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悪役令嬢の妹ですけどなにか?  作者: トマッティ
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夢の中にて


ふ、と意識が覚醒した。


辺りを見回すと、そこには遺跡のような仰々しい風景が目の前に広がっていた。




「え、どこ、ここ・・・。」




思わず勢いよく立ち上がる。

いつもより視線が高いことに気づき、ぺたぺたと身体を触ると・・・

私は、「ライネ」ではなく前世の姿に戻っていることに気がついた。


「・・・・・・はっ!?え、なになに、どういうこと・・・ってかここほんとにどこだよ!!」


視線を凝らすと、遠くに巨大な岩と古びて瓦礫のような大きい建築物の奥に祭壇のようなものが見えた。

周りには瓦礫と岩が沢山転がっている。








「・・・・・・・・・・・・とりあえず、歩くか・・・。」


そう言って自分を奮い立たせて、歩き出す。

人の気配は全く感じず、薄ら寒いのだが、上を見上げると、晴天が広がっている。

そんなトンチキな風景に疑問を抱きながら、祭壇の方に向かってみることにした。




♢♢♢


瓦礫を横目に進んでいくと、とうとう祭壇へ続く道に辿り着いた。



が、しかし、目の前には階段が広がっている。

・・・・・・どうやら、祭壇へ行くにはくそ長いこの良くいえば風情のある、悪くいえば所々欠けていてボロっちい階段を登らなければならないようだ。



「・・・・・・だあああああ!!!!階段長いんだよッッッ!!夢なら早く覚めて!!!ここまで来るのめっちゃ疲れたのに今度はクソなげぇ階段かよ・・・。」


誰も返答してくれないのについつい怒鳴ってしまった。これじゃあ、完全に痛いヤツじゃないか・・・。





「.........登るか.......。」


一歩踏み出して階段に足をかけると、ジャリッと音がした。










1段、2段、3段、4段、5段、6段、7段、8段・・・・・・・・・・・・と無心で登っていく。

上からは日光がすごい勢いで照っているというのに頭のてっぺんや、後頭部が暑くならないのが不思議だ。

むしろ、上に上がるほど風が冷たくなって気持ちよく感じる。





最後の段を駆け上がり、正面を向くと、遠目から見たモノと同じ祭壇があった。

お供え物がその祭壇の前に沢山あった。

祭壇の奥、中心部分には・・・・・・・・・大きな黒い石のような・・・宝石のような、光り輝く黒い玉が飾られていた。



なぜだかわからないが、その黒く美しい玉に目が惹き付けられて・・・。







祭壇があるこのフロアはかなり大きく、

イメージ的には、よく想像で言うお城の王様の謁見の間のような広さだ。

赤い絨毯のようなものが私が上がってきた階段とこのフロアの区切れのようなところ、つまりこのフロアの入口から祭壇の方に伸びている。


このフロアには沢山の中世ヨーロッパのお城にあったような柱が何本も立っているが、それの先端部分が折れてしまっている。・・・いや、崩れた、という方がいいのかもしれない。

屋根はところどころなく、上から微かに光が入っていてとても神秘的だ。

大きめの窓が壁にあって、全開になっているのですごく風通りが良くて心地いい。


風に揺られながら「どうして私がここに・・・?」と考えた時のことだった。





「やっほ〜!〇〇元気してたぁ?私のこと忘れるなんて酷いやつだよね、あんた。」








急に背後から声がかかり、勢いよく後ろを向く。








するとそこには・・・・・・・・・・・・黒髪黒目ツインテロング美少女が薄いレースを纏わせた黒色のドレスを着てそこに立っていた。






「.........え、あんた、だれ.....?」


思わずそう聞くと、彼女は黒曜石のようにキラキラと輝く黒色に濃い紫を混ぜ合わせたような目を弓形にして、口を開いた。


「やだなぁ、あんたの相棒の闇属性ちゃんだよ?

あは、覚えてなーい?

ほら、あんたの友達に化けてプロポーズしたじゃん♪︎覚えてないの?」



そこまで言われて、ようやく思い出した。


そうだ、確かに私はここに転生する前・・・つまり、お母さんの胎内にいる時にドローネによって禁術である闇属性をぶち込まれたんだ・・・。



「え、でも、あんた、前に会った時と姿が違うじゃん・・・。」



「ん〜?あったりまえじゃんか!

あの時はあんたを惑わすためにあんたの友達に化けてたんだから!

これが私の本当の姿なんだぁ!

どーお?可愛いでしょ?私、とっても可愛いでしょ?

ふふふん、知ってるよぅ!!」



「うわっ!自画自賛乙です!!!そういうの結構なんで!!

