗅いでいるんだ…写真に匂いなんて付いているわけがないのに…。
この前の公務で一緒に行ったサースル国の宿でも、ひたすらにローゼ嬢の名前を連呼しながら薔薇を見つめていたんだ…。
こんな、変態みたいなことを兄上がするなんて信じられないし信じたくない…きっと兄上にナニカが憑かれているに違いないんだ…。
何か方法はないのだろうか、と思ってな…。」
「………………………は????????(重低音)」
「……へぇ、それは、なんというか、凄いですね…(ドン引き)」
私は思わず重低音を出してしまったが…。
ウォールが語彙力を失くすほどドン引きするなんて珍しいよね…。
「…………な?おかしいだろう?どうにか兄上を元に戻さなくては………兄上はとてもお優しいからきっとそこにつけ込まれて憑かれてしまったんだ…お可哀想な兄上ッ…!!!!俺が助けて差し上げなければいけないんだッ!!!!!
本当に、どうすれば………クゥッ!!」
『あいつがとてもお優しいとかwありえないわw』と思いながらも口角を意識して上げて微笑みを浮かべる。
そしてそのまま頭を抱えるオーガに向かってスッと手を垂直に挙げて立ち上がる。
「………オーガ、私に任せな。
この私が絶対にアルフレッド殿下を助けるよ。」
「ほ、本当か、ライネ!?」
「あぁ、もちろん。本当だ。女に二言はないよ。」
「ライネ……お前、いいやつだったんだな…。」
「当たり前よ…オーガは親友だもの…。」
「ライネ…ッ!!!!!!!!!!」
「はいはい、茶番はそこまでです。
で、ライネ様。どうやってアルフレッド殿下を元に戻すおつもりで…?」
パンパン、と手を鳴らして仕切り直すウォール。
それに対し、ニッコリと笑って答える。
「そんなの、もちろん。あいつの頭を私が素手でぶっ叩いてお姉様の記憶を失くすのよ♡」
「…はいっ!アウトーーーーーー!!!!!!
アウトですライネ様!!!!!!!!!
そんなことだろうと思ってましたよ!!!!!
絶対だめです!!!!!!!!!」
「な、なんでよっ!!!!!!メチャメチャ良い方法でしょっ!?」
「逆になんでそれが通ると思ったのでっ!?!?」
「はぁ〜〜〜〜〜??????⤴︎⤴︎
どう考えても良い方法でしょ!?!?なんで駄目なのよ!!!!!
ちょっとオーガ!!!この分からず屋のウォールになんか言ってやって!!!!」
「………いや、俺もライネが兄上を殴るのは…許せない…。どうせ殴るのなら俺が殴る。(キリッ)」
「そういう問題ですかっ!?!?違うでしょう!?」
「駄目に決まってんでしょ、オーガ!!!!被害者はローゼお姉様なんだから、お姉様の妹である私が殴る権利を持ってるはずよ!!!!!」
「兄上は俺の家族だ。
家族がおかしくなったというのであれば、家族である俺のが殴る権利があるはずだ!!!!!」
「ですから!!!!そういう問題では!!!!ありません!!!!!!!!!!(怒)」
そうやってぎゃあぎゃあ騒いでいたら、いつのまにかお茶会終了の時間がやってきていた。
ちなみに、「アルフレッド殿下がおかしくなった」ということをデカイ声で騒ぎ過ぎてウチの侍女の耳に入り、それがアルフレッドの耳に入ったらしく私達3人は仲良くアルフレッドの暗黒微笑の餌食になった。アルフレッドの暗黒微笑は、すごく、なんというか暗黒の微笑みでしたよ、はい。
♢♢♢
オーガとアルフレッド野郎が帰った後にウォールと今日の話題で盛り上がった。
そしてその結果、ウォールとかなり話せるようになった。
完全にツッコミ役として成立してしまったウォールには同情します。なむなむ。
ウォールから、「まさかライネ様があんなことをおっしゃるなんて驚き通り越して呆れました。」と言われてしまったが、それに付け加えて「でも、ライネ様の新しい一面が見れて僕は嬉しく思いましたよ。」と心底嬉しそうな顔で言われたので怒るのも怒れず…まぁいいか、と思ったのでよしとした。
しかし、その日以来私の素を見せ過ぎてウォールからネチネチ姑よろしくお小言を言われるようになってしまったのには参っているところである。




