第一話:出会い
4月10日
平瀬高校入学式…。
私は、どうしてこの高校の受験に受かってしまったんだろう…。
もしも私が李子と同じ高校行きたいなんて思わなかったら、こんな思いしないで済んだのに…。
宮田中の子…いない。
私は結局、李子しかいなかったんだ…。
こんな高校、受験しなければ良かった…。
* * *
4月20日
入学して10日目…。
私はひとりぼっち。友達なんて、いない。
ひとりのお弁当。周りでは、みんなのグループが決まってきてる。
もう、私の居場所なんかない…。
思えば、小学生の時から私には、李子しかいなかった。
私は、卒業するまでこうやってひとりなのかな…?
やだよ、そんなの…。
「ねーねー!福山樹里さん…だよね?」
え?…誰…だっけ…?
「私、沙紀っていいます!椎名沙紀!よろしく!」
「あ…う、うん。よろしくね。」
「あのさ、一緒にお弁当食べない?」
「え…?」
いいのかな?私なんかと食べて…。だって、椎名さんって、すっごいお金持ちなんでしょ?たしか、どっかの会社の社長の娘さんって…。
「福山さん?あの…沙紀とお弁当食べるのヤダ…?」
「え?ううん!そんなことないよ!ずっと、椎名さんと話してみたかったんだ!」
「ほんと!?沙紀も、ずーっとしゃべってみたかったの!あ、っていうかさ、沙紀って呼んでいいよ!そっちも、樹里でいい?」
「うん!いいよ!」
良かった…。椎名さ…沙紀となら、いい友達になれそう。
「あ、ねえ、樹里って、ドコ中?」
「え?私は宮田中。…沙紀は?」
「沙紀?沙紀は、西川中なんだ。…そっかぁ…宮田中かぁ…。同中の子いる?」
「ううん、いない。ほんとは一緒に受験した子がいるんだけど…落ちちゃって…。」
「…そっか。…まぁ、とにかく食べよ!お腹空いちゃった!」
「うん。私も。じゃあ、食べよ。」
沙紀って、可愛い子だな。明るいし。お金持ちって、もっと意地悪な子が多いと思ってたけど、案外そうでもないかも…。
「ねえ、沙紀のお父さんって、社長…なんでしょ?どこの会社の社長なの?」
「んー…。んっとねぇ…『SHI-NA』って会社知ってる?」
「うん、知らないわけないじゃん!……え!?まさか、沙紀のお父さんって、『SHI-NA』の社長さんなの!?」
あ…えっと、『SHI-NA』っていうのは、なんかすっごく大きい会社で、全国的に支店とかあって(北海道とか沖縄とか…。)とにかく世界一すごい会社…ってかんじ!
沙紀って、そんなすごい会社の社長ご令嬢だったんだ…。
「まさか『SHI-NA』の社長令嬢だったなんて…。沙紀ってすごい!尊敬するよ。」
「そんな…すごくないってばぁ!」
「すごいって…」
「沙紀〜。」
「あれ、真紀。どうしたの?」
うわっ…平野さん…。なんとなく恐い雰囲気があって、近寄りにくかったんだけど、沙紀と仲いいなら…。
「どうしたの?じゃねーよ!いきなりいなくなんなよ!社長ご令嬢に何かあったらどうするかって、心配してたんだから!」
「えへへ。ごめん。今、樹里とおべんと食べてたとこ。」
「樹里…?」
「あ、福山樹里です。よ、よろしく。」
「え……。あぁ…平野真紀っす。……よろしく。」
「で、何?どしたの?」
「…沙紀…ちょっと来い!!」
あ…ちょっ…沙紀…。
「いいから、早く!」
「何?」
「なんで沙紀があんなのと一緒に弁当食ってんの?」
「だって……。」
「だって?」
「うふふ…。まだ言えない。でも、きっとすぐ分かるわ。私達の高校生活…なかなか楽しいものになりそうよ…。」