第七話:中休み
「ねーぇ、樹里〜。」
沙紀が話しかけてくる。
「…何…?」
「トイレ…ついて来てよ。」
ゾクッ…
「え…なんで…?」
「もー!友達じゃない!それぐらい、当然じゃない?笑」
友達…?本当の…友達…?
「ね!行こ行こ!!」
真紀ちゃんは、わざとらしくそう言った。
「いいでしょ?樹里。」
沙紀がニヤリと笑ってそう言い、私の腕を思いきり強く掴んだ。
「やっ…!やめ…」
「行こ行こー!」
真紀ちゃんが私の言葉をさえぎった。
気づいたら、そこはトイレ…。
「樹里。」
「……何…?」
「ついて来てくれて、ありがとね♪」
そんな沙紀の笑顔…笑っているのは、口だけだった。
「…何する気?」
「さぁ…なんだろーねー?」
真紀ちゃんがそう言った後、沙紀は言った。
「こうするのよ…。」
バシャッ
沙紀の取り巻きの子達が私にバケツで水をかける。
「いやっ…。」
「『やめて』なんて…言わないでよね?笑」
「こんなことしたって、何もないじゃない…!」
「あるわよ…。」
…え……?
「ふふ…楽しいんでしょ?いじめ…。仁香のこと、楽しそうにいじめてたそうじゃない…。」
「だから、私は仁香をいじめてなんかいない…!いじめられていたのは私なの…!!」
「…嘘つき。」
「嘘じゃない!!」
「……。」
「信じてよ…。」
「みんな、来たよ!」
沙紀のお取り巻きの瑠可ちゃんがトイレの外から言った。
「くっそ…マジかよ…。」
「仕方ないわね…。みんな、行くわよ。」
バンッ
私は真紀ちゃんに蹴り飛ばされ、トイレの個室に入った。
と、同時にドアが閉まった。
「声出したら殺すわよ。」
「……。」
「沙紀…あのさ、さっき言ってたこと、本当だから…。」
「そんなこと…信じない。」
キャハハハハハ…
声が遠ざかっていった。
しかし、私は個室から出なかった。
この地獄の中休みを乗り切るには、トイレに入って30分間過ごしたほうがいいんじゃない…?
「信じない。」
その言葉に、私はとても傷ついた。
そんな高校生活は、私にとって苦痛の日々だった。
そう、あおいと出会う前までは――…。