ぶっころ☆
そうして昼がきた。
昼食を食べ、支度をしてから王子達を迎える。
馬車から爽やかに降りて、顔面が光輝いているやつらはこちらを見てこれまた爽やかに笑った。
「出迎えありがとうございます、ローゼ。」
あーあー、なんてこったいお姉様。
お姉様は久しぶりにあった王子の爽やか笑顔にトキメキ過ぎて「あ、う、」とかいうだけで喋れてない。お姉様顔真っ赤で超絶可愛い。
・・・しゃーない。
「ご機嫌麗しゅう、アルフレッド殿下。そしてオーガ殿下。」
そう言うと、お姉様がハッとしたように頭を振って、
「ご機嫌麗しゅう。・・・準備はもう出来ております。どうぞこちらへ。」
と、殿下たちを客間に通すように促した。
オーガ殿下はアルフレッド殿下の1つ後ろを歩いてひょこひょこと着いてくる。
・・・可愛いとか思ってないからな!!!!!
♢♢♢
客間につき、紅茶を入れてもらった。
机を挟んで殿下たちと並んだ。
ファルベルン家の客間は1階で、美しい薔薇が咲き誇る庭と繋がっているのでとても風情がある。
そんな庭を興味津々にみるオーガ殿下は子供らしくて何だかほっとした。
そうだよね、5歳児ってこうだよね!!!
周りがいやに大人びているからなんかわかんなくなるけど普通はそうだよね!!なんかよかったなぁ!!
そんなことを考えているとアルフレッド殿下が口を開いた。
「久しぶりですね、ライネ、ローゼ。
元気にしていましたか?」
「えぇ、変わりなく。・・・殿下はどうお過ごしになられていましたか?」
「ふふふ、私も変わりないですよ。少し、勉強がハードになったくらいです。」
と殿下が首を竦めた。
「ふふ、殿下ったら。」
とお姉様が口元に手を当てて上品に笑った。
あー、お姉様まじ可愛い。
ありえん可愛いわ・・・。
そうだ、というようにアルフレッド殿下がオーガ殿下の方を少し向いた。
「弟がとても美しいファルベルンの薔薇園を実際に見たいとせがむものですから本日伝令通り連れてきました。
・・・のちほど、薔薇を拝見させて頂いてもよろしいですか?」
と聞いてきた。
姉の方をちらっと見ると
「えぇ。いつでも大丈夫ですわ。
アルフレッド殿下にそこまで褒めていただけるとは、庭師も喜ぶことでしょう。」
お姉様はニコッと笑って言い切っていた。
「そうですか、ありがとうございます。ほら、オーガ。お前もお礼をしなさい。」
とアルフレッド殿下が告げると
「ありがとう。」
とオーガ殿下が言った。
♢♢♢
薔薇園の入口に立つと殿下達は「ほぅ、」と感嘆を漏らしていた。
わかるよ、ファルベルン家のこの薔薇園は凄いよね・・・わかる・・・。
見渡す限りの薔薇に圧倒され、その美しさに酔いしれることのできるこの薔薇園は庭師が大切に大切に作り上げている芸術作品だ。
「さて、では薔薇園をご案内致します。」
とお姉様がいって歩き出した訳だが・・・。
なんだかオーガ殿下は薔薇よりもなんだかお姉様の方を気になっている。
じっとお姉様を見るオーガ殿下。
なんだこいつ、レディに対して失礼じゃね??とか思うが一応ほっといた。5歳児だしな。仕方がない。
・・・あーあ、でもなんかやだなぁ。
私のお姉様なんだから勝手にジロジロと不躾にみられるのは不愉快だわ。
そして、てくてく歩いている時、
私の後ろでオーガ殿下がアルフレッド殿下に話しかけた。
「兄上の婚約者としてどれほどの器のものか見ていましたが、大した器ではないじゃないですか。こんなやつよりも美人な方がいますよ。
顔だって技量だって今のところ普通でしかない。
兄上に似合いませんよ、このお方は。」
.....でけぇ声で、そう言ったのだ。
(は????????
何言っちゃってくれてんのこいつは・・・????)
大きめな声だったのでローゼお姉様の耳にも当然入った。もはやあれは聞かせたいと思わないと出ない声量だった。
アルフレッド殿下が、
「こら、そういうことを言ってはダメだよ。」
と窘めるが、そんなことはないと否定するような事はしなかった。つまり、アルフレッド殿下もそのような認識をお姉様にしているという事だ。
歩いていた姉様の足がピタリと止まる。
(まて、怒るな。前世?では大学生まで生きたんだぞ。こんな子供の言う事にキレちゃだめだ。そも、相手は王族だぞ。圧倒的に立場はあっちが上。絶対に怒っちゃ.....)
ふとお姉様の方を見ると、
キュッと口を結んで溢れんばかりの涙を目に溜めていた。
あ、やばい。
プツン、とどこかが切れる音がした。
「もっぺん言ってみろやクソ野郎。」
オーガ殿下たちのほうを向いて私は低く唸った。あ、口汚いこと言っちゃった。まぁ...もうどうでもいいか。
「オーガ・・・で、ん、か?もう一度仰ってくださるかしら」
無言の彼らにもう一度声をかけた。
アルフレッド野郎はキョトンとした顔でこちらを見て、オーガ殿下は、ハッと馬鹿にしたように鼻で笑って言い放った。
「ハッ!
おまえの姉が王太子妃の器もないブサイクだと言ったんだが?大した女でもないくせに出しゃばって、どうせ兄上の権力が目当てなんだろ?このあばずれ共が」
前言撤回、こいつ、全然5歳児っぽくない。
あばずれだのなんだのってどっから覚えたの??王室の教育大丈夫なのか??と少し心配になる。
「・・・オーガ殿下」
「なんだ?怒ったのか?でも本当のことだろ。」
「......」
オーガ殿下の顔を掴んで、私と目線を合わせる。
彼は離せとでもいうように頭を振ったが逃がさない。
「あんたさ、王族だからって言っていい事と悪いことがあるでしょ。甘やかされてきてたって言われても限度があんだよ。
...あんたがお姉様をどう思おうと自由。でも、今ここで話すようなことだった?あなたが見たいっていうから薔薇園まで連れてきたんだよ。
王子様だかなんだか知らないけどほんとむかつくし、不愉快だから。あと、この婚約はお姉様の独断でないことだけはっきり言っておく。」
「な、!おまえ・・・!!俺に指図しやがって!俺は、第2王子だぞ!!」
「は?だからなに。言っとくけど、先に無礼なことしたのあなただから。」
「なんだとこのブス!!」
「とりあえずお姉様に謝れよ。」
「ふん、誰が謝るか!!俺は間違ったことを言っていない!!」
「・・・ふーん、呆れた。そんなことも出来ないんだ。
もーいいよ、こんなんが第2王子とか世も末だなぁ。」
そう言って彼から視線を外し、アルフレッド野郎の方を向き、睨みつけた。
「アルフレッド殿下。
思慮の浅い、脳みそと口が繋がっているような方がアルフレッド殿下の弟君なんて信じられませんよ」
アルフレッド殿下は、何故かわからないが少しニヤニヤしていた。
と、いうよりもこの状況を楽しんでいるようにも感じた。ほんと不愉快。
「・・・弟君の不始末は兄君である貴方様につけて頂かないと。
お姉様に謝ってください。」
「・・・・・・・・・・・・そうだね。
ローゼ嬢。愚弟の代わりに謝罪しよう。
酷いことを言ってしまったね。
すまない。」
「い、いいえ、私は大丈夫ですわ、殿下・・・。」
お姉様はブンブンと首を振った。
「・・・それでは、今日はもうお引き取り下さい。気まずいですし、もうこれ以上貴女方のために時間を取ろうと思えません。」
睨みながらそう吐き捨てると、
何故だかアルフレッド殿下は嬉しそうに微笑んで了承した。え・・・・・・なに、まじきもい。
カスの方は悔しげにこちらを睨んでいた。
へっ!5歳児の睨みなんて痛くも痒くもねぇわ。
ばーかばーか!!
ギッと睨み返しながら侍女を呼んで、殿下たちに帰ってもらった。
お姉様は帰ったあとも沈んだ面持ちで部屋に戻って泣いていた。
・・・・・・・・・・・・・・・王子達まじ絶許。
第一印象最悪だわ、第2王子。
宣誓!!!あいつはいつか私がこの手で殺ります!!!
次話は、睨まれてにやけていたアルフレッド殿下の話です。
2018/11/30 少し本文を変更させていただきました。