第六話:始まり
「あんたは標的よ…。もう沙紀の親友なんかじゃないわ…。」
「あんたも、自分がいじめられれば仁香の気持ちが分かるはずよ…。」
標的…いじめ…。
「…まさん!福山さん!」
はっ…。
「は、はい…。」
…あ…一時間目…学活に変更になったんだっけ…。
「教科書は?『いじめについて』のページ開きなさい。」
「はい…。」
『いじめについて』……。
「8行目から読みなさい。」
「は、はい…。えっと……いじめとは、人の心を傷つけるということです…。」
クスクス…。
「人の心傷つけることなんだってぇ〜。」
「案外さぁ、福山さんみたいに大人しそうな子がいじめっ子なんだよね〜。」
…誰…?
「どうしたの?早く読みなさい。」
「…いじめられている人の気持ちを…少しも考えず…ただ『楽しいから』…という理由で人の心を傷つける…それは…とても卑怯なことです…。」
ガタンッ
「うわぁっ!」
え…?
沙紀…泣いてる…?
「椎名さん?どうしたの?何かあった?」
「いえ…すみません。ちょっと…今福山さんが読んでるの聞いて、昔の友達のこと思い出しちゃって…。」
「そう…。あー…福山さん、もういいから。座りなさい。」
「…はい……。」
沙紀…昔の友達って…仁香のこと…?
大丈夫かな…沙紀…。
「先生…もう大丈夫です…。」
「そう、それならいいわ。…何か悩み事があったらいつでも相談してくださいね。」
「はい…。ありがとうございます。」
沙紀……え?
今、私のことを見た沙紀は…笑ってた…。
もしかして……これも沙紀の計算…?
沙紀…沙紀…。なんで、こんなことになっちゃったんだろ…。
沙紀となら、仲良くなれるって…本気で思ったのに…。
あれ…?メールだ…。
沙紀…から…?
『ねぇ、樹里。
一緒にお弁当を食べたあの日…どうして沙紀
が樹里に話しかけたのか分かる?
友達になりたかったとか、樹里と話してみた
かったとか、そんな理由じゃないのよ?
ほんとはね、仁香を救いたかったの。
このまま仁香を天国に行かすことなんて、沙
紀には出来ない。
仁香をいじめて、自殺まで追い込んだあんた
を、殺そうと思ったの。
もちろん、あんたに自殺させるってことよ。
自分の手を汚すようなこと、沙紀はしないも
の。
だからね、あんたが仁香をいじめていたよう
に、沙紀もあんたをいじめるわ。
あんたが自殺するまで、どんなことだってす
るわ。覚悟しておきなさいよ。
---END---
』
ゾクッ…
沙紀…そこまで私を怨んでるの…?
キーンコーンカーンコーン…
チャイムが鳴った。
私にとって、地獄の中休みが始まった。