第二話:視線
「樹里、ごめん。待たせちゃって。」
沙紀は私に言った。
「ううん。いいよ。あー…ごめん。私、先にお弁当食べちゃった。」
「あ、ほんとだ。樹里、食べるの早いわね。」
…それにしても……。
「真紀ちゃんと…その…何、話してたの?」
「それって…絶対に言わなくちゃいけないの?」
え…?
「いや…別に…。」
「そう。それならいいわ。じゃあ。…あ、そうだ。今日の放課後プリ撮りに行かない?」
「え、あ…いいね。プリ行こうよ。たくさん撮ろ!」
…ふう…。なんでだろ…。
沙紀…なんか恐かった…。なんとなくだけど…。目が…すごく恐かった…。
でもあの目…どっかで…。
…あ…。李子だ…。あの時の…李子の目…。
鋭くて、突き刺さるような…それでいて、少し悲しそうな目…。
…ビクッ…。
「…?どうしたのー?」
「あ…沙紀…。ううん、何でもないよ。…気にしないで。」
「…そう。」
びっくりした…。なんだろ…。後ろから、なんか視線が…。
「沙紀…?」
「…何?」
ぞくっ…。
やっぱり…。あの時の李子の…。
ヤダ…。またあの時のこと思い出しちゃった…。
…もう、あんな思い二度としたくない…。
そんなことを思っている私を、沙紀と真紀ちゃんがじっと見ていたことに、私は全く気付かなかった。
「勝手に真紀ちゃんなんて呼ぶんじゃねーよ…。」
「ほーんと、バカじゃないの?あいつ…すっかりビビっちゃって。ふふふ…。面白くなってきたじゃない…。」