トラックに跳ねられた
私は、中流家庭の医者の娘として生まれた。
両親や祖父母は私のことをすごく愛してくれた。私は、そんな人達のためになにか恩返しをしようと、大学も一流大学に入り医者として少ない女医になろうとしていた。
大学での日々は、勉強漬け。毎日とても忙しくて苦しいものだったけど、充実していた。
「〇〇!今日大学終わった後、暇?」
「おん、暇やで。」
「よっしゃ!じゃあ久しぶりに遊ぼーよ!」
他でもない親友、浜名美奈から誘われ、すぐに頷く。
彼女とは中学からの付き合いだ。
「いいよ。どこで遊ぶ?」
「あー、どーしよっか。じゃあ、最近人気のカフェ行こーよ!そこでオタ話しよ!」
「おけおけ!レポート先生に出してから行くから外で待ってて!」
「わかった。・・・早くしてね?」
小首を傾げてくる美奈。私があんたとの約束でわざわざ道草食うかっつーの。
「わかってるって。レポートちゃちゃっと出してくるだけだからさ!」
「そ、ならいいよ。前なんて外で1時間くらい待たされたからさー!」
「ごめんて!あのくそハゲ野郎が帰してくれなかったんだよ。」
「あはは、わかってるよ!あのハゲカスが悪い!んじゃ、待ってるから。」
「うん、ありがとう。」
そう言ってレポートを出しに教授の所に向かう。
全てにおいてやる気のなさそうなハゲ教授。この人が資料室に入り浸っていることはうちの学生の常識だ。
どうせ、今日も資料室でダラダラしてんだろ。
カツカツと廊下に私の足音が響く。
比較的先程の場所から近かった資料室には直ぐに着いた。
コンコン、とノックをして、
「教授、〇〇〇 〇〇です。今週のレポートを提出しに来ました。」
と告げると、
「おぉ、入れ。」
とダルそうな声が聞こえる。ほらね、いた。
ガラッと扉を開けるとやはり教授は椅子に深く座って両足を机に放り出していた。
「・・・教授、その格好、まずくないですか?」
と声をかけると「あー、大丈夫大丈夫、これが俺の普通だから。」とカラカラ笑った。
そ、そうなんですか、とよくわからないで頷き、
「レポート、ここに置いておきますね。」
と一礼して部屋を出た。
やっぱり、あの先生変わってるよね。改めて思った。
「・・・あ、もう10分経ってた。急がなきゃ・・・」
本当に時間が経つのは早い。
急いで大学の正面玄関の方に向かう。
正面玄関を抜け、友人の姿を探してキョロキョロと辺りを見回す。
「おーい、こっちこっち!どこ見てんのさw」
と声をかけられた。
友人は大学の入口で私を待っていた。
「あー、ごめんごめん、てっきり玄関の方に・・・・・・ッ!?」
いるかと思った、そんな言葉を発する前に美奈の後ろから自動車が迫ってきた。
(は?)
運転席の方を見たが、運転手は爆睡しているようだった。
「美奈、危ない!!!!!!」
キョトンとしている彼女を咄嗟に突き飛ばした。
ドンッ!!!!!!っと背中に強い衝撃が走り、私は自動車に弾き飛ばされた。
地面に背中から落ち、バキッとどこかの骨が折れる音を聞いた。
「・・・あ、かはっ・・・は、ぁ・・・」
口内を切ったのか、咳き込むように血を吐き出す。
視界が点滅する。私の腕と足が有り得ない方向に折れていることに気がついた。
死んだ方がマシなくらいの痛みが全身を襲って、呼吸も上手くできない。
段々朦朧とするなか、美奈が私に応急処置を施してる。
「〇〇!〇〇!やだ!!なんで!!〇〇!私を庇って死ぬなんて許さないから!今救急車呼んだから!しっかりして!」
と、ボロボロ泣きながら必死に私に呼びかける彼女の声が聞こえる。
「・・・ご、めん、わたし、もうだめみた、い」
息も絶え絶えに呟いたけど、
「だめじゃない!!私を置いていくな!!生きろ!!!」と力いっぱい叫ぶように怒鳴られた。あんたのそんな顔、初めてみたなぁ。
____漠然と、(あぁ、幸せだな)、と思った。
正直まだ生きてたいけど、こんな終わりもいいかなとも思った。
私はもうきっと死ぬだろう。
自分の体だから自分が一番わかる。
その前に・・・。
「・・・ね、美奈・・・」
「なに!?どうしたの!?」
「あの、ねぇ・・・だい、すき。あんたとであえて、しあわせだった・・・」
カヒュッと引きつったような声にもならない音が聞こえた。
「っ、ねぇ、なんでそんな最後の言葉みたいに言うの!私も大好きだよ!!私も幸せ!!だけどあんたがいなかったら幸せじゃない!!」
「ご、めん・・・しあわせに、なって・・・だい、すき・・・」
次の瞬間、私の視界は完全に白く染まった。