・・・・・・・・・っていうか、あなたが私をこんな所に呼び出したの?」


「うん、そうそう。私が呼び出したの。

あんたがなんだかちょっと疑問に思っていることの答えを言ってあげようと思ってね。」


ニコッと彼女は美しく微笑んだ。

ここの世界の人はみんな何故こんなにも美しく微笑むのだろうか。


「...なるほど。

私の疑問ってことは.....なぜ私が他の属性を持っているのに闇属性も持てるのか、ということだけど・・・あなた答え知ってるの・・・?」


「もちろん知ってるよ?

だって私が闇属性だもの。闇の塊だもの。あなたの一部だもの。あんたがわからないことも全部知っているの。」


「・・・へぇ、言うじゃん。じゃあ、教えてよ。」


「なんかすごい偉そうじゃない〜?〇〇〜。

それが人に頼む態度かよ〜って感じ!

・・・まぁ、いいけどさ!」


(いいんかいっ!!)と思わず心で突っ込んだのは内緒である。



「あんたがなぜ他の属性を持ったまま闇属性の力を持てるのか・・・。



それはね、

私があんたの中にある闇属性の力を上手く制御しているからだよ。」











驚いた?と、聞く彼女を思わず凝視してしまう。



「・・・闇属性、というより、属性の制御なんて、できるモンなの・・・?」


「ふ、・・・あはっ、普通できるわけないじゃんか!

私は『普通』じゃない存在だからね。

・・・まぁ、私だから出来るってやつかな。

こんなに私がしてやるのって珍しいんだよ?

私の中であんたは特別。

あんたは私が近年稀に見る面白いやつだから。私が見込んだやつだから。


超ト・ク・ベ・ツなの。


ほんと、感謝してよねぇ?闇の力にやられないように私の加護で上手く調整して体に入りすぎないようにして、他の属性と反発して巻き込まないように私の力でどうにかやってるんだからさぁ。」



「ふぁい・・・ありがとうございまひゅ・・・」



ビイーンとほっぺたを左右に引っ張られて上手く喋れない。

そんな私を見て、彼女は嬉しそうに、そしてとても楽しそうにニカッと笑った。


「あはははははっ!〇〇ったら変な顔〜!超ブサイクじゃん!!」


「・・・チッうるさい!ブサイクにしたのはあんただろうが!!」


思わず舌打ちしてしまった。

・・・これは仕方が無いと思います。














そこで、ふと彼女の名前を知らないことに気がついた。



「・・・ねぇ、そういえば、あんたの名前聞いてなかったわ。あんたの名前は・・・?」


そう聞くと、彼女は困ったように眉を寄せてこちらを見た。



「うーん、名前、名前ねぇ・・・。

・・・私は、闇の力。闇属性の全てだから、名前なんてない。黒く染まって人の悪性を詰め込んだものがワタシを造り上げる全てだもの。そういうモノだから。

・・・どうしても名前で呼びたいって言うんなら・・・そうだね、私のことは闇の力ということで・・・シャドウとか・・・ダークとか・・・?そういう名前でいいんじゃないの・・・?」



「闇の力だからダークorシャドウ!安直すぎじゃない・・・?」


「はぁッッッ!?じゃあ、あんたが決めなさいよ!!」


「・・・・・・・・・うん、じゃあ黒百合。」















「・・・・・・クロユリ?なにそれ。変な名前ね。聞いたことない。」


「うちの世界、というより、前世に黒百合っていうすごく綺麗な花があったんだよ。

黒い花なんだけど慎ましやかに咲いていてすごく気高い雰囲気を持っているとっても美しい花なんだ。

・・・あんたの姿を見ているとその花にぴったりだなって思ってさ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうかな?」






「・・・・・・ふ、ふふ・・・・・・・・・・・・クロユリ、クロユリ。

・・・うん、うん、クロユリね、なるほど、綺麗な花なのね。なるほど、なるほど、なるほど。

・・・うん、気に入ったわ!!!!今日から私はクロユリよ!!

あんた、センスいいじゃない!好きよ、この名前。」


頬をピンク色に染めて全身で歓喜を表しながら嬉しそうに微笑む彼女・・・否、クロユリは凄く可愛らしくて、綺麗だった。








喜んでもらえて良かった、と思いつつ彼女を見ると、やはり必然的に周りに目がいく。

花畑にいるのが似合いそうな彼女が瓦礫の溢れるこの場所にいるのは酷く、歪だ。


















「ねえ、あんた、ここに住んでるの?」


と聞くと、彼女はこう答えた。












「えぇ、そうよ。ここが私だけの空間だもの。ここが私のお城なの。誰にも邪魔されない私の精神世界よ、ここはね。





ね、〇〇。


ここは、とっても綺麗でしょう?」






















そう言って上品に笑う彼女に少しゾッとしたのはきっと、気の所為だ。




ライネさんは、クロユリさんの精神世界にお呼ばれしていたということですね。

ここでの精神世界は、術者の精神と関連する固有結界のようなものです。

